手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

まっすぐの悲劇

2008-07-13 22:38:28 | 治療についてのひとりごと
健康を保つためには『背骨はまっすぐでないといけない』という考えがあります。


確かに正しい一面もあるのですが、あまりこの言葉にとらわれすぎると、かえってマイナスになることもあります。





以前、このようなことがありました





身体のあちこちが痛み、それがどんどんひどくなっているという方からの相談でした。


お話をうかがいますと、はじめに背中の鈍い痛みが起こったそうです。


病院で検査しても、骨には異常なかったもののなかなか良くならず、いろいろ健康関係の本を読んでみると「体のゆがみが病気を起こす」「まっすぐな背骨が健康の秘訣」ということがあちこちに書いてあります。


非常に几帳面な方でしたので、いろんな本でそのように書いてあると「とにかく人間の体はまっすぐでないといけないんだ」と思い込んでしまったのでした。


その後は、立っているときも座っているときも、背中を張り詰め緊張させるようになったそうです。





ところが、痛みは治まるどころかますます広がり、そのうち少し振り向いただけで、腰やわき腹に痛みを感じるようになったのでした。


「自分は注意して生活しているのになぜ良くならないのか」、患者さんはだんだん途方にくれてしまいました。





初診で調べてみると、背中を緊張させ続けたためでしょうか、筋肉がかたまって伸びにくくなっているようでした。


そのため、少し動かしただけで動かせる範囲の限界に達してしまい、あちこちがひきつれて痛むようになったのです。


一度こうなってしまうと、自分からはなかなか動かさなくなるために、なお筋肉が硬くなって痛むという悪循環が起こっていました。





私は「動かすと痛いのではなく、動かせないから痛いのだ」ということを、繰り返しお話しながら治療を進めました。





ところが「動かしたら悪くなってしまう」という思い込みがあったために、なかなかスムーズにいきません。


このメッセージが受け入れられるまでには時間が必要でした。


やがて、動きが広がるにつれて痛みが起こりにくくなる、ということをご自身で実感されるようになってから、明るい表情がもどり、回復への道のりを歩んで行かれたのでした。





考えてみれば、私たちは人間である以前に動物です。


動物は「動く物」と書くように、動かせてナンボなわけです

人間にとって大切なことは、動物らしく前後左右にキチンと体を動かせることです




その上で力を抜いて元に戻したときに、まっすぐの位置だったらなお良いということではないでしょうか。


ところが、どういうわけか姿勢をまっすぐにという言葉が独り歩きしてしまうと、なかには誤解をまねいてしまい、今回のようなケースに陥ってしまうこともあるのでしょう。





こうなったら悲劇です





この経験も、言葉について考えさせられた出来事でした。







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くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」


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