kintyre's Diary 新館

野球(西武ファン)や映画観賞記等を書き綴っています。野球のオフ期には関心の高いニュース等も取り上げています。

映画『マネーボール』を観て

2011-11-25 10:01:49 | アメリカ映画 2011

11-79.マネーボール
■原題:Moneyball
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:133分
■字幕:菊池浩司
■料金:1,800円
■鑑賞日:11月19日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ



□監督:ベネット・ミラー
□脚色:スティーヴン・ザイリアン、アーロン・ソーキン
□原作:マイケル・ルイス
□撮影監督:ウォーリー・フィスター
□編集:クリストファー・テレフセン
□美術:ジェス・ゴンコール
◆ブラッド・ピット(ビリー・ビーン)
◆ジョナ・ヒル(ピーター・ブランド)
◆フィリップ・シーモア・ホフマン(アート・ハウ)
◆ロビン・ライト(シャロン)
◆クリス・プラット(スコット・ハッテバーグ)
◆スティーブン・ビショップ(デイヴィッド・ジャスティス)
◆ケリス・ドーシー(ケイシー・ビーン)
【この映画について】
メジャーリーガーから球団経営者に転職した実在の人物、ビリー・ビーン。彼は強豪球団の三分の一しか年棒が払えないという球団の弱点をカバーするため、2002年に「マネーボール理論」を導入。これまでのやり方にしがみつこうとする抵抗勢力に迎合する事なくチームの変革を成し遂げ、公式戦20連勝という記録を打ち立てた。
本作では、自分の信念を貫きチームを変革していくビリー・ビーンを、ブラッド・ピットが力強く演じている。元野球選手たちが選手役で出演しているだけあって、試合シーンはリアリティたっぷり。普段は見られない球場の裏側が多く見られるのも、ファンにはたまらない。監督を務めたのは、『カポーティ』のベネット・ミラー。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
メジャー経験のあるプロ野球選手から球団のフロントに転身するという珍しいキャリアを持つビリー・ビーン。風変わりで短気なその性格は、若くしてアスレチックスのゼネラルマネージャーになってからも変わらなかった。自分のチームの試合も観なければ、腹が立つと人や物に当り散らすという、癖のあるマネジメントを強行。そんな変わりダネが経営するアスレチックスは弱かった。しかも、貧乏球団のため、優秀で年俸の高い選手は雇えない

チームの低迷は永遠かと思われ、ワールド・チャンピオンの夢はほど遠かった。だが、野球経験はないものの、データ分析が得意なピーター・ブランドという球界の異分子と出会ったことで、風向きが変わり始める。
ビリーは後に“マネーボール理論”と呼ばれる“低予算でいかに強いチームを作り上げるか”という独自の理論を実践。だがそれは同時に、野球界の伝統を重んじる古株のスカウトマンだけでなく、選手やアート・ハウ監督らの反発を生み、チーム状況が悪化。それでも強引に独自のマネジメントを進めてゆく。
その揺るぎない信念は、徐々にチームに勝利をもたらし、誰も想像しなかった奇跡が……。球界はビリーの手腕を認め、周囲からの信頼も次第に回復。そしてある日とんでもないオファーが飛び込んでくる。しかし、そこで重大なことに気づいたビリーは、意外な行動に出る……。

このマネーボールについてですが、野球が趣味の管理人は以前から知っていた内容でこれをブラピ主演で映画化すると知って「どういう内容になるのかな?」って疑問に思いました。と言うのも決して映画向きの内容では無いので、どのように盛り上げるのかが最大のポイントだったからです。案の定、製作発表からブラピ主演で動き出すまでには紆余曲折があったそうで監督も交代したとか。
で、やはりというかA’S(アスレチックスの略称です)20連勝へ導く過程でブラピがGMとして如何にして取り組んできたか?との流れになったようですね。この20連勝ですが、実は管理人もこの20連勝達成した試合を球場で生観戦していました。夏季休暇を取得してSF(サンフランシスコ)に滞在してSFジャイアンツとオークランドA’Sの試合を数試合観戦しましたが、その中の1試合が20連勝目の記念すべき試合でした。自分が観戦した記念碑的な試合が映画のハイライトとして採用されたことは嬉しいですね素直に。

ブラピの演技は非常に良かった半面、アカデミー賞俳優フィリップ・シーモア・ホフマンが演じたアート・ハウ監督役は地味な演出で残念です。ブラピは野球には詳しくないそうですが、テンポの速いセリフ回しや部下のブランドとの会話は面白かった。

ただし、ストーリー的には野球ビジネスの裏側がテーマでA’Sの伸び盛りの若手カルロス・ペーニャをトレードするエピソードなんかは興味深かったです。当時、新人王有力候補だったぺーニャのタイガースへのトレードは私も記憶していますが驚きましたのでね。また、ビーンGMがインディアンスの事務所に乗り込んでリカルド・リンコンというメキシコ出身の中継ぎ左腕投手のトレード交渉の様子や、その帰り際にピーター・ブランドという後の右腕を発掘したエピソードも面白かった。
こうしたビジネスの裏側と、ビーンがメジャーのスカウトの目に留まってスカウトの絶賛を背景にドラフト1位で期待されて入団したもののメジャー定着は出来なかった、この挫折が彼のGMとしての背景にあるのがよく理解出来た。

スカウトの眼力よりも成績をデータ化して「出塁率」と「長打力」のある選手を求めるマネーボールの原型が形成されていった。だが、古株のスカウトやスコアラーはこのビーンGMの方針に当然ながら戸惑いと反発を覚える。編成会議で獲得候補選手に対してビーンGMはあくまでも「出塁率」に拘った選手獲得をピーター・ブランドと一緒に進めて行った。その中でA’Sが注目したのはマイナーで燻っていたケヴィン・ユーキリス、アンダーハンド投手のチャド・ブラッドフォード、スコット・ハッテバーグ捕手について紹介されていた。ユーキリスはRソックスでその後大成してA’S入団は叶わなかったが、後の2人はA’Sが獲得し、特に、ハッテバーグは捕手から一塁へのコンバートを成功させ20連勝を決めるサヨナラ本塁打を放った。

だが、このマネーボール理論は長続きしない。何故なら、「出塁率」の高さを求めるが、そこから先の作戦は結果次第で確率の悪い盗塁やヒットエンドランなどの機動力を使わないので、長打力が求められるのだがそういう選手は給料も高くてA’Sの低予算では手が出せない。
映画のラストではA’Sがヤンキース相手にプレイオフで敗退してブラピが無人のスタンドでポツンとラジオを聴いているシーンがあるが、その後、A’Sは低迷している。マネーボール理論は、他球団で
もその後取り入れてはいるが、元祖のA’Sはオークランドというスモール・マーケットを本拠地にしていて観客動員も伸び悩み成績もパッとしない。昨季は日本人の松井秀喜選手がDH兼左翼手で在籍したがオフに自由契約選手となった。
現在は、サンノゼへの移転をMLBへ申請中だが承認は降りておらず、緊縮予算で投打の主力選手を続々と実績の無いマイナー級の若手有望選手とトレードしていて、来季も下位低迷が既に予想される。

ブラピの出演作ならすべて観たいファンや、野球ビジネスに興味のある方にはお勧めですが、MLB野球事情に疎い単なる映画ファンには余りお勧めできませんね。
 



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5 コメント

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野球は投手力が7割以上占めますからね (PGM21)
2012-01-08 22:58:47
何時もお世話になっております。

映画にも登場した20連勝を決めた試合に立ち会えたのは嬉しいですね。私はMLBの試合は日米野球でしか生で観た事ないので本場はやはり良いでしょうね。
実際にはこの映画ではあまり描かれていないですが、当時どうしてアスレチックスが2年連続100勝以上できたのか?という部分はやはりティム・ハドソン、マーク・マルダー、バリー・ジトという3人で50勝以上の先発投手陣いたからという部分が殆ど触れられていないですよね。
今のアスレチックスにはそういう投手陣がいませんからやはり投手を有しているといないでこれだけ違うものなのかという感じです。
私自身は守備重視的な部分があるのでQSとホールド、セーブ、守備率を重視していきますね。打線は1,2番こそ出塁率と走力、3,4番に打率3割得点圏打率3割打てる選手を配置すれば大量得点はなくても手堅く1点は狙える打線は構成できますね。いくら予算がないとはいえ強打者1人位はどのチームも雇えるし、打線の軸があれば打線はそれに応じて構成できるものです。
1塁は捕手なら比較的リスクの少ないポジションなのでゴロが飛んでも前へ止めれば大けがしないからね。送球補給するのは問題ない。
マネーボール理論も結局は投手陣を揃えられない限り勝ち進む事は実現させるのは困難なのだと私は感じていますが、守備をベースにすればそれなりに勝てるチーム作りはできると考えております。
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>野球は投手力が7割以上占めますからね (kintyre)
2012-01-08 23:54:06
>PGM21さん、何時もどうもです。

御指摘の通りA'Sはファーム組織の育成はしっかりしていますね。その象徴がハドソン、マルダー、ジトというメジャー屈指の3本柱の存在です。この頃はイチローの新人時代でハドソンから打ったのがMLB初安打だったと記憶しています。
野球は投手が良ければ優秀な打者でも打つのは難しいですから、A'Sの当時の優秀な先発陣は対戦相手には脅威だったと思います。
最近、メジャーで重視されるQSですが、あちらでは先発の球数制限がありますから理解出来ますが、日本は完投目標に起用しますのでQSは日本ではメジャーほど重要視されていないように感じています。
日本だとエース級は最低でも7回以上120球が目処なので、6回3失点でも続投して7回4~5失点ではQSの価値も薄いでしょうね。

野球の長い歴史を持ってしても、ここまで数多くの戦術がありました。マネーボールもその一つですが無駄な失策、四死球を先頭打者に与える回数が多ければ勝てません。これは長い歴史が証明しています。そういう意味でも御指摘されている「守備率」と同時に「守備機会」も含めて守りは大事です。

捕手のコンバートですが、これは一塁か外野(主に左翼)が妥当な線です。小笠原(読売)や和田(中日)や高橋信(読売→オリックス)も捕手からのコンバート成功組ですが、その秘密はポジションですね。城島も今季は一塁起用が検討されているそうです。
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Unknown (リバー)
2012-01-09 00:45:29
TB ありがとうございます。

なかなか 何を見ようと思っているかで
評価は分かれそうですね

野球ですがスポ根ではない
クールさを感じさせる人間ドラマですね
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こんばんは♪ (yukarin)
2012-01-09 22:58:49
実際に観戦されてたのはすごいですね。
思い入れのある作品になったのではないでしょうか。
もうちょっと野球に興味があったらもっと楽しめたかなと思いました。
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Unknown (kintyre)
2012-01-09 23:37:50
>リバーさん、こんばんは
日本はスポ根好きですが、やはりアメリカですからこういうタイプに仕上がるのでしょうね。
ブラピの演技スタイルの豊富さがここでは発揮されていました。
>yukarinさん、こんばんは
はい、現地で生観戦していた思い入れの深い試合の一つです。野球に興味というより、「MLBのGMとは何ぞや?」。この点について最低限の予備知識が無いと、辛い部分もあったかと思います。
因みにGMは「General Manager」の略で、監督は「Manager」とあちらでは言います。監督の人選からチーム編成全般、予算管理などGMの仕事は日本以上に大変です。
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