デジカメぶらりぶらり

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2013-02-13 07:48:11 | Weblog
噺家の古今亭志ん朝さんは、鰻を食べなかった。一家はみんな鰻好きだったが、出前をとっても、志ん朝さんは口にしない。だから姉の美濃部美津子さんは、嫌いなんだろうと思っていた。

鰻が嫌いな方は別として、環境省がニホンウナギを「絶滅危惧種」に指定したと聞いて、憂鬱になった人が多かろう。高騰でなかなか口にできなくなったが、鰻丼が「絶滅危惧種」になったようで、何とも寂しい。

しかし、その実態を知れば仕方ないことだ。鰻の稚魚シラスウナギは、50年前に比べ40分の1ほどしか獲れなくなった。稚魚がいなくなれば、養殖もできない。ニホンウナギの生態は謎だらけという。

日本から2千キロ離れたマリアナ諸島沖で卵が初めて採取されたのも、つい3年前。海と川の偉大な水のめぐりの中で生きる鰻のことをろくに知らぬまま、日本人は食い尽くしてきた。

専門家は「もう取り返しのつかない状態かも」と警鐘を鳴らす。志ん朝さんは、本当は鰻が大好物だった。けれども自分が熱心にお参りする虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)の使いとされるのが、鰻。19歳の時に芸の上達を祈願して、鰻断ちをした。

そのまま逝った弟の霊前に、美津子さんは鰻を供え、「ずっとがんばったんだね」と声をかけたという。鰻のいない日本。そうなっては希代の落語家も、あの世で笑えまい。