一度書いてみたかったネタなので書きます。
「与謝野源氏」を通読したのは青空文庫で読めるようになってからです(だからたぶん去年)。高校の時入門書と思って岩波新書を買ったのがまちがいの元、つまらない解説はかくあるべしの見本みたいな本でしたね。本編を読ませたくないから書いたとしか思えない。
ただ一つ参考になったのは光源氏が主人公の物語は「若紫」系と「玉鬘」系に二分できて二つの物語にほとんど接点がない-という研究結果を報告してくれてたことでした(当の本人の研究とは思われず、そも意義がわかって書いてたかどうか疑問だが)。
で、最近気がついたんですがメインストーリーってほんとに「若紫」系なんですかね?紫式部が書いた「紫の物語」という思い込みがあるから一方のヒロインは紫上でなくてはいけないと決めてるだけじゃないでしょうか?
源氏物語をものすごく乱暴に要約すれば
1.母と死別して宮中で育った皇子(光源氏)が父帝のお后(藤壺中宮)と密通して子供が生まれ、その子が天皇(冷泉帝)になる-これは本人たちと読者だけが知っていること-。
2.源氏は兄天皇(朱雀帝)の愛人(朧月夜)に手を出したのがバレて都落ちし、そこで出会った女性(明石上)との間に女の子が生まれる。
3.都へ復帰すると、その子が朱雀帝の皇子(後に天皇)の后になって男の子が生まれ、源氏は東宮の祖父として当代きっての権力者になる。
4.そこで朱雀帝(というか上皇)から娘(女三宮)を嫁に貰ってくれと頼まれる。
5.女三宮が密通して男の子(薫)を生む。源氏は今更ながら自分の罪の深さに愕然とする・・・
以上、女性キャラは藤壺、朧月夜、明石上、女三宮の4人がいれば十分。
正妻の葵上は長男夕霧の母というだけだし、紫上は子供がないのでストーリー展開に直接は関係しない、源氏が造営したハーレムの女主人という役どころ(考えてみればお気の毒)。圧倒的な存在感の六条御息所ですら秋好中宮(冷泉帝の后、源氏が言い寄ってアッサリ振られる)の母だから重要なので・・・(こんなこと言うとファンに殴られるな)
というわけで最初の源氏物語には「空蝉」や「夕顔」どころか「若紫」や「葵」すらなかったのでした-以下、私の妄想世界のお話。
紫式部-いやこの世界では藤式部-の略式源氏物語は「若菜」のクライマックス、柏木が蹴鞠の最中、チラと姿を見せた女三宮にひとめぼれするところへかかっています。危険な恋の予感・・・
と、そこへ読者たちから声あり
「ちょっとちょっと式部さん、柏木って誰なのよ?」 -続く-
注・「柏木」の主人公だから柏木、「夕霧」の主人公だから夕霧なのでこれらの章がまだ存在していないのにこういう名前で呼ばれることはありえない-のだが混乱を避けるために、あえて現在知られている固有名詞を使うことにする。