花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立新美術館「静物画の秘密展」

2008-08-02 23:09:26 | 展覧会
今日のTV「美の巨人たち」はベラスケス《薔薇色の衣装のマルガリータ王女》だった。私的にこれはちょっと困ったことで、ブログに載せようと書いていた内容と少しばかり重なっている部分がある。ということで、あわててUPする(焦るよ~(^^;;;)。

☆☆☆

国立新美術館でウィーン美術史美術館所蔵「静物画の秘密展」を観てきた。(いつもながら、チケットを頂いたokiさんい感謝!!)

最近フィレンツェ近郊に世界で初めての「静物画美術館」ができたが、今回のウィーン美術史美術館の特集と言うのも、静物画に新たな関心が寄せられているということなのだろうか?

さて、展示は4つの章から構成されていた。
第1章 市場・台所・虚栄(ヴァニタス)の静物
第2章 狩猟・果実・豪華な品々・花の静物
第3章 宗教・季節・自然と静物
第4章 風俗・肖像と静物

展覧会の解説によると、神話や宗教画の背景に登場する果物や植物などが独立して静物画というジャンルを形成して行ったという。

ものの本によると、静物画の起源とされるのはネーデルランドのピーテル・アールツェン(1507-85)、ヨアヒム・ブーケラール(1535-74)、北イタリアはロンバルディアのヴィンチェンツィオ・カンピ(1536-91)などの台所画からだと言われている。確かに「マルタとマリアの家のキリスト」など前景にマルタと台所が登場したり、市場絵の後方にキリストが女性のために地面に線を引いていたりする作品を何度か観たことがある。

そんな歴史によるものなのか、今回の展示も主にフランドル・ネーデルランド、そしてイタリアの静物画中心だった。同じハプスブルグ系統だというのにスペインのボデゴンが無いのが寂しいけどね(^^;

さて、展示はマルティン・ファン・クレーヴ《解体された雄牛》(1566)から始まった。私的に驚いたのはその解体された肉主題がアンニバレ・カラッチの《肉屋》(1580年ごろ)に先行していることだった。あのレンブラントも同じ主題(1655年)を描いているし、テーマとして実に興味深い。


アンニバレ・カラッチ《肉屋》(1580年ごろ) キンベル美術館

レンブラント《解体された牛》(1655)

続くヤン・バブティスト・サイーフェ(父)の《肉市場》のお肉なんてぷりぷりと新鮮で美味しそうだった!生ハムにして食べたくなった(笑)。大食を戒める説もあるようだけど、この写実的質感描写こそが「静物画」の命なんだなぁと思う。古代ギリシアのアペレスの逸話じゃないけど、本物と見紛うばかりに描くことが当時の画家の力量発揮であったろうしね。

しかし、肉や魚介類、果物や花にしても…結局は腐れて失われていくもの…という宗教的な意味合いを含めたヴァニタス(虚栄)画なのだ。花のブリューゲルことヤン・ブリューゲルの豪華な花卉画でさえも…。

でも、豊かな食材や花々に単に宗教的意味合いを持たせただけでは無いと思う。だって欧州の美術館を巡っていると花や果物などの静物画で溢れた展示室があったりする。それだけ時代を通して人気のあるテーマだということは、私的に思うに、綺麗な花は室内を飾るし、美味しそうな食材は観て豊かな気持ちになれたからなんじゃないか? 会社での昼食時、家庭画報のお料理ページを開きながら良くお弁当を食べていたのだけれど、それがコンビニ弁当であることを忘れてしまったしね(笑)。

さて、今回の展示で一番の収穫だったのはベラスケスの《薔薇色の衣装のマルガリータ王女》(1654)だった。もちろんウィーンでも観ていたが、実はこの作品をしみじみとは観ていなかった(汗)。


ベラスケスの《薔薇色の衣装のマルガリータ王女》(1654)

あらためて観ると幼い王女の顔を描く柔らかで繊細な筆致から、衣装や背景を描く大胆な筆致へと変化する妙と色彩構成の見事さに感動する。王女のドレスの銀灰色から薔薇色への諧調、背景の青色から灰色の諧調、ガラス花瓶に生けられた薔薇色とマーガレットの白。背景の斜め構図の中に王女の顔が愛らしく強調され、画面全体が落ち着いた色調として心地よく調和しているのだ。

そして、今回の「静物画」的な見方をすることにより、ハッキリと気が付いた。画面から青いテーブルクロスの上の花瓶と花々を切り取ったら、そのまんまマネではないか!!マネが真似したのね(^^;;;

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以上、内容的にまだ半端なのだけどブログUPした。何故UPしていなかったかというと、静物画の成立に関してどうしてもカラヴァッジョ《果物籠》に触れたくて、どう絡めようかと迷っていたからだ。もしかしたら「続く」かもしれない(^^;;;