田舎芝居の臭い台詞にしか聞こえないと思うが、泣かなければ決して見えないものもある。辻潤ではないが、涙に溢れた目でなければ掴まえられないものがあるにはある。子供であれ大人であれ、生者であれ死者であれ、乾いた目の中には結ばれない景色を持っている。時が何遍くり返しても、愛の歓喜がどんなに純粋だったとしても、それだけでは見ることができず、泣かなければ見えないものがある。それと名指しすることがどうしても出来ず、ただ、それでしかないと頷くだけのもの、涙の中に映ったそれを見送った人でなければ、決してあるとは伝えられないものがある。
最新の画像[もっと見る]
- 辞書は大小を超越する宇宙書物である 9年前
- ラブクラフトが夢想した『コンゴ王国』 14年前
- 乱歩「孤島の鬼」は西日を浴びて読む 16年前
「瓶詰の古本」カテゴリの最新記事
- 日中に夢見る人、世界の秘鍵を求め光明暗黒の海を渡る者(ポー)
- 文事・宣伝に通じたえらい人達がちゃちな話の種を大ごとに仕立てて商売などしてい...
- 「國民字典」おくがき(日下部重太郎)
- 現実と隔てる磨りガラスの向こうに怪異の世界を見透す小説家にとっては、心理遺伝...
- 小説を書くほどの者にとって、真の芸術家が悪人であるはずはなかった(カロリーヌ...
- 講談版「二刀流」、秘術燕返しとの決闘(榎本進一郎)
- スヴィドリガイロフは夢の中から現われ、実在の裏口から夢の中へ戻って行った最も...
- 世界中の作家が『ドン・キホーテ』を愛するのは、小説の根本にあるべき徹底した善...
- 着飾った凡庸を自ら意識している人であれば、無知で醜悪な人物に共感を覚えずには...
- 自分の好きなポオの作品(佐藤春夫)