歴声庵

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M・V・クレファント著「補給戦~何が勝敗を決するのか~」

2006年07月10日 23時15分07秒 | 読書
 雑誌「歴史群像」で紹介されているのを読んで、読みたいと思っていたのですが絶版という事で読めなかったのですが、この度再販されたので購入しました。
 内容は多小毒舌が過ぎる気もしますが、「ナポレオン軍は現地徴発を行ったので機動力が高かった」「普仏戦争でプロイセン軍が勝利したのは鉄道を活用した為」という戦史上の常識を多数の史料を挙げ否定して、一般で思われてるほど近代軍隊での補給体制が整ったのは遅かったというのを史上有名な戦いを例に説明してくれるので本当に面白かったです。
 まあこの著者の書く事を全て信じて、今までの通説を全て否定するのも危うい気がしますが、単に通説を否定するのではなくナポレオン軍も補給部隊を率いていた。鉄道の補給上の有効性は認めつつも、主な補給ラインとして鉄道と用い、そこから前線部隊への補給部隊を整え、かつ道路の整備及び交通整理して初めて鉄道を用いた補給が出来るという論調には非常に説得力を感じました。
 他に第二次世界大戦での北アフリカのロンメル軍団に対し、ロンメルの戦術手腕は認めつつも、通説によるロンメルが十分な補給を得れなかったのではなく、十分な補給を受けてたのに補給手段を無視して突進したロンメルに、北アフリカ戦線の敗戦の責任があるというのには、ドイツ贔屓気味の私としては驚きをもって読みました。
 そんな訳で最初に書いた通り多小毒舌気味な書き方ですが、ここまで補給(兵站)を重視した本は初めて読んだので、補給(兵站)に興味がある方には是非読んで頂きたいです。