検鏡室(病理医が病理診断をする部屋)で顕微鏡を覗いていたら、横にあるディスカッション顕微鏡のところで後期研修医の若い先生が、少し年上の(やっぱり若いが、優秀な)先生に病理診断について相談していた。
そして、ディスカッションが終わったところで「難しいですね、でも先生に相談してよかったです、よくわかりました。」と礼を言っていた。
そして一句思いついたらしく、
「わかりません その一言を 言う勇気」と詠んだ。
具合の悪い方、患者さんを前にしたとき、医者としてしなくてはいけないことは、何かすることであり、何をしていいのかわからなければ他の医者の意見を聞くことだ。そんな時、何をすればいいのかわからず、ただ呆然とそこに立っているだけなのが最も無能な医者のすることだ。
困るのは患者さんだ。
病理診断も同じだ。
これまで見たことのないような病変に出くわした時、どう対応していいかわからず、標本を抱え込んだまま2、3日考え込んだとする。
その結果、診断がどんどん遅れてしまうことになる。さらにその病変が感染症によるものなのか腫瘍なのかがわかれば、不必要な抗生物質の投与は必要ないし、その逆もある。
腫瘍であっても癌なのか肉腫なのかリンパ腫なのかで、次に行うべき病理学的検索方法(免疫染色)が異なってくる。
わからない病変が出てきたときには、すぐに誰かに相談するのが一番いい。そうすることが仮に恥ずかしいとしても、それを恥と思わないこと、すなわち勇気を持つことが大事だと、その先生は考え、一句浮かんだのだろう。聞くは一時一旦の恥、聞かぬは末代一生の恥とはよく言ったものだ。
(今年もホタルが飛び始めました@鎌倉)
さて、私はどうか、といわれたらどうだろう。
「わからない どうせ聞くから すぐに聞く」
となるだろう。
勇気なら これまで散々 試された