草の葉

高山村にある、緑に包まれたギャラリー

初めての花

2015-04-10 20:23:12 | 山の暮らし



あのころを
手繰り寄せたくて、
百個ほどのニホンスイセンの球根を植えたのは何年前だっただろうか?



毎年毎年待つのだが、
葉が出て、
いつの間にか先が枯れて、
結局、花は咲くことなく終わってしまう。


今年、初めて花が咲いた。
やっぱり、葉の先は枯れてはいるが、
花が咲いてくれた。

夕刻、キッチンの窓越しに
何気なく目をやったその先に・・・・
えっ!ホント?
ワタシはスリッパのまま慌てて外に飛び出した。

たった一株だけだが、
いとおしくって、
うれしくって。



         小川のほとり
         赤い行季柳のうしろに
         ここ数日
         数知れぬ黄色い花が
         金色の眼を開いた。
         そしてとうに純潔を失った私の
         心の奥底で あの記憶が
         私の人生の金色の朝の時間の記憶が目覚め
         花の眼の中から私をまじまじと見つめる。
         あのころの私は花を手折りにゆこうとおもったが
         今は彼らをすべてそのままにして
         ひとりの老いた男 私は家に帰る。

               ____「はじめての花」ヘルマン・ヘッセ____







                    ヘッセの見たスイセンは
                    どんなスイセンだったのだろうか。

                    目を閉じると
                    記憶の中のほろ苦く優しい香りが
                    鼻先をかすめる。

                    背後に流れるのは
                    ショパンのノクターンの数々。
                    



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