花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」感想(3)

2016-03-04 00:59:01 | 展覧会

さて、今回のカラヴァッジョ来日作品の中に3点の個人蔵作品が含まれている。なかでも2014年10月に真作発表された《法悦のマグダラのマリア》は、展覧会直前に「世界初公開!」とセンセーショナルにマスコミでも取り上げられた。 

専門家が真作と判断するにはそれなりの根拠があることは了解している。今回も絵に添付されていた書付け(紙切れ)に基づく調査や、他のコピー作品との比較検証を経てのミーナ・グレゴーリによる真作発表だったのだから。そんな経緯を知っていても、美術ド素人は自分の目で確かめたいと思うものだ。まぁ、哀しくも1枚だけ観て真作だとわかる眼力などあろうはずもないのだけれど(^^;;;

実際に《法悦のマグダラのマリア》を観てみると、「これが真作なのね」と眺めつつ、柔軟さに欠ける心(年寄りだから)は真作として受け入れるのに少し躊躇してしまった(汗)。肌蹴たブラウスの陰影描写がド素人眼に少し気にかかったのだ(多分にカラヴァッジョ偏愛の複雑な心理も含まれている)。しかし、質的には十分納得できる作品であり、とにかく観ることができて嬉しかった!!! 

あ、念のため付け加えると、へそ曲がり的に書いてはいるけれど、カラヴァッジョ作品として本当に質的に素晴らしい作品なのだ。自分の受容過程を書き綴っているので、誤解しないでね。

暗く深く塗り込められた背景の左上方には微かな光とともに十字架が見える。荊冠が掛けてあるようだ。呼応するように仰ぎ見るマグダラのマリアの薄く開かれた眼から零れる涙が美しい。

カラヴァッジョ《法悦のマグダラのマリア》(1606年)個人蔵

この左上方からの光に仰角の顔の陰影は、後の《聖女ルチアの埋葬》(パラッツォ・ベッローモ)に引き継がれているように思えた。しかし、喘ぐようにわずかに開く下唇が、褪色だろうか?灰色を帯び、なにやら異様な情感を漂わす。この下唇、まるで江戸の浮世絵美人のようではないか? 更に、首から肩にかけての曲線も官能的で、もしかして、江戸美人の色気と通じるものをカラヴァッジョは下唇に込めようとしたのかもしれない。 

図録を読むと、グレゴーリ女史は組んだ指の影にご執着のようだが、確かにマグダラのマリアの指はとてもカラヴァッジョらしかった。カラヴァッジョの描く指はたいてい頼りなく、ぐにゃりと曲がりそうな指なのだ(汗)。この他にもカラヴァッジョらしさは作品の中に散見できるし、真作として受け入れなくてはいけないのだろうなぁ、と思ったのだった。などと、ド素人のくせに偉そうにスミマセンです(^^;;;;; ちなみに、感想も続きます(^^ゞ