第2章は「宗教画」、第3章は「神話画・歴史画」と絵画作品が続いた。
この規模の展覧会では大型作品を望むべくもなく、小ぶりの作品が並ぶのは否めない。故に、ルーベンス&工房作《ペルセウスとアンドロメダ》が一番迫力ある大型作品となっていた。しかし、私的には地味目の小作品のいくつかに、意外な面白さを見つけてしまったのだ。
ペーテル・パウル・ルーベンスと工房《ペルセウスとアンドロメダ》(1622年以降)リヒテンシュタイン・コレクション
ということで、この展覧会は「北方ルネサンス、バロック、ロココを中心とする油彩画と…」であるからにして、先ずは、北方ルネサンスの画家であるルーカス・クラーナハ(父)の小作品(祭壇画部分を含む)3点も展示されていた。私的に特に面白く感じたのは《イサクの犠牲》だった。
ルーカス・クラーナハ(父)《イサクの犠牲》(1531年)リヒテンシュタイン・コレクション
画面後方(岩の上)には「イサクの犠牲」場面が小さく描かれているのだが、前面にはロバと二人の男が描かれている。多分、「次の朝早く、アブラハムはろばに鞍を置き、献げ物に用いる薪を割り、二人の若者と息子イサクを連れ、神の命じられた所に向かって行った。」(『創世記』 22:3、新共同訳)なのではないかと思ったのだが、どうなのだろうか??
普通ならば「イサクの犠牲」場面を中心に描くことが多いのに、クラーナハ(父)はロバと二人の若者をクローズアップしている。なんだかクラーナハ(父)の茶化した遊び心のある性格が見えるような気がしてしまった(あの《若返りの泉》も描いているし)(笑)。それに、ちゃんとクネクネ蛇サインもしているしね。
この作品でもしみじみと観てしまったのだが、人物背景における濃緑色の樹木描写は、まさにアルトドルファー等の「ドナウ派」に共通するところであり、クラーナハ(父)をドナウ派の先駆的画家としてだけでなく、ドナウ派の拡大範疇にいれる研究者もいることを想起させる。と言っても、「ドナウ派」と言い出したのは19世紀末らしいけど。
ということで、感想文はまだ続く予定である