歴声庵

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上垣外憲一著「文禄・慶長の役」

2006年07月03日 22時09分49秒 | 読書
 文禄・慶長の役に関しては大分昔の学研の赤本を読んだ事があっただけで、そう考えると十数年ぶりに文禄・慶長の役の本を読んだ気がします。
 どうも近年のこの戦役に対しての認識が「道義的」に走りがちで、「政治」「軍事」の概念から当戦役を考えてるのは少ないと思っていたので、そう言う意味ではこの本の政治・外交・軍事の点から当戦役について書いてくれていたので読み応えがありました。
 特に「日本の無知と朝鮮の無関心が当戦役を生んだ」の言葉は印象的でしたね、当戦役に先立って日本側の動きはそれなりに知っていたつもりでしたが、これに対し朝鮮が余りにも無策だったと言うのは知らなかったので、読んでいて唖然としました。
 また当戦役の緒戦の快進撃については、私も通説通りの日本軍の小銃(火縄銃)による火力に朝鮮軍が歯が立たなかったと認識していたのですが、この本を読むと小銃と同じくらい日本刀の切れ味が朝鮮軍にとって脅威だったと、朝鮮側の史料に書かれていると言うのに驚きました。私は武器としての日本刀をそれほど評価していなかったので、敵側から兵器としての日本刀を高く評価する記述があったのには驚きでした。

 他にもそれぞれの戦いの日本軍の動きもきちんと描かれ、軍事的な記述が疎かになりがちな他の歴史系の本と比べると、久々に読み応えのある本でした。
 しかしこの本を読めば読むほど、国内統一戦では抜群の補給手腕を発揮した秀吉が、国内線と対外戦(特に海上輸送)は違うと言っても、最後の当戦役で補給に対してあそこまで無策だったのかには理解出来ませんね。やはり病んでたんですかね、晩年の秀吉は・・・。