ヤン・ファン・エイクに連なるフランドル絵画の巨匠たちの系譜を見れば、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン~ハンス・メムリンク~ヘラルト・ダーフィットと続く燦然たる伝統がある。その細密な写実描写と質感表現は驚きと共に目を楽しませてくれる。
今回展示されているヘラルト・ダーフィット《風景の中の聖母子》もフランドル絵画らしい細部が目を魅了してくれた。
ヘラルト・ダーフィット《風景の中の聖母子》(1520年頃)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館
美術ド素人の私には所謂「薔薇園の聖母子」なのではないか?とも思われたのだが、中世の「授乳の聖母」であり、原罪の果実を持つ故に「悲しみの聖母」でもあるらしい。
遠景風景の細やかな描写、聖母の純潔を表す赤薔薇と白百合が咲き誇る庭園の緻密な描写の麗しさ!(赤薔薇や紫色のアイリスはキリストの受難をも表すらしい)。
香しき緑の風景の中に座る聖母の赤い衣の何と美しき輝き、観る者の方を静かに見つめる愛らしき幼児の仕草など、宗教的な意味を超えても、なお観る者の眼を喜ばせてくれるのだ。
だが、ダーフィットに影響を与えたと思われる先行作品がある(^^;
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン《聖母子》(1433年頃)ティッセン=ボルネミッサ美術館
ハンス・メムリンク《薔薇園の聖母子と二人の天使》(1480年頃)プラド美術館
メムリンクもウェイデン作品を基にしたそうだし...
(↑ はネットで拾った画像 :ウエイデン(?)《The Virgin and Child With Two Music-Making Angels》: 制作年も所蔵先も不明で、もしかしたら信用性の低い画像かもしれない(^^;;)
フランドル絵画の伝統はこうして受け継がれ、ダーフィットの次はアドリアーン・イーゼンブラントへと引き継がれて行くのだろう。帰属作品ではあるが国立西洋美術館《玉座の聖母子》もその一例だと思うのだ。