幼児虐待死事件で検察側求刑の1.5倍の判決を言い渡した裁判員裁判の判断を7月24日、最高裁が覆した。
裁判員制度スタートから5年が過ぎ、強まる厳罰化の流れにブレーキをかけた形だが、市民感覚を取り入れた判決をプロの裁判官が「修正」することには批判も。
判例とのバランスをどう取るか課題は残る。
2009年5月の裁判員制度施行後に目立つようになってきた「求刑超え」の判決。
厳罰化の傾向はデータにもはっきりと表れている。
最高裁が殺人や強盗致傷などの8罪について実施した調査では、2008年4月~今年3月に裁判官だけの審理で言い渡された2290件の判決で、求刑を上回ったのは2件で全体の約0.1%。
一方、今年3月までの裁判員裁判判決4217件のうち求刑超えは43件で約1%となり、割合が10倍となった。
求刑超え判決のほぼ半数は殺人、傷害致死事件で、人命が奪われた結果を市民が重視している実態が浮かぶ。
中でも厳しい判決が目立つのが、今回のような幼児虐待事件だ。
虐待死で目立つ「自分で身を守れない子どもに虐待を重ねた悪質な犯行で、求刑はなお軽い」。
7月24日の判決で白木裁判長は、補足意見で「裁判官は、裁判員に重刑の傾向の意義や内容を十分に理解してもらうよう適切に説明する必要がある」「本件では、裁判官と裁判長の重刑評議があるべき姿に沿った形で進められていないのではという疑問がある」こう述べて一審の裁判官を批判した。
裁判官に裁判長裁判で適切な評議を行うように促すことで、重刑判断でばらつきが出ないことを求めたと考えられるが、市民感覚が裁判員制度導入前の判例と一致しないのは「制度上当然」との声は少なくない。
元最高検検事の土本筑波大名誉教授は「15年の量刑は極端ではあったが市民感覚が反映されており、尊重すべきだった。 今回の判決は、裁判員裁判制度の趣旨に合致するのか疑念が残る」と指摘している。
なぜ裁判員裁判制度を導入したのかまったく理解できないし、怒りを覚える。