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遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

映画化の怪

2014-07-11 16:11:06 | ファンタジー
私の男 (文春文庫) 私の男 (文春文庫)
価格:(税込)
発売日:2010-04-10

読んだのが4年前なので今さら家でみつかるわけがない(というか他所へ回しちゃった可能性が高い)ので電子版を買った、このヒトの作品はほとんど電子化されてる、そうと知ってれば本屋で買うことはなかった・・・とは言えない、電子書籍は回し読みできないからね

完全に忘れてたが元ネタもかなりエロい、こんなにエロを書くヒトだったかな、そこが選考委員(渡辺とか)に受けたんだろか、ラストがあまりにも衝撃だったからミステリだと信じてたが改めてこれはファンタジーでしかあり得ない、ミステリだとしたらなってない(選考委員はミステリ読みじゃないから気にしなかったのかも)
どこがなってないって1回目の殺人現場はしっかり写真に撮られててこれが現像されたら犯人は言い訳のしようがないハズなのに警察はそんな当たり前のことをしない
また2人目の被害者が犯人たちを訪ねたことはちゃんと知ってる人間がいる、この件を証言されたらたちまち死体がみつかってこの話はおしまいになっちゃうから犯人は彼女の口を封じなくてはいけないのに何もしないで放りっぱなし、これは登場人物じゃなくて作者の不備だ(何でもそうだというツッコミはなし)

この重要な証人になるハズのキャラが完全に記憶から抜け落ちていた、彼女は悪いヒトじゃないのに登場人物からも作者からもとんでもなく不当な仕打ちを受けてて、私はあんましコワいことと同じくらい、あんましかわいそうなこともアタマから追い出しちゃうタチらしいのだ、にしてもこの作者ってこんなに根性悪だったかな?
というわけなのかそうじゃないのか映画版ではここまで気の毒な扱いをされてないのだが、それゆえ第一章の後半(映画ではラストシーンの後)がきれいすっぱりカットされちゃってる、そうするしかなかった事情はわからんでもない・・・ことは全然ないので、これこそこの映画最大の欠陥なのだ

どういうことかって、北海道では海上保安庁のお役人をきっちり勤めてた主人公が東京へ出た途端に何から何までシッチャカメッチャカ、ゴミ出しすらせず家の中は足の踏み場もなくなる、まあ私とて似たものだがなればこそゴミは出さないと呼吸もできなくなる(つまり死ぬ)と思う、それが必ずしもいかんとは言わんけど(言うよ!!)だったらそんな家でヒトを殺すなよ、死体の片付けなんかできるわけないんだから

さらにこんな環境の娘と結婚する男がいるハズもない、だから娘は家を出て3年後に父親と久々の再会という運びになったらしいのだが、あれだけベッタリくっついてた娘が今は扶養家族になっちゃったオヤジをあっさり捨てて出て行くか?ムリあり過ぎだよ、それもこれも彼の生活態度が完全に崩れちゃったせいなわけで、そんなふうに元ネタを改竄する必然性は皆無・・・だと私は思うんだがな

最後にネタバレ、時系列をひっくり返すと最大のネタバラシを真中へ持って来るしかなくなる、だけど1人目の被害者は元ネタでは「アンタとあの男は」までしか言っていない、二人が養子縁組した事情が全く不明なこの時点で読者はまさか「実の父娘」だと思うまい、なればこそラストの衝撃になるわけで、やっぱしこれは映像化に不向きな作品じゃなかろうか・・・

追記-パンフの解説(by中条省平)によれば直木賞選考で本作を強力に推したのは井上ひさしとのこと、何となく納得、「妻に対する復讐と娘を犯す喜びに気付かなかった」(by大岡昇平)ってね、いろんな意味で思うことが多い、でも面倒だから以下略


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