遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『Disney PETER PAN』 Adapted by Addison Leigh Disney PRESS

2022-09-10 00:04:32 | レビュー
 気分転換に絵本『ピーター・パン』の電子書籍版を読んでみた。ディズニーの系列会社から出版されている。著作権の記述を見ると、2015年の出版。「Disney Read-Along e Books」であり、ナレーションが付いている。実質36ページの絵本。手頃なボリュームである。
 先に読んだ同じ出版社の『THE LION KING』と比較すると、本文の英文はこちらの方が読者対象とする年齢が少し上になるようだ。文章のボリュームが増え、文章にif文、仮定法が出てきたりする。

 「ピーター・パン」の名前やその童話があることを知ってはいた。しかし、シンデレラやピノキオの話を見聞しているほどには、私はピーター・パンについて知らなかった。この絵本を読み、併せて少し調べて初めて具体的なことがわかり、多少全体的なイメージができた。絵本を糸口にして学べることが多い。
 本書は、著者について Adapted by Addison Leigh と記されているとおり、ピーター・パンの原作の翻案絵本である。それでは、原作者は誰か。
 原作者はイギリス・スコットランドの作家ジェームス・ナシュー・バリーだという。1904年に戯曲『ピーター・パン:大人にならない少年』を発表し、1911年に小説『ピーターとウエンディ』を生み出した。少年ピーターパンは空を飛ぶことができ、ネバーランドと呼ばれる国で冒険するという物語が生み出されたのだ。
 その後に、様々な作家達がピーターを主人公に再話を繰り返してきている。
 
 序でに触れておこう。シンデレラの物語は作者としてグリム兄弟とシャルル・ペローが有名である。だが、さらに溯りそのルーツとなるはジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ(五日物語)』に採録されたチェネレントラであるという。一方、ピノキオは『ピノッキオの冒険』がオリジナルでイタリアの作家カルロ・コッローディによる児童文学作品だそうである。

 さて、本書は、澄み切った星空の夜に、ウェンディ・ダーリングが、二人の弟ジョーンとマイケルにピーターパンの冒険を語って聞かせる。場所はロンドンにあるダーリング家の子供部屋。そういうシーンから始まる。ウェンディは弟たちにピーター・パンの冒険物語を幾度も話してきていた。その話をピーター・パン自身が聞きにやってきていた。ウェンディは自分の語る事は単なるお話じゃないときづいた。彼女はピーター・パンの影を見つけた。そしてそれを子供部屋に閉じ込めたからだ。
 この前、話をそっと聞きに来ていた時、ピーターパンは影を忘れたことに気づき、小妖精のティンカー・ベルと共に、子供部屋に戻ってくる。その時、ウェンディが明日からは大人なのとピーター・パンに話す。それはウェンディが子供部屋を出ることを意味し、もうピーター・パンはウェンディの話を聞けなくなることに・・・・。
 ピーター・パンはウエンディに影を縫いつけてもらった後、ネバーランドにおいでよ、そうすりゃ大人にならなくていいんだからと、ウェンディを誘う。
 ウェンディ、ジョーン、マイケルはピーター・パンに連れられて、夜空を飛び、ネバーランドに行く事になる。そこからネバーランドでの冒険が始まって行く。
 
 この絵本でも、意外と初めて目にする単語や知っていてもこの絵本の文脈で使われている意味など知らなかった単語がけっこうあった。
 たとえば、starry 。冒頭に出てくる。On a clear and starry night in London・・・・と。star から意味は推測できる。辞書を引くと、「星の多い、星明かりの」と説明されている。だけど、こんな単語、初めて目にした。絵本では最初に知る単語の一つに過ぎないのに・・・・。
 ウェンディがジョーンとマイケルに物語を聞かせる部屋は、in the Darling nursery と記されている。文脈から子供部屋とわかる。辞書を引くと、最初に「(米)(家の)赤ちゃん用の寝室;(病院の)保育室、授乳室」と説明されていて、その後に「(やや古)子供部屋」(『ジーニアス英和辞典』大修館書店)とある。nurse という単語はよく見知っていても、nursery という単語は意識しなかった。古い使い方らしいが、子供部屋の意味があるなど、この絵本から知った次第。
 おもしろいのはウェンディがピーターパンに告げる言葉である。上記に関係するところ。
 As Wendy sewed, she explained that it was her last night in the nursery.
"I have to grow up tomorrow," she told him. Peter quickly realized that if Wendy left the nursery, he wouldn't be able to hear her stories anymore.
grow up という言葉をこんな風にも使うとは思ってもいなかった。

 子供の絵本、されど絵本である。知らなかった、或いは殆ど目にしたことがない単語をこの絵本で学ぶことになった。英語圏では子供時代に絵本を通じて、自然に覚える単語なのに・・・・。私の場合、今頃になって次の単語群をこの絵本から学ぶことに。
pixie(妖精)、hide-out(隠れ場所)、lair(ねぐら、隠れ家)、gobble(がつがつ食べる)、sneak up on (<人の後から>こっそりとしのび寄る)、culprit(犯人)、infuriate(激怒させる)、plank(厚板)、lunge(突きを入れる、突進する)、draw his dagger(短剣を抜く)、cast off(舫い綱を解く、出航する)と言ったところ。

 英語圏の子供たちは絵本を通じ自然にこれらの単語を身近なものにしていくのだろう。英語の授業と受験勉強を通じて学んだ単語とはちょっと違う次元の単語に触れるおもしろさを絵本で楽しめる。

 ネバーランドでは、キャプテン・フック、海賊船のジョリー・ロジャー号、フックの部下スミー、キャプテン・フックの片手と時計を呑み込んだワニ、人魚の池(Mermaid Lagoon)、迷子たち(the Lost Boys)、インディアンの酋長とその娘タイガー・リリーなどが登場する。ピーター・パンとティンカー・ベルと一緒に、ウェンディ達の冒険と闘いが始まる。
 読者となる子供たちはネバーランドに自分も入り込み、一緒になって行動するという想像を広げて行くことだろう。そんな楽しい世界になるのだろう。
 最後は、ピーター・パンに伴われて、ウェンディ達は海賊船に乗って、ネバーランドを出航してロンドンへの帰途につく。

 ピーター・パンって楽しい冒険物語だったのだ。

 ご一読ありがとうございます。

本書から関心の波紋を広げてネット検索してみた。一覧にしておきたい。
ピーター・パン  :ウィキペディア
Peter Pan    From Wikipedia, the free encyclopedia
Peter and Wendy      From Wikipedia, the free encyclopedia
PETER AND WENDY J.M.BARRIE STANDARD EBOOKS
Neverland    From Wikipedia, the free encyclopedia
Lost Boys (Peter Pan)     From Wikipedia, the free encyclopedia
【ディズニー映画】『ピーターパン』の名言10選!心に刺さる言葉を日本語と英語でご紹介!  :「CASTEL」
『ピーター・パン』で流れる英語の歌・全曲まとめ  :「洋楽の部屋」
ウォルト・ディズニー(Walt Disney) - ピーター・パン(Peter Pan) Part1  YouTube
ウォルト・ディズニー(Walt Disney) - ピーター・パン(Peter Pan) Part2  YouTube
シンデレラ     :ウィキペディア
ピノッキオの冒険  :ウィキペディア

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