花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

東京都美術館「バベルの塔」展の感想(5)

2017-04-25 22:31:34 | 展覧会

前回も触れたが、ハンス・メムリンク《風景の中の二頭の馬》も今回展示されていた。この作品の対になる作品がメトロポリタン美術館にあり、家庭用祭壇画の一部と見られている。

左:《ピンクの花を持つ若い女性》(1485-90年)メトロポリタン美術館

右:《風景の中の二頭の馬》(1490年)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館 

左翼パネルの女性は理想化された寓意的な女性像で、ピンクの花(赤いカーネーション)は婚姻を象徴し、「真の愛の徳とそれが克服しなければならない障害を表している」らしい(MET解説)。 

右翼パネルの《風景の中の二頭の馬》はフランドル絵画らしい風景が背後に広がっており、前方には白馬と栗毛の二頭の馬が描かれ、白馬の背には猿がいる。猿は恋する男のシンボルであり、白馬は欲望を栗毛は誠実を象徴するようで(相反する象徴ね)、猿と栗毛は女性の方を見ている。もちろん、女性の方もだが。

寓意の内容はともかく、フランドル絵画の巨匠メムリンクらしい静謐で緻密な画面を眺められるのは嬉しかった。

ちなみに、図録には「ニューヨークにある女性を描いた同じサイズの板絵」としか書いていないし、図版も載っていない。今回の図録はボスとブリューゲル以外は全体的にあっさりしていて...要するに読み応えがちょっとね(^^;