
次の日は、夕方まで家にいることにして涼しくなってから預けっぱなしの自転車をとりに
駅まで歩いた。
神々しいような向こうの様子を、こんな風景を。ようやくカメラ で抑えることができるように
なったのはありがたい。この瞬間のぼくの気分を。
こうやって思い出すことができるのは、うれしいものだ。
灯りが点る寸前だった、この空に。ひとり歩いている。
お盆。サンスクリット語の盂蘭盆会(ullambana うらんばな)から変じて、すでに日本では
ご先祖様の帰ってくるのを、一緒に過ごすための儀式になっている。
もう帰る場所がないぼくには、誰か帰ってきてるんだろうか?
ぼくは、おばあちゃん子だった。
自転車を取りに駅までつくと、なんだかすっかりあたりは
暗くなりはじめていた。かなりすいている。人影もあまりない夕方。
おばあちゃん子だったぼくの今を、おばあちゃんはどう思っているだろうか。
そう思うと申し訳なく思ったり、面映ゆい気分になったりもする。
逢いたいと思っていたのにもう逢えないとわかった、あの日。ぼくは山形にいた。
飛行機の中だけで、みんなの前では泣くまいと心に誓って伊丹に急遽戻ってきた日も晴れだった。
ぼくのそばには誰かいるのだろうか。
自転車に乗って、もときた道を引き返す。もうすっかり暗くなっていて、人影が多いのは
途中の回転寿司やさんだけだった。
お盆の夜はとてもさみしい。最近はいつもそうなのだ。
それでももう少し、今夜は昔のことでも思い出してみようと思う。
ナオト・インティライミ - Brave [歌詞付き]