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事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

皆川博子の時代小説

2019-03-18 15:29:15 | ファンタジー
笑い姫
時代は天保の改革前後の数年(ラストのみ1861年)戯作者受難の時期にあって主人公の若き戯作者は室町後期を舞台に妖術幻術入り乱れるシッチャカ小説を書いてそれがけっこう売れている、だが語学の才があるおかげでとんだ事件に巻き込まれた、小笠原の父島に住み着いていたアメリカ人の一行にここは日本であることを納得させろと命じられて強制的に小笠原(ボニンアイランズ=無人島)へ送られたのだ、渡航船を仕切るのは何と間宮林蔵!!え、そんなことして大丈夫?無事に日本へ戻れるの?と言えばそこは皆川マジック、心配ない・・・

いやホントはあるけどね、主人公は帰れたが事情があって父島に残った人間もいる、アメリカ人とハワイ人しかいない島で日本人が2人だけ、いったいいかなる運命をたどったことやら作者はそこまで書いてくれないのである、ラストでUSAから帰ったばかりの咸臨丸が小笠原へ向かう、ジョン万次郎が乗っている、ようやく島のアメリカ人と交渉に行くのだ、これはたぶん史実、だが島に日本人がいるかだうかは・・・

作中作の元ネタはユゴーの「笑ふ男」とのことだがこれ今翻訳を入手できないのでどんな話なのかわからない、主人公が高貴な生まれで誘拐されて生まれもつかぬ奇形に改造され・・・という出だしの設定だけが元ネタ通り、シッチャカファンタジーなストーリー展開は完全に作者の創作らしいがこれがまた面白い、作中作の出来が悪かったら本編も生きないがこの作者に限ってその心配もないのだ

いやはやナントモ

2014-10-31 20:20:24 | ファンタジー

ってマンガが昔あったよな、連載中にたまさかしかチェキしてなかったけどホント豪ちゃんらしくてよかった・・・のかどうか今の評価は知らない

帝都物語〈第参番〉 (角川文庫) 帝都物語〈第参番〉 (角川文庫)
価格:¥ 843(税込)
発売日:1995-06

ということとは全然関係なくこれ、とにかく読んでて疲れるのよな、もう一回言うけど文章が乱れてるとか難解だとかじゃなく、要するに内容がシッチャカ過ぎなのだ、はっきり言って生理的に気色悪い!!!

思えば226事件の章(第参番前半)はこれだけが飛びぬけた傑作なんじゃあるまいか、魔人加藤が出ないからよいのかもしれない、もちろん北一輝の超能力はジョークに近いけど、その野望は主人公夫婦の(それとは気付いてないかもしれない)愛と、ニヒリストが昂じてほとんど怪人になってしまった甘粕(元)大尉の大胆行動によって見事に封じられる、そこへ若きヒロインの悲恋が重なってまさに「もって瞑する」しかない完成品に仕上がっちゃってるのである(と思う)

だけどその先は・・・B29が猛威を振るう東京でこともあろうに「ルーズヴェルト呪殺作戦」が進行中、それを阻止せんとするフリーメイスンの怪人にただ一人立ち向かう美少年!!!アホらしくてやってられん、ルーズヴェルトが45年4月に死んだのは史実だが半病人の大統領がいないからとてUSAという大国がビクともするわけはあるまい、どうせ呪殺するならスターリンにすりゃよかろうが-ってこれ意味ないのよね、歴史改変小説じゃないんだもん

帝都物語 第四番 (角川文庫) 帝都物語 第四番 (角川文庫)
価格:(税込)
発売日:2001-07-13

そして第四番、昭和20年8月満州の新京で地中に潜む魔物と戦う風水師、これほどムダな戦いってあるのかね、ソ連軍の戦車がすぐそこへ来てるんだぜ(この先どうなったのか実はわからない)、後半魔人加藤が若返って日本へ向かう

帝都物語 第伍番 (角川文庫) 帝都物語 第伍番 (角川文庫)
価格:(税込)
発売日:2001-08-10

第五番は昭和35年、安保闘争真っ最中の東京、ああそんなこともありましたですねえ、あの頃(80年代=昭和50年代後半)にはさほど大昔じゃなかったんだろが・・・・と今ここ、まだ付き合わにゃいかんのかにゃん?


荒俣宏

2014-10-28 16:14:16 | ファンタジー
図像探偵―眼で解く推理博覧会 (光文社文庫) 図像探偵―眼で解く推理博覧会 (光文社文庫)
価格:¥ 741(税込)
発売日:1992-01

小説読むのは初めてだと思う、唯一読んでたのがこれ、図はきれいだけど文章はいまいち物足りないという印象だった、「ポーはオランウータンを知らなかった」、もちろんその通りなんだろがそんならなぜこの作者が「犯人はこの動物」なんてファンタスティックにしてあるハズのない(あ、この2つは同じことか)解決編を思いついたのかそこにもうちょっとつっこんでもらいたいよなと思ったものである

帝都物語 第壱番 (角川文庫) 帝都物語 第壱番 (角川文庫)
価格:(税込)
発売日:1995-05-25

ということはさておいてこれまた津原さん推奨、ソニーの店へ全巻入ってたので早速大人買いして出張に持って行ったのだが、これが車中だろうとホテルでだろうと全然読み進めないのである、別に文章が乱れてるとか難解だとか言うことはない、どっちかと言えばわかりやすい、だけど内容があまりと言えばあまりにシッチャカな上に、ストーリーが小説のルールを無視してどんどん展開しちゃうような気がする、「え、それでだうなったの?」と思ってると作中の時間は遥か先へ飛んじゃったり、いやそれはそれでいかんこともないんだが、ちょっとブラッドベリ風とでも言おうか(あ、ホメてないよ、私に限っては)

帝都物語 第弐番 (角川文庫) 帝都物語 第弐番 (角川文庫)
価格:(税込)
発売日:2001-06-08

まず主人公加藤保憲って男の「もうちょっと何とかしてくれよ」と言いたくなる正体不明ぶり、名前からして本名じゃあるまい(元ネタは平安時代の陰陽博士加茂保憲)、日本語を流暢に話すがどうやら日本人ですらなさそう、そんな身元不明の男が帝国軍人になれるもんかね?しかも満州へ渡った途端に脱走(?)して日本へ舞い戻ったらしい、軍隊で脱走と言えば重罪のハズ、みつかったら即銃殺じゃあるまいか、追われる身になったのにあっちこっちで堂々と目撃されまくり、どうなってるんだよ?
またこいつのやることがド非常識過ぎ、関東大震災がこいつの仕業というだけでもシッチャカなのに、後半では月を動かすやらついには空の星まで動かしたり、フレドリック・ブラウンかテメエは(こちろん向こうの方が先輩)、もうあきれ果てて何も言えん(どーでもいーけど天文台にいる野尻君なる青年は大佛次郎のお兄さんかな?と思ったら年代的には大佛本人っぽい、二重像だね、たぶん)

帝都物語 第参番 (角川文庫) 帝都物語 第参番 (角川文庫)
価格:(税込)
発売日:2001-07-13

他にもツッコミどころは満載だが面倒なのでやめ、てなわけだったがようやく第参番に入ったらちょっと面白くなって来た、テーマは226事件である、もちろんかなりのシッチャカ、北一輝が超能力を発揮して空中浮揚したり(オームの松本は絶対にこれ読んでたよね)なんてこともあるし、実際に起きた事件とは微妙に違う(死んでないヒトが死んでたり)し、甘粕正彦がここにいたということはないだろ?とも思うけど、そういうフィクション部分も含めてなかなかによくできてるのである、ちょっと風太郎風というか・・・(あ、しまった、ホメ過ぎた!!)

次の舞台は満州でまた加藤の登場らしいのだが、ま、もうちょっとつきあうか・・・


ロバート・ブロック

2014-10-25 23:35:48 | ファンタジー
血は冷たく流れる (異色作家短篇集) 血は冷たく流れる (異色作家短篇集)
価格:¥ 2,160(税込)
発売日:2006-03

三十数年ぶりの再読、思えばジャクソンとダールを読んだのも同じ頃だったような、何となく当時の状況を思い出したが内容は(阿刀田さんが紹介されてた)「ベッツィー」以外完全に忘れてた、「サイコ」の作者である、さすが「ヘルハウス」の作者とはキレが違うと読み進めてたんだが、このヒトある程度短い作品でないとそのキレが生きないんじゃないかという気もせんではない

芝居を続けろ-怪しい役者の正体は?あっと驚くラストの一行
治療-ヘッドシュリンカーって何するヒト?同上
名画-昔心臓の弱い愛人を殺したという元画家、どうやったかというと・・・同上
わたしの好みはブロンド-どう考えても怪しいけどどこが怪しいのかよくわからんオッチャン、何でブロンド娘が好きなのかというと・・・タハハさう来ましたか
ベッツィーは生きている-何も言うことなし、思ってたより長かったけどこれはこれだけ書かないとオチが生きないかも
本音-なるほどなオチではあるが構造式(structure)と方程式(equation)の区別もつかんのはいかがなモノか?としょーもないツッコミを入れてみる
最後の演技-わからんでもないけど被害者がカワイソ過ぎ
ほくそ笑む場所-予測はつくけどコワいオチ、ヒッチコック劇場で放送したとのこと、確かに映像向きだ
フェル先生、あなたは嫌いです-カーのフェル博士に全然似てないフェル先生とはいったい何者?さすがはサイコの作者なお話(あ、これネタバレかも)
強い刺激-アホな女と悪い男のコワいお話、リクツっぽいのはあんましよくないけどこのオチならOKかも

あの豪勢な墓を掘れ!野牛のさすらう国にてうららかな昼下がりのできごと-この3つはいまいち、リクツっぽくて長ったらしくてキレが足りない

マシスンと逆だな、あっちは2つだけ気に入った、こっちは3つが気に入らなかった、だから「サイコ」と「ヘルハウス」の違いだってば


さてもサーバーというヒトは2

2014-10-24 16:39:18 | ファンタジー
虹をつかむ男 (ハヤカワepi文庫) 虹をつかむ男 (ハヤカワepi文庫)
価格:¥ 821(税込)
発売日:2014-01-10

基本シュールタイプなのである、「ウィルマおばさん」はオバハン以外の全員が(子供の私も含めて)常識人なので唯一のド非常識人に怒り狂うんだが(そら私だけだって?かもね)、また「虹をつかむ男」もちょっとばかし空想癖があるだけで常軌を逸するところまでは行ってないと思う(そら私だけだって?かもね)んだが、全編読み終わってみるとこの作者はかなりド非常識なのである

ド非常識な(また!)若い男が世界一周無着陸飛行をあっさり実現(世界最大の英雄、でもこの結末案外常識的なのかも、どっちなんだ?)、何やら秘密の話を聞いてしまったので汽車から拉致される(142列車の女、もっとも妄想オチ、あれ、これまた常識的)、お父さんがベッドにつぶされたと思い込んでお母さんが深夜に大騒ぎ(寝台騒ぎ、これはかなりスゴい)、ダム決壊のデマに街中が駆け出す(ダム決壊の日、これもかなりスゴい)、息子(作者がモデル?)が怪しい足音を聞いたというのでお母さんが隣のヒトに警察を呼んでもらったら・・・(オバケの出た夜、これまた大変なシッチャカメッチャカ)、犬が病気なのでウッズホールからニューヨークまで歩いて帰るという女(訣別、いったいどのくらいかかるんだろな?)、何度も死ぬところを助かったと思い込んでたのにマレなる災難で死んじゃった男(虫のしらせ、解説者はユーモア色薄いと言ってるけど私はけっこうウケた)、殺人をお膳立てしてやった男が罪にもならず経営者として成功した上、近所の子供相手に「悪に染まるな」とお説教・・・(ホテル・メトロポール午前2時、これまたウケた)

昔授業でやったのは(というか教科書に載ってたのは)「ウィルマおばさん」の他に「決闘」と「一種の天才」それに「結婚生活を長続きさせる10のルール」(確かそんなタイトルだった、これは本書に入ってない)、「結婚生活」はともかく後の2つはユーモア色が薄い(というかないというべきか)、なので実を言えばサーバーがユーモア作家だとは今日まで信じてなかったのだ、でも確かに多くの作品はかなり(アッハッハと)オカシイかもね

一番長い「愛犬物語」がいい、どこがいいってそら読んでのお楽しみ、サーバーはホンットに犬が好きだったんだね、そう言えば犬が出て来る作品は3つ、いや4つ(虹をつかむ男が犬のビスケットを買う)、いや違った5つ(クイズあそびの男は犬を失くしたと言っている、ホントかよ?)だけど、自筆のマンガはしばしば関係ないとこにも犬がいてどれもカワユイ、なぜか猫は全然カワユくない