草の葉

高山村にある、緑に包まれたギャラリー

伊豆半島の旅 二章

2010-06-02 14:37:06 | おでかけ
翌朝は、早くから、
社のある近くの丘に母と登る。
苔むした急な階段が500段もあるような場所。
母は、頂上まで行きたいようだったが、
あまりに危なそうだったので、ワタシが止めて、途中まで。
しかし、
松の木の間から見える、広くまっすぐな水平線の、
その眺めのなんと素晴らしきかな。
晴れていれば富士も見えるという。

宿の付近から、
半島先端近くを縦走できる歩道もあるらしく、
山歩きが趣味の母は、
「また、今度来ようかね」とつぶやいていたが・・・・


宿を後にして向かったのは、堂ヶ島。
船で洞穴を周ったあと、、
今度は、その上を歩いて周る。
上り下りの多い急な階段。
ワタシの後ろから、ハーハー。
母の苦しそうな息使いが聞こえる。
小さい体で、20kgのリュックを背負って、
何十年と山歩きを続けていた母とは思えず、
驚きと、
そして、切なさがぐっとこみ上げる。
2年半前、
我が家の目の前の小野子山から、
中岳、十二ヶ岳と1200m級を縦走したときは、
2人分の弁当を背負った母、
手ぶらのワタシの先を、サッサカ、ズンズン登っていたのに・・・・

年々衰える自分の力の無さは、
気の強い母にとって、どんなに腹立たしいものか。
背筋をピンと伸ばし、おしゃれにも気を使い、
外見はそう変わっていないとはいえ、
もう傘寿。
確実に弱っている足腰は、
転んで骨折でもしたら、それこそ寝たっきりに。
山に行くのも、もうそろそろやめてほしいと思う反面、
これこそが、彼女の代名詞、
出来るものなら、長く長く続けてほしいと願うワタシがいる。




     ::::



堂ヶ島から、
また2時間近くバスに揺られ、修善寺へ。
花の咲き乱れる虹の郷を歩いた後、
修善寺温泉、新井旅館へ。
今回の旅行、妹の企画は、
全て、ココから始まったらしい。
1872年創業の老舗の旅館。
2500坪の敷地に、
明治、大正、そして、戦前までに建てられた15棟の建物は、
今では、国の文化財に登録されている。
横山大観、川端龍子、芥川龍之介、幸田露伴、正岡子規等、
多くの名だたる画人、文人もお気に入りだったという、
趣のある建物はもちろんのこと、
岩盤の上に立つその姿と、
桂川からひいた水の景色、
樹齢800年のケヤキを中心とした庭園の織りなす風情は、
筆舌しがたく、
ただただ、ため息。

ワタシたちは、
そのひとつ、木造2階建て、数寄屋造りの「花の棟」に宿泊。
緑の紅葉が抱え込む、目の前の桂川の流れ。
その上をスーッと舞うカワセミ。
その向こう岸には、
優しくかつ雅な竹林が、なにか舞台のようにある。
どこかでは、カジカの鳴く声。
部屋にある足湯につかりながら、
いつまでもいつまでも飽きずに眺め、聴き入っていた。




    妹の目算通り、
    超一級の佇まい、もてなしは、
    まさに、上質のくつろぎであった。






                つづく・・・・