山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

食料増産命令!?

2023-05-12 | 政治・経済・社会
 報道によると有事の際に国内での食糧不足に備え、農水省が農産物の増産を農家や民間業者に命令できる制度を作る方向で検討をしているとのことです。それも強制力を伴った新法を整備する方針だそうです。
 例えば、花卉栽培農家に米や芋を作るように命令したり、価格統制や配給制度なども検討されているようです。

 まぁ、事前に法整備を行っておくことは必要でしょうが、こと農業に関して机上で考えているように簡単に行くのかはなはだ疑問です。事前に分かっていれば十分に備えることもできるでしょうが、大体において有事というのは突発的に発生するものです。「食料が足りない。さぁ、明日からコメ作れ、芋作れ!」と言われたって、そんなに簡単にできるものではないでしょう。命令すると言ったって一体全体、誰に命令するのですか。専業農家を想定しているのでしょうが、恐らくもう手一杯でしょう。兼業農家や零細農家まで含めるのでしょうか。兼業農家の場合、本業の方はどうするのですか。零細農家では増産したって高が知れています。
 仮に生産主体が決まったとしても直ぐに人手不足に直面するでしょう。農業未経験者を投入すれば事足りるというものでもなく人材育成に長期間必要です。
 食料って今日明日の問題なのではないですか。なのに食料増産なんて言ったって増産できるのは早くて1年後でしょう。有事に際して本当に間に合うのですか?

 食料の安全安全保障を言うなら、先ずもって食料自給率の向上を目指すべきでしょう。カロリーベースの自給率はたったの38%と常軌を逸した数値ですよ。貧しい国を除いてこんな国どこにありますか。
 これは全てこれまでの農政の結果なのです。なのにこれまでの責任を棚に上げておいて増産命令などとどの口が言うのでしょう。

 しかし、有事には備えておく必要があります。農水省の絵に描いた餅に期待はできません。

 穀類は押しなべて長期保存ができます。そして保存設備や技術もあります。先ずは増産体制ができるまでの数年分を備蓄しておくべきです。
 その間に専業農家と兼業農家に米を増産してもらえるようにします。兼業農家は兼業しながらも農地を守ってきております。ですから翌年の作付けから増産可能です。生産調整を全て撤廃すれば、かなりの分の自給が可能となるものと思われます。

 次に、野菜類は比較的短期間で収穫できますので中小零細農家に活躍してもらいます。家庭菜園レベルの畑で自給的栽培をしているのですから、蔬菜類の栽培ならその延長線上にありますからこれも可能でしょう。更には、現状においてもこのような自給的栽培の場合、自家消費分の数倍から数十倍の収穫がありますので、食べきれない分はご近所に分けるなどしております。ですから流通さえ整備すれば明日からでも生産倍増は可能となるでしょう。
 それから最も重要なのは自助努力です。自分で食べるものは自分で作ることでしょう。喰うものに困ったら否応なく作らざるを得ません。それぞれに菜園を借りるとか、家の庭で栽培したり、ベランダでプランター栽培したりできます。ロシア市民が飢え死にしないのはダーチャがあるからだとも言われております。

 配給を待っていたところで無いものは無いのです。どんなにお金を持っていたって手に入らないでしょう。一旦有事の際は国民が協力し合って乗り切ることが大切です。最も大切な食料まで国任せにしていると本当に大変な目に遭うと思います。

 最後に増産命令を発出するとしてもこれを作れ、あれは作るなとだけは言わないでください。もし私が命令されたら協力はしますが、どの作物を作るかという選択肢位いは残しておいて欲しいものです。農地にはそれぞれ特色があります。そして栽培に適するように何年いや何十年もかけて育ててきているのです。適地適作というではありませんか。不向きな土地に作付けしたってろくなことはありません。
 しかし、これも期待できないでしょう。役所仕事では硬直化せざるを得ないでしょうね。おそらくはこの地域はこれを作れといった命令になるような気がします。
 あーぁ、憂鬱になりますよね。この国の行く末はあまり見たくない気分です。


<参 考> 「なぜ兼業農家を続けるのか(1)」~「なぜ兼業農家を続けるのか(8)

 ・経済合理性と兼業農家 ⇒ 「なぜ兼業農家を続けるのか(5)
 ・兼業農家の補完機能  ⇒ 「なぜ兼業農家を続けるのか(6)