事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

「嵐が丘」のミステリ化

2011-01-31 16:57:30 | ミステリ

「本格小説」のどこがスゴいって、キャサリンに当たるヒロインが二人の男に死ぬほど愛されるにもかかわらず、それほどの美質を持ってるとは全然思えない書き方で作者が平然としてるってことかな?確かに元ネタでもそう魅力的かどうかわからんけど、とにかくもカワイイし活発で生命力にあふれてる、ちょっと男の子っぽいてなことはわかる(たぶん作者がそういうヒトだったんだろね)、こちらのヒロインと来た日にはかわいくない上に不器用で運動能力ゼロ、そらこの私じゃないかよ!(笑-じゃなくてホント)

またヒースクリフとエドガーが何となく仲良くなっちゃって、キャサリンを共有することにさしたる抵抗を感じてないらしいというのもかなりスゴい、元ネタのヒースクリフはエドガーをバカにしきってて「あんな野郎、80年生きたところでオレの1ヶ月分も愛せるもんか」(「金色夜叉」の貫一は絶対マネしてますね)なんて言ってる、エドガーの方はちょっと鈍くてヒースクリフを問題にしてない、キャサリンの心が自分にはないことに気づいてないから多少救われてる、亭主として奥さんに愛人がいることを知りながら心穏やかでいられるとしたら、そら聖人かアホかどっちかだろ、いやま結局どっちでもなかったからついには破局となるんだが・・・・

で、どこがミステリなのかって、語り手のエレン・ディーンが元ネタでは完全な第三者として真実を伝えてるという設定だけど、実はもうちょっと深く事件(特にキャサリンの死*)にかかわってたんじゃないか-と考えついた時から「本格小説」の構想は始まったんではないかと(見て来たようなウソ)-あ、これ以上はネタバレになるので言えない、ぜひ買って読んでちょ

*注-よく読みなおしたら、はっきりほのめかして(どういう書き方だよ)はいなかった、ただロックウッドに当たる若い男が「悪夢に悩まされた」ところがそれであると(飲んだくれてた時には)読めたのだった、わけわからんくてゴメン、だから買って読んでちょ、元ネタも是非ね


水村美苗さん

2011-01-30 19:19:00 | ミステリ
本格小説〈上〉 (新潮文庫) 本格小説〈上〉 (新潮文庫)
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発売日:2005-11
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価格:¥ 740(税込)
発売日:2005-11

昨日更新できなかったのはこのものを読み終りかけてたから、いやはやマイった、どんな意味でもマイったなあ、元ネタはE.ブロンテの「嵐が丘」なんだけど、それをネタにして戦後日本を舞台にこれだけの大長編を完結させちゃうかっての、明治の紅葉山人がやろうと思ってできなかったワザを見事にやりとげたんじゃないか?(尾崎紅葉「金色夜叉」と「嵐が丘」の関係については前に書きまくったから-この辺-見てちょ、シロウトの私が何書いたって意味ないけど)

実を言えば、元ネタのヒースクリフ、キャサリン、エドガーに当たるキャラが団塊の世代(自分よりちょっと上)、かなりリアルに描かれてる彼らの両親家族(つまりアーンショウ夫妻、リントン夫妻とその周囲)が自分の家族に重なっちゃう(住んでた場所も環境も全然違うのに)んで、感想を書こうと思うと自分語りになりそうな気がする、それはちょっとマズイので、これ以上具体的内容には触れない

で、小さいネタをちょっとだけ

確かこの本が出たばかしだった頃「エドガーと結婚してヒースクリフを愛人にする」って女の理想なのでは?てなことを誰かが書いてた(もしや作者?)やうな・・・・よくそんなめんどうなこと考えるなあ、私だったら片方でももてあます

娘のキャサリン(キャシー)は名前だけで登場しないのだが、元ネタのヘアトンに(一応)あたる又従兄の恋人にはニンボーとという愛称しかない、おいおい、それ「ヤン坊、ニン坊、トン坊」のニン坊だろ、せめて名前は「仁または忍」-ぐらいのこと言ってやれよ、いくら子供の世代が軽い(元ネタでもキャシーは魅力がない)と言ってもさ


チャールズ・M・シュルツ

2011-01-27 12:57:17 | アニメ・コミック・ゲーム

マンガ「PEANUTS」(どうしても「スヌーピーとチャーリー」あるいは Good ol' Charlie Brown と言いたくなるが)の作者、1922年生まれ(サリンジャーより3年下)の戦中派、連合軍兵士としてヨーロッパへ渡ったが実際の戦闘には参加しなかったとのこと、時々、戦争ネタを書いている、私のお気に入りは、スヌーピーがノルマンディ上陸作戦を戦う兵士になりきって、ラストのコマでお母さんに「クリスマスには帰れると思います」と手紙を書いてる(そこまでの行動に爆笑、朝日文庫に入ってるからぜひチェックしてちょ)-というもの、いささか楽観的に過ぎたね、戦死しなかったとして、実際に帰れたのは1年以上後だったハズだ・・・・・(注-よく見直したらスヌーピーの手紙は「クリスマスには帰れたらいいと思います」だった、そらスヌーピー=作者は未来を知ってるんだからそう楽観的にはなれんよね)

スヌーピーのセリフを引いたサイトは複数あるが、どれもかぶってて、どれもあっと驚くほどじゃない、というかそもスヌーピーのセリフじゃないのの方が多い、やっぱみんなマンガのタイトルを「スヌーピー」だと思ってるのかも、「スヌーピーとチャーリー」てのはTVアニメのタイトルらしいね、見たかもわからんけど印象なし、あ、スヌーピーがナワ跳びやってたかな?(違ったらゴメン)

今日発売の週刊新潮を見たら、川上さんのエッセイにいわく「今DVDを見ている、これからコミックを買う」・・・・タハハ、そうはっきり言われちゃうともう何も言えないよ(こちら)


GOSICK

2011-01-25 12:38:36 | ミステリ
GOSICK  ―ゴシック― (角川文庫) GOSICK  ―ゴシック― (角川文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2009-09-25

家人が深夜アニメ(こちら)を録画して見ていた、作者「桜庭一樹」とあったので早速購入、シッチャカにしてトンデモ-でありながらキッカリとフェアなミステリ、安心して読んでちょ-とまずはオススメしてから・・・

まずはスペルに驚くよね、ゴシックと言いたいなら普通はGothicと書くところが、ハナっからSICK(病的)って宣言してるんだから、時代は昭和初年、ヨーロッパの小国へ留学した日本人少年が塔の上に暮らす金髪の美少女(ラプンツェルだね)と出会って冒険の旅が始まる-という出だしからして完全にゴシックロマンしてるというのに、また怪談風な展開もゴシックっぽいのに
でも解決はちゃんとミステリ(上にバカの字がつくかもわからんが)、少女がホームズ(わざわざパイプを吹かす)、少年がワトソン(頼りなく見えてけっこう強い)を勤め、無能な警部もいる

シリーズものなのでしばらくは楽しめそう、桜庭さんは多才だね