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【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業4章 心ときめく相本の機転 14

2024-06-07 12:03:00 | 【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業4章 心ときめく相本の機転 14   

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。それを私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。

◆4章 迷いの始まり 14 相本の機転

  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
     直前号 ←クリック

 すっかり、落ち込んだ竹根の東京側の担当窓口である相本かほりからの手紙を受け取った翌朝である。目覚めは、手に握ったかほりからの手紙のガサガサいう音で訪れた。日本ならさしずめ桜の開花予想の時期であるが、ニューヨークはまだ冬である。しかし、その朝の日差しは竹根には何となく春めいて見えた。
 地球儀にこだわる訳ではないが、またゴールドマン文具の店を覗いた。店内を歩いているとブックエンドが目についた。ブックエンドにちょっとした小物が付いている。小物がちょこっとついただけで、何もないブックエンドと比べて価格がぐんと上がった定価がつけられている。マーケティングで学んだ『付加価値』というやつだ。
――ここに地球儀を乗せれば多少価格が上がっても売れるのではないだろうか――
 事務所に飛んで戻って、相本に見積書を依頼した。わかりやすくするために手書きのイラストをつけた。返事は、またテレックスで返って来た。見積は二つあった。自分が頼んだのは一つなのに、なぜ二つも見積が来たのか不思議に思った。
 テレックスは、タイプライター同士を電話回線で結んだようなものだから、アルファベットや数字とちょっとした記号しか使えない。従って、文章は英単語とローマ字で構成されている。無機質な通信手段であるが、即時性もある。無機質なテレックスの文章ではあるが、こちらの依頼以外のことをしてくれたことで、かほりの暖かさを感じた。ブックエンドに中世の絵地図の地球儀が付いた商品がすでにあることを見つけて、竹根に知らせてきたのである。見本もすでに飛行機で送る手配をしてくれているという。それに加えて、竹根が依頼した仕様のブックエンドの見積も付いてきた。

  <続く>

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