美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

春告鳥(神戸伊三郎)

2023年02月01日 | 瓶詰の古本

(1)ウグイス(鶯) ウグイスは四季を通じて我が国内にすんでいる鳥であるが,春早く,他の鳥に先だつて活動をはじめ,その鳴き声が清く高くうるわしく,一陽来復を知らせるので,ハルツゲドリ(春告鳥)ともいわれる。
 文芸の方には,ウメにウグイス・タケにスズメ・ヤナギにツバメという組み合せがある。これ等の中にはあまり関係のないものもあるが,ウメとウグイスとの間には,どんな関係があるのであろうか。
 ウグイスはクモや昆虫を食べる。春早く出る昆虫は,香気にさそわれてウメの木に集まつて来る。それを食べるためにウグイスはウメの木にやつて来るのである。ウグイスはまたメジロなどと同じように,花の蜜を吸う鳥である。まだ春が早くて他の花の咲いていない時であるから,ウグイスはウメの花をおとずれて,その蜜を吸う。ウメとウグイスとの間には,このような関係がある。
 ウグイスは蜜を好み,寒中にミカンを輪切りにして,鳥籠の中に入れ,入口をあけたまゝにしておくと,ウグイスがミカンの汁を吸いに籠の中へ入つて来る。ウグイスはミカンを餌にして,たやすく捕えることのできる鳥である。
 冬の間,ウグイスはヤブからヤブへと渡り歩いて,木の皮などにひそんでいるクモや昆虫などを食う。このためにはほそい口ばしが都合がよい。体は灰色の多い緑色であるが,これはヤブの中のうす暗いところでは,保護色の役目をする。
 飼鳥として鳴き声のよいウグイスは,ヒナの時から訓練されたものである。ヒナを捕えるには,ウグイスの巣を見つけなければならない。ウグイスは5月の末頃卵をうみ,卵は13~14日でかえり,ヒナは3週間で巣立ちするものであるから,この間に巣を見つけなければならない。
 ウグイスの巣は,地上から1m以内の高さの雑木の茂みやササの間などに,タケの葉・ススキの葉・シユロの毛・鳥獣の毛などを集めて作られてある。ウグイスは一夫多妻の鳥であるから,どこかで一つの巣を見つけたら,そのまわりをさがすと,必らず四つ五つの巣が見つかるということである。
 ウグイスは我が国特産の鳥で,夏に山地で卵をうみ,秋から冬にかけて平地におりてくる。

(「鳥類学習図鑑」 神戸伊三郎)

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