美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

泣かなければ見えないものもある

2009年12月09日 | 瓶詰の古本

   田舎芝居の臭い台詞にしか聞こえないと思うが、泣かなければ決して見えないものもある。辻潤ではないが、涙に溢れた目でなければ掴まえられないものがあるにはある。子供であれ大人であれ、生者であれ死者であれ、乾いた目の中には結ばれない景色を持っている。時が何遍くり返しても、愛の歓喜がどんなに純粋だったとしても、それだけでは見ることができず、泣かなければ見えないものがある。それと名指しすることがどうしても出来ず、ただ、それでしかないと頷くだけのもの、涙の中に映ったそれを見送った人でなければ、決してあるとは伝えられないものがある。

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