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先生

2013-02-11 07:42:09 | Weblog
精神科医の中井久夫さん(79)は、阪神大震災後に心の傷がどんな症状を起こすかを調べていて、子どもの時にいじめられた自らの体験が、ふつふつと蘇るのを感じたという。

それは、半生記後も風化していなかった。随筆集『アリアドネからの糸』で中井さんは、いじめに陥った者の絶望感を書く。<「出口なし」感はほとんど強制収容所なみである。

それも、出所できる思想改造収容所では決してなく、絶滅収容所であると感じられてくる。その壁は透明であるが、しかし、目に見える鉄条網よりも強固である>。

そして、多くのドイツ人に強制収容所が「見えなかった」ように、おぞましい事態もそれが常態化すれば、日常の風景となり「みえなくなる」。見えていても、見たくない現実であれば、人間の心理は「見えないもの」にしてしまうものなのだと大津市の中二男子の自殺を調べていた第3者委員会は、報告書で中井さんの一文書を引用しつつ、先生も生徒もいじめを見ながら「見えないもの」にしてしまっていたと指摘した。

それでも、勇気を出して先生にいじめを訴えた子がいた。異変を察知した先生もいた。だが、学校は生徒を救わず、家庭での虐待が原因であるかのように言い募った。「透明人間」にされた少年の絶望を、思う。いかに不都合な事実でも、きちんと見る。悲劇を繰り返さぬための第一歩だ。