関節機能障害を表記するのに、なぜ変位と制限という逆さまの表現を使うのかという、先週の答えをお話しする前に補足のお話があります。
関節機能障害には、緊張や短縮による位置の異常やかたさ以外にも、弱さや不安定さ、運動パターンの異常などがありますが、手技療法にはかたさを除くテクニックが多いので、わかりやすさを優先して、「変位」と「制限」に限定しました。
この2つの意味の違いさえ理解しておけば、他のものはさほど紛らわしくないと思います。
さて本題の「変位」と「制限」を使う理由ですが、それは局所と広い範囲をみるときで、使い分けたほうが便利だからです。
まず、ひとつの関節など局所をみるときには「制限」で表現したほうが便利です。
なぜなら、表記のなかに「治療の方向」という、何をすべきかということも示されているからです。
例えば右側屈制限なら、右側屈できるように治療すればよいということになります。
スッキリしてわかりやすいですね。
変位で表現しても問題ないかもしれませんが、注意しないと誤解や弊害を生んでしまうことが実際にあります。
左に側屈変位しているという知識だけ頭にあると、下の図の中立位まで戻せばよいという考えで固まってしまう方が、中にはいらっしゃるのです。
ズレている骨を、もとにもどす、という発想ですね。
この発想から、まっすぐなのが正しくて、ズレている、ねじれている、歪んでいるのは良くないという考え方に陥ってしまう可能性があります。
(過去の記事「まっすぐの悲劇」 「めずらしく腹が立ったこと」をご参照ください)
それに、左に側屈変位しているということは、右への側屈制限があるということなので、制限された可動域を回復させる必要があります。
直接的に動かすなら、中立位を超えて反対方向まで動かしていくということになるのですが、変位にのみこだわってしまうとテクニックが中途半端になってしまう可能性もあります。
(カイロプラクティックのアクティベータ・メソッドのように、反対方向まで動かさなくても、瞬間的に制限の方向に向かって感覚入力さえす加えれば、反射の作用によって制限が解除されるという考え方も中にはあります)
これに対し、制限で示したら右に側屈できるところまで動かそうとするので誤解は少ないです。
また実際にも、器質的に重大な問題がなければ、中立位から多少の偏りがあっても「動き」という機能が保たれているなら、大きなトラブルをおこすことは少ないです。
(過去の記事「立派な枝ぶり」をご参照ください)
ですから、ひとつの関節をみるときは、動かないということに着目している「制限」を用いるほうが実用的です。
では、より広い範囲の状態を把握する場合、「制限」ではどうでしょう。
胸椎の下位から上位への状態を示した次の例を、頭で立体的にイメージしてみてください。
「T12に右側屈制限があって、そのまま脊柱は右へCカーブを描き、T1で左側屈制限がある」
いかがでしょう。スムーズにイメージできたでしょうか?
おそらく、ちょっと難しかったのではないかと思います。
広い範囲の状態をイメージとしてとらえる場合は「変位」のほうがわかりやすいのです。
なぜでしょう?つづきは次回に。
関節機能障害には、緊張や短縮による位置の異常やかたさ以外にも、弱さや不安定さ、運動パターンの異常などがありますが、手技療法にはかたさを除くテクニックが多いので、わかりやすさを優先して、「変位」と「制限」に限定しました。
この2つの意味の違いさえ理解しておけば、他のものはさほど紛らわしくないと思います。
さて本題の「変位」と「制限」を使う理由ですが、それは局所と広い範囲をみるときで、使い分けたほうが便利だからです。
まず、ひとつの関節など局所をみるときには「制限」で表現したほうが便利です。
なぜなら、表記のなかに「治療の方向」という、何をすべきかということも示されているからです。
例えば右側屈制限なら、右側屈できるように治療すればよいということになります。
スッキリしてわかりやすいですね。
変位で表現しても問題ないかもしれませんが、注意しないと誤解や弊害を生んでしまうことが実際にあります。
左に側屈変位しているという知識だけ頭にあると、下の図の中立位まで戻せばよいという考えで固まってしまう方が、中にはいらっしゃるのです。
ズレている骨を、もとにもどす、という発想ですね。
この発想から、まっすぐなのが正しくて、ズレている、ねじれている、歪んでいるのは良くないという考え方に陥ってしまう可能性があります。
(過去の記事「まっすぐの悲劇」 「めずらしく腹が立ったこと」をご参照ください)
それに、左に側屈変位しているということは、右への側屈制限があるということなので、制限された可動域を回復させる必要があります。
直接的に動かすなら、中立位を超えて反対方向まで動かしていくということになるのですが、変位にのみこだわってしまうとテクニックが中途半端になってしまう可能性もあります。
(カイロプラクティックのアクティベータ・メソッドのように、反対方向まで動かさなくても、瞬間的に制限の方向に向かって感覚入力さえす加えれば、反射の作用によって制限が解除されるという考え方も中にはあります)
これに対し、制限で示したら右に側屈できるところまで動かそうとするので誤解は少ないです。
また実際にも、器質的に重大な問題がなければ、中立位から多少の偏りがあっても「動き」という機能が保たれているなら、大きなトラブルをおこすことは少ないです。
(過去の記事「立派な枝ぶり」をご参照ください)
ですから、ひとつの関節をみるときは、動かないということに着目している「制限」を用いるほうが実用的です。
では、より広い範囲の状態を把握する場合、「制限」ではどうでしょう。
胸椎の下位から上位への状態を示した次の例を、頭で立体的にイメージしてみてください。
「T12に右側屈制限があって、そのまま脊柱は右へCカーブを描き、T1で左側屈制限がある」
いかがでしょう。スムーズにイメージできたでしょうか?
おそらく、ちょっと難しかったのではないかと思います。
広い範囲の状態をイメージとしてとらえる場合は「変位」のほうがわかりやすいのです。
なぜでしょう?つづきは次回に。