事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

因果律

2010-09-30 12:00:53 | 本と雑誌

どういうタイトルや?と自分でも疑問なんだが、どっかではやってる「時系列」は使いたくない、これは本来私の大っきらいな数学(いや統計学)の用語で「時間の経過に応じて分布している変量の系列」つまり数値の羅列なんだからね(あんまし役に立つものじゃない、台風の進路も円相場の変動も未来予測はまず「当たらない」ことからすれば)

さて以下は2ちゃん「おさきみどりどう書くの」レスのコピペ

・2003年月刊songsに、2005年ブログに小説第七官界彷徨の解説を掲載。
・上記事により、20歳の頃から尾崎の大ファンであることを表明。
・2005年冬頃、津原泰水氏に尾崎翠を薦められ川上氏、「おさきみどり、どう書くの?」「だいななかんたい?」ととぼける。

どうもあちらではこれが「定説」になってるらしい、津原さんが川上さんに尾崎の本をを薦めたことと、川上さんが「第七官界」を紹介したこととの間に因果関係はない
けどそれってありえないんじゃないか、津原さんがユリイカ編集長の紹介で川上さんに会って「小説の書き方」をレクチュアしたのがいつのことなのか、本人も記憶定かでないらしいし、その時の様子はBBSのあっちこっちに散らばってて、いちいち探してコピペするの面倒だから私の記憶だけで書くけど

1.同席者は津原さん、川上さん、編集長の他数名、中の少なくとも一人は編集者
2.その時、川上さんの肩書きは「歌手」
(これは同席者の証言とのこと)
3.みんなで鍋を囲んだ、つまり季節は冬
4.ちくまから文庫版「尾崎翠集成」(02年10月刊)が出ていると編集者が言った
5.津原さんは「瑠璃玉」の仕事を始めたところで布教精神があふれてた

さあ、この会合はいつのこと?これを当てるのに推理力は必要ない、「瑠璃玉」の執筆は担当編集者の死によって一時頓挫し、実際にWeb連載が始まったのは07年なのだ、担当者(奥歯さん)が亡くなったは03年4月!!

さて川上さん(当時26-7歳)は文庫版ではなく旧字旧かなの古本をゲトした(「第七官界彷徨」というタイトルだったらしいのだがウラはとれない*、全集だったかも)、稲垣真実氏の後書きがついていた、これとフォーラムの映画紹介をコラージュして、songsの記事を書いた

なぜ古本と言えるかって、フッフッフ、私はモンキービジネス創刊号(08年)を持ってるのだよ(こちら)、字が小さいというヒトのためにコピペすれは

Monkey Classics: Japan
尾崎翠 第七官界彷徨(抄)
川上未映子 第七官界で、命がけで遊ぶ

もっともほとんど新情報はない、「尾崎本人による解説」を新字新かなで引いてるところから、少なくとも08年には文庫版を持ってたことがわかる程度、最初「第七官界」に会ったのは図書館と書いてるけど、これは津原さんの経験である可能性が高いと思う(「どこの」図書館という記述がないことからの推測)、だが「古本屋で買った」だけは(これも店の名前とかはないが)信用してもいい気がする、たぶん文庫2冊買うより安かったろうし、持ってないと稲垣氏の解説引けないし
もっとも「図書館で全集を借りて解説を写した」が真実かもしれず、それだったらもう「何をか言わんや」だがね

*10/7付記-津原BBSに川上さんの文章は「第七官界彷徨」(1980)の後書きを引いたものでは?との推測あり、まちがいなさげだね、ruleさん、サンクス


One, two, buckle my shoe

2010-09-28 16:59:50 | ミステリ
愛国殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 愛国殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
価格:¥ 714(税込)
発売日:2004-06-14

38年ぶりの再読、思えば20歳の私は岐阜県某市の古本屋でとってもよい状態のハードカバーをゲトしたのであった、「フランクフルトへの乗客」と2本立てだったかもう一つ入ってたかその辺は思い出せぬ、小林信彦さん、あなたの解説には感謝もしてるけど、ウラミも絶対忘れませんよ(こちら、あの頃の私ってこんな文体で書いてたんだ)、でもって今回はあえて元本を読むことにした、元のタイトルがこれ、次は目次

One, two, buckle my shoe
Three, four, shut the door
Five, six, pick up sticks
Seven, eight, lay them straight
Nine, ten, a big fat hen
Eleven, twelve, men must delve
Thirteen, fourteen, maids are courting
Fifteen, sixteen, maids in the kitchen
Seventeen, eighteen, maids in waiting
Nineteen, twenty, my platter's empty ...

昔からある数え唄だそうだが、本の内容に合わせて(だと思う)ちょっとだけデフォルメされてる、3,4はknock at the doorだし11,12はdig and delve、たいした差じゃないが
それがどうしたって、私はhen=ニワトリとdelve=穴を掘る(男ども)がどういう関係なのかわからんくて、この3日間悩んでたのだ、思い立って検索してみたらいわく「数が主体なのでお話にはあまり脈絡がありません」(こちら、どうでもいいけど、あんさん、訳文一行抜けてまっせ)
え?とよくみなおしたら、ten と hen、twelve と delve 韻踏んでるんじゃないか
靴をはいて、ドアを閉めて、薪を拾って、まっすぐ並べて
とつながってる感じだからニワトリも次に何かするのかと思ったけど、何のことはない、ただの語呂合わせだったんだ、Twelve と韻を踏むことばが delve しかなかったわけね・・・・ああ、長年のナゾが解けた(ウソ)、しっかし元通り dig and delve ってしといてくれればニワトリに穴を掘れって言ってると聞こえなくもないから、それほど悩まんですんだハズ、クリスティ女史も罪なお方だぜ

まだ途中だが、ストーリーはおおよそ思い出した、どうしてこれを持ち出して来たのか、実は「砂の器」「飢餓海峡」「人間の証明」つながりで・・・あ、もしやこれだけでネタバレになるだろか?

10/1付記-よく読んでみると、章のタイトルと内容にはちゃんと関連があって、ニワトリはニワトリみたいなオバハン、穴を掘るのは庭師の兄ちゃんなので、ニワトリに穴を掘れと言ってはいけないのであった、なるほど、この辺は完全に忘れてたというか、日本語で読んだ時には気がつきもせんかったんだろか?


黄昏抜歯

2010-09-27 15:11:51 | ファンタジー
綺譚集 (創元推理文庫) 綺譚集 (創元推理文庫)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2008-12

著者検印入りの初版本がどこかに埋もれてみつからないので文庫を買った、なるほどこの解説が石堂さんなんだ

しっかし改めてコワいことばかし考えつくヒトだよな、自転車のハンドルがささっちゃった女の子、おいおい君ら救急車呼べよと思ってるうちにお話はどんどんとんでもない方向へ-とか、先生にとりついて狂わせてやるという小学生の幽霊、子供は死んでも残酷だ-とか、イヌを殺されて殺人犯兼放火犯になる男たち、いや気持ちはよーくわかるけど、でもって、このお話をユーモラスとおっしゃる解説者、いや、まあ、確かにさうなんだろが・・・・・

前に読んだ時タイトルの作品が一番気に入ったと思う、親知らずが腫れて痛いのはイヤ(これがまたリアルなのだ、絶対実体験、いや違うかな?)だし、受験生時代に治療するヒマがなくて歯がボロボロになったっていうのも自分のことみたいでイヤだったが、ミステリとしてキッチリ決まってたとこがよかった、やっぱ私はミステリが好き、二階へ上がってハシゴをはずされるのは苦手、別の言葉でこれを異界への移動と言ったり、あるいは夢オチ、妄想オチということもあるかもなんだが、この作者の場合、どれでも説明つかんことがあるし

おっと話がそれた、前回は「犯罪が明らかになった」というミステリ的解決に納得して、肝心な「抜歯」の意味をちゃんと理解してなかった気がする、歯には記憶が宿ってる、辛い記憶につながる歯を抜いてもらったらそれと深くかかわってた恋人のことまで忘れちゃったらしい-というどこかシュールな結末が完全に記憶から抜け落ちてたのだ、そっか、最近新しいことを記憶できんくなったのは、ここ十年ほどでいっぱい歯をなくしたからだったのだな(飲んだくれてばかしいるからに決まっとるじゃないか、このアホが!!)

わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)
価格:¥ 400(税込)
発売日:2010-07-15

でこの作品、このヒトの読者にはなるまいと思ってたのに、アイディアがパクリじゃないかとの疑惑が生じたおかげで買ってしまった、一冊よけいに売れたぜ、喜べ作者-しかしいったいどういうタイトルや、いやタイトルだけやない、内容もやな、もーちょっとわかるよーに書け、純文学=わからん文章と思っとらへんか?(また岐阜県人になってしまった)

何と言うか、リアリティゼロいやほとんどゼロ、主人公がデパートの化粧品売場で働いてて歯科助手に転職したという出だしも唐突なら、そこでの人間関係というか、見習い歯科医の主人公に対する態度や二人のやりとりもメチャメチャ、わずかに歯科医院の道具立てだけリアルに描写されてる(だからリアリティゼロとは言わない)、主人公は「奥歯が自分や」と思うことにしたのだが、なぜそうしたのか説得力なし、だいたい奥歯言っても親知らずだけで4本あるんやで、そのうちどれがアンタなん?そんくらいはっきりせーや、延々と無意味(いやほとんど無意味)な記述が続いた後、ようやく始まるストーリー、恋人が治療に来る、後を追う、アパートの前でわけのわからんことを言って恋人(実は主人公の一方的な思い込みだったことが判明)の彼女から徹底的に罵倒される、歯科医院へ行って「麻酔なしで!!」奥歯を抜く・・・・・

この「時系列」どうなっとるん?恋人が来た時、医院は閉店寸前だった(だから主人公は抜け出せた)、恋人宅で大騒ぎの後、1時間半かけて歯科医院へ行った?そこでまた散々にモメまくったあげくに抜歯?いったいそれ何時や?
歯を抜いたことまで含めてすべてあんたの夢か妄想ちゃうのん?こん中に一行も現実の事件はないんとちゃう?いやそんならその方がええ、「麻酔なしで抜歯」なんて野蛮な事件もなかったならなかった方が私の気は休まる、けど全編妄想の小説、そんなんありか?(ありかもな、それが純文学)

アイディア盗用はまあ事実やろけど、内容似てないから盗作とは言えん、そも盗用するならもうちょっとうまくやってくれんかなあ、元ネタが明晰なミステリとして完成してるのに、パクリの方は徹底して妄想だけのシロモノて・・・(絶句)


パクリとは愛

2010-09-26 18:13:42 | SF
藤子・F・不二雄大全集 少年SF短編 1
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2010-09-24

家人が買ってきて、とにかく「流血鬼」だけでも読んでくれと言う、吸血鬼とハンターの死闘、だんだん吸血鬼側が有利になって・・・みんなが吸血鬼になっちゃったら吸血鬼にとってもありがたくないハズなんだが-と思ってると意外なハッピーエンド

私「あれ?このネタ、私は小松さんの作で読んだ気がするんだがな」
家「元ネタが同じなんでしょう、解説見れば?」

解説(大森さん)によれば元ネタはリチャード・マシスンの「アイ・アム・レジェンド」、あ、あれね-って私は読んでないし映画も見てないけど、星新一の「抑制心」は知ってる、アハハハハ、なるほど、そういうことか
小松さんの「餓えた宇宙(そら)」はちょっとした手違いで吸血鬼がみんな倒されて、ひとり残った人間の「僕」が途方に暮れるという結末だった(あ、読んだの大昔、間違いだったらゴメン)、全くいろんな料理法があるもんだ

というわけ、アイディアのパクリは悪いことじゃない、それ言うならクリスティの「アクロイド」はどうなる、ほとんどのミステリ作家が最低1回はあのネタ使ってない?本家以上の名作も多いと思うけど・・・・あ、これ前にも書いたよーな気がして来たからやめた、とりあえずアップ

9/27付記-この世で一番悲しいことは誰も利用してくれないことである-カート・ヴォネガット、あ、これも確かガイシュツ(2ちゃん風)、ネタ切れ感、ともあれ誰もパクらないようなアイディアならたいしたアイディアじゃないということだ、ものすごいけどパクりにくいアイディアというのもそらあるだろけどな


映画版「第七官界」

2010-09-24 15:25:48 | 映画

尾崎翠フォーラムにちゃんと紹介されていた、何かえらくややこしいい構成で、現在の読者と作者の生涯と小説世界が錯綜するというものらしい、これを書いてるヒトは台本作者本人じゃないが、まさか見ないで解説してるということはないと思う-で肝心なのは物語世界の説明

詩人を夢見る町子が、共同生活をしている従兄弟たちの家事手伝いのため上京する。町子は「私はひとつ、人間の第七官にひびくやうな詩を書いてやりませう」という感覚少女だ。従兄弟たちもコケを実験栽培したり、コミック・オペラを作曲したりで、純粋さゆえややクレイジーな彼らの論争は絶え間がない。ところが「恋愛」に成功するのは栽培されたコケだけで、人間はすべて片思いや失恋ばかり

そういう設定だったのだ、男三人が兄弟で町子は従妹、いや、そうであっていかんことは別にないんだね、年上の二人は自分の兄貴だと町子が地の文で言ってるだけで、「お兄さん」というセリフはないし(そもセリフがほとんどない、それに従兄を「お兄さん」と呼んでいけないわけでもない)、兄貴の一助も町子を「家の女の子」と言ってる(つまり「家の妹」と言わない)、三五郎が隣の少女と仲良くなると町子は一助の部屋に入り浸る(三五郎から一助に乗り換えたと見えないこともないというかそう考えた方がわかりやすい)、三五郎の「ジャックは赤毛のメリーに恋してる」という歌はオリジナルのメロディー、つまり彼が自分で作ったものでしかありえない(だってそんな歌実在しないんだから)
映像化のための微妙な改変、だが愛読者にとっては大問題・・・かなあ、よくあることじゃん?

映画製作者のHPはこちら、この映画のパンフというのがまたなかなかに興味深いモノで本体見なくてもこれだけは読みたくなるんだが、いかんせん売り切れだそうである、ヤフオクに出てないかしらん?(修辞疑問、答えは聞いてない)

INTERVIEW
「尾崎翠と稲垣足穂は、すごくハイカラなの」(矢川澄子)
「ふっと性を超える瞬間があって」(加藤幸子)
MESSAGE
「“変な家庭”の永遠の妹、小野町子」(塚本靖代)
「『尾崎翠』再評価の流れと『少女論』」(塚本靖代)
「お散歩、漫想家の領土を」(山崎邦紀)
「第七官界との出会い」(響まりあ)
尾崎翠・略年譜

伝え聞くところでは、この(98年)後ほどなくして矢川さんと塚本さんが亡くなられたとのこと、何てレアで縁起の悪いパンフなんだ(よけいだったかな?「嵐の四兄弟」を思い出してちょっと言ってみたかっただけなんだが)