美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

復興都市ブラツ記(その一)(雑誌・黒白)

2010年02月10日 | 瓶詰の古本

復興都市ブラツ記
           ビリケン生
                 背高童子

    はしがき
 あの恐しい九月の地震も過ぎて、玆に六ヶ月、春のうらゝかな陽を浴びて、同行二人、復興の都市をブラツ記、口から出任せの与太振りの中に、味な警句も満更見捨てたものにもあらざるべしと、斯くは記して足のまにまに。
           銀座から日本橋まで
 帝都の美観と誇つた、銀座から振り出す。
ビ『どうだい、久し振りで銀座へ来てみたが、何んと家が、皆んな低くなつて終つたね』
背『ウム、まだ地震があると云ふから、コワインだらうよ、それと金のないのでね』
ビ『さうかも知れないが、此の埃りは一体どうしたものだい、何んとかならないものかね』
背『銀座改名して埃り座と来たね。是れぢや昔の銀ブラも、今ぢや形なしだ、ヽヽオイオイ、それでもやつぱり、相当に商ひはあるんだね』
ビ『斯んな埃りの中へ買ひに来なくつても、山の手のちやんとした家で買つたら好さそうなものだがね』
背『電車賃だけ損をしてまでな、ハヽヽヽヽハ』
ビ『あんまり大きな声を出すと、営業妨害で撲られるぞーーフヽヽヽフ』
  
(「黒白 第七十八号」)

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