当サイトの北越戦争の記事を書くのに活用させて頂いた資料です、しかし部分部分的には読んだものの、一冊通して読んだ事はなかったので、今回通しで一冊読んでみました。
この本は一応幕末の政治動向についても語られているものの、これについては松代藩の立場から仕方ないとはいえ、完全に「王政復古史観」で書かれており、こちらは見るべき記述はありません。また初期の松代藩兵を率いた岩村高俊を知勇兼備の名将として描いているのも特徴でした、岩村が人間的にどうだったかについては私には判りません、しかし軍事指揮官としての手腕があったと思えるような史料は見た事がない以上、この岩村に対する評価も王政復古史観によるものだと言わざるを得ません。他にも「尾張藩の隊長にはろくなものは居なかったが、一方薩長の隊長は素晴らしい人物が多かった」と書いているものの、その人間的にも素晴らしい長州藩の隊長の名前が「防長維新関係者要覧」に載っていないなど、正直松代藩以外の記述に関しては、信用出来る資料ではないと言わざるを得ません。
この様に松代藩以外の記述に関しては信頼度が低いものの、松代藩兵自身の動きについては有益な資料だと思います。松代藩兵の働きを過大評価する嫌いはあるものの、松代藩兵の編成の特徴、狙撃隊と小銃隊(小隊)の違い、各部隊の士官名などについてはこの資料以上に有益なのは見た事がありません。実際これを読んで初めて、北越戦争に参加した松代藩兵12個小隊の編成が判るなど(五~八番狙撃隊・一~六番小隊・一~二番遊軍)、非常に重宝しました。
しかし松代藩兵の動きをこれと復古記の記述だけに頼るのは危険かもしれませんので、盆休みにでも長野市史でもコピーしてきたいと思います。
ところでふと思ったのですけど、松代藩主の真田家というのは日本人が大好きな存在ですし、戊辰戦争でも松代藩兵は活躍したのですから、幕末の松代藩の記事というのは意外と需要があるのでは思っているのですけど、商業・非商業問わずこの幕末の松代藩を取り上げた記事は、雑誌歴史群像での大山格先生が書いた記事しか見た事が無いのが不思議だったりします。
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