前回は「押さえる」という技法のお話でしたが、ここで望ましくない押さえ方をご紹介しておきたいと思います。
そうすることで、より良いかたちを意識しやすくなるかもしれません。
まず、こちらは肩が上がって腕に力が入った状態で押さえています。
肩が上がることで、体幹の力が肩先から逃げて手根部に伝わりにくくなり、かわりに腕に力が入りやすくなります。
その結果、正確なモニターができず、セラピストもすぐに疲労し、特に肩を傷めてしまうという問題を引き起こしやすくなります。
続いての方法は、体重を乗せすぎて手関節が過伸展をしています。
手首を過伸展させると靭帯の緊張により関節が安定するので、体重をかけやすくなる気がします。
このような押さえ方は、男性よりも腕力の乏しい女性のセラピストに多く見受けられます。
しかし、手首を過伸展させたまま体重をかけ続けると、手根管内圧の上昇に伴う正中神経の圧迫によって手のしびれを起こすことがあります。
実は私も小僧時代にこれを経験し、半年ほどしびれが続いて泣きを見ました。
そのようなことを起こさないため、手首を背屈させる角度は90度未満にするようにしましょう。
筋膜リリースでは「伸ばす」操作が加わるために、手首が過伸展するリスクは少ないのですが、手根部での圧迫を日常的に用いている方も少なくないと思いますので、よく注意しておいてください。
また、体重を乗せるという表現にも注意が必要です。
習いはじめのころは重心を前に移して、相手に乗りかかるような方法を指導されます。
これは初心者の方でも行いやすい身体の操作法です。
しかし、体重を乗せることしか覚えないと、技術としての幅が広がりませんし、この方法に頼りきるデメリットもあると思います。
重心を勢いよく前に移して体重を乗せていく、慣性が働くような身体の使い方のデメリットは、たとえば患者さんが急に咳をしたとき、セラピストの重心が患者さんの上にあるので、とっさに力を抜くことが難しくなります。
とくに、このようなことが伏臥位で背部から力を加えているときに起こると、肋骨を傷める可能性もあります。
それに、体重をかけて重心を前に移すことにより、運動に勢いが生まれて慣性が働くので、目的の深さで一定の圧を保って触診する際の、圧の微調整が難しくなります。
慣性に対するブレーキは脊柱起立筋の働きで行われるので、長期間の反復使用により腰痛を起こすリスクが高くなってしまいます。
これに対して今回ご紹介している、膝を曲げて腰を落とすような使い方では、重心はセラピストの側にまだ残っているので、何かあったときにも瞬間的に肘の力を抜くことで速やかに手を離すことができ、トラブルを未然に防ぐこともできます。
目的の深さで組織の質感を評価することも微調整しやすく、下肢の曲げ伸ばしにより力を加えるのでコントロールが比較的容易で、腰を傷めるリスクも低くなります。
ですから体重を乗せる方法と合わせて、膝を曲げて腰を落とす技術も身につけておいた方がよいでしょう。
もしかしたら「そのようなことなら、とくに意識しなくてもやっていますよ」という声もあるかもしれません。
意識して使い分けられるようになるまで練習しましょう。
技術というのは、自分で意識的にコントロールできるから技術といえます。
「とくに意識しなくても」ではなく、「乗りかかる」ことと「腰を落とす」ことの配分を状況に応じて意識的に使い分けられるようになることで、はじめて「意識しなくても」使いこなせる技術になります。
スポーツや格闘技も、決められた練習を意識的にくり返すことで、やがて試合の時でもとっさの反応で的確な動きができるようになりますよね
それと同じだと思います。
今回ご紹介した注意点は、筋膜リリースだけでなく手技療法全般にいえることですので、覚えておくと役に立ちます。
つづいて「伸ばす」練習に入りましょう。
そうすることで、より良いかたちを意識しやすくなるかもしれません。
まず、こちらは肩が上がって腕に力が入った状態で押さえています。
肩が上がることで、体幹の力が肩先から逃げて手根部に伝わりにくくなり、かわりに腕に力が入りやすくなります。
その結果、正確なモニターができず、セラピストもすぐに疲労し、特に肩を傷めてしまうという問題を引き起こしやすくなります。
続いての方法は、体重を乗せすぎて手関節が過伸展をしています。
手首を過伸展させると靭帯の緊張により関節が安定するので、体重をかけやすくなる気がします。
このような押さえ方は、男性よりも腕力の乏しい女性のセラピストに多く見受けられます。
しかし、手首を過伸展させたまま体重をかけ続けると、手根管内圧の上昇に伴う正中神経の圧迫によって手のしびれを起こすことがあります。
実は私も小僧時代にこれを経験し、半年ほどしびれが続いて泣きを見ました。
そのようなことを起こさないため、手首を背屈させる角度は90度未満にするようにしましょう。
筋膜リリースでは「伸ばす」操作が加わるために、手首が過伸展するリスクは少ないのですが、手根部での圧迫を日常的に用いている方も少なくないと思いますので、よく注意しておいてください。
また、体重を乗せるという表現にも注意が必要です。
習いはじめのころは重心を前に移して、相手に乗りかかるような方法を指導されます。
これは初心者の方でも行いやすい身体の操作法です。
しかし、体重を乗せることしか覚えないと、技術としての幅が広がりませんし、この方法に頼りきるデメリットもあると思います。
重心を勢いよく前に移して体重を乗せていく、慣性が働くような身体の使い方のデメリットは、たとえば患者さんが急に咳をしたとき、セラピストの重心が患者さんの上にあるので、とっさに力を抜くことが難しくなります。
とくに、このようなことが伏臥位で背部から力を加えているときに起こると、肋骨を傷める可能性もあります。
それに、体重をかけて重心を前に移すことにより、運動に勢いが生まれて慣性が働くので、目的の深さで一定の圧を保って触診する際の、圧の微調整が難しくなります。
慣性に対するブレーキは脊柱起立筋の働きで行われるので、長期間の反復使用により腰痛を起こすリスクが高くなってしまいます。
これに対して今回ご紹介している、膝を曲げて腰を落とすような使い方では、重心はセラピストの側にまだ残っているので、何かあったときにも瞬間的に肘の力を抜くことで速やかに手を離すことができ、トラブルを未然に防ぐこともできます。
目的の深さで組織の質感を評価することも微調整しやすく、下肢の曲げ伸ばしにより力を加えるのでコントロールが比較的容易で、腰を傷めるリスクも低くなります。
ですから体重を乗せる方法と合わせて、膝を曲げて腰を落とす技術も身につけておいた方がよいでしょう。
もしかしたら「そのようなことなら、とくに意識しなくてもやっていますよ」という声もあるかもしれません。
意識して使い分けられるようになるまで練習しましょう。
技術というのは、自分で意識的にコントロールできるから技術といえます。
「とくに意識しなくても」ではなく、「乗りかかる」ことと「腰を落とす」ことの配分を状況に応じて意識的に使い分けられるようになることで、はじめて「意識しなくても」使いこなせる技術になります。
スポーツや格闘技も、決められた練習を意識的にくり返すことで、やがて試合の時でもとっさの反応で的確な動きができるようになりますよね
それと同じだと思います。
今回ご紹介した注意点は、筋膜リリースだけでなく手技療法全般にいえることですので、覚えておくと役に立ちます。
つづいて「伸ばす」練習に入りましょう。