前にこの記事を書いた、殺された大杉と伊藤についてもうちょっと知りたいと思ってたのだが、瀬戸内さんのおかげでいろいろとよくわかった、しかし甘粕真犯人説を疑っておられないところが(こっちは佐野さんの本を読んでるから)ちょっと辛い、その後の行動を見てもすごくアタマがよくて冷静だったハズの甘粕が「思いつめ」(誰が言ったか忘れた)で、国家にとって危険と思い込んだ人物(それもおそらくよく知らなかった)を震災のドサクサにまぎれて(いや震災で世の中が混乱してるからこそ危険ということか)強引に消す、それも暴行の末絞殺という蛮行に走るとはどう考えても信じがたいと思うのだが、もっともなぜ彼が鉄砲玉を引き受けたのか、黒幕は誰だったのか、ナゾと言えばナゾのままではあるのだが・・・・
さて前に「大杉と伊藤は疑われてもしかたない一面があった」と書いた、瀬戸内さんはもちろん疑っておられない、完全に憲兵隊(いや警察)の事実誤認(というよりただの思い込み)としておられるし、彼女の記述を読む限り大杉はごくまっとうな物書きで、ただ夫婦そろって借金踏み倒しと無銭飲食の名人、身内や友人に迷惑がられつつもやはり愛されていたとしか見えないが、また昭和40年当時は健在だった妹さんその他ご家族の証言など聞けば、まあ実際そうだったのかもとしか言いようないのだが
私が何とも納得行かなかったのは大杉の「金回りのよさ」だった、確かに「書けば売れた」かもしれないが(私は一冊しか読んでないけどおもしろかった)、それ以上に「印刷した途端に発禁」という絶対採算合うわけのない雑誌(ほとんどアジビラ)を性懲りなく出し続けてもいる、その度に金を借りては返さなかったらしいが、そんだけだろか、どっかに資金源があったのでは?これは根も葉もない疑いとは言えないのじゃないか
伊藤の方もかなり理解しがたい女性で、最初の夫、辻潤との間に二人の男の子がいて長男は辻といっしょに暮らしてる(でもって大杉が大好きだった)のだが、次男の方は里子に出されたらしくその後どうなったのかわからない、そう簡単に生んだ子供を手放せるものか、大杉との間には一男四女(全員無事に成人)、大正6年から12年までの6年間で5人である(二番目は妹の養女になったので当時家にいたのは4人)、一番下は12年の8月生まれ、二人が殺されたのは震災直後の同年9月、どんな事情があろうと(震災で焼け出された知人が何人か同居していた、つまり家にはとにかくも人手が-女手も-あった)、小さな子供たちをおいて夫婦二人で出かけるか、普通?
甘粕はこの辺の事情を知らなかったらしい(しょっちゅう見張ってた警官から聞いてなかったんだろか)、たまたまいっしょにいた甥っ子を夫妻の子供と信じて連行している、乳飲み子かいると知ってたら女と子供は帰したのじゃなかろうか、後の行動を考えればその程度の人情を持たない男だったとは思えない、もっとも伊藤本人が「自分も連れてけ、夫とは離れん」って言ったかもね、二人は半端でなく仲がよかった、それが悲劇の元だったのだ、たぶん
ということとは別に関係なくこの本売ってるんだね、私が読んだ大杉の著書はこれ(もちろん大正11年発行の元本)、とっても読みやすい文章なんだが、いかんせんムシの名前が全て学名のままなのでどんなムシなのかほとんどイメージが浮かばないのはちょっと残念、この本には21世紀の解説と学名の和訳がついてるとのことだが、イカにもタコにも高いやな・・・・・と言いつつ注文してしまったのだった