山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

省エネ屋のつぶやき(4)-絶対絶命編

2011-10-23 | 省エネ
 「マイクロデマンドコントローラー」の開発が我が人生最大の危機を迎えることになってしまいます。

 開発自体は順調に進み、私は、営業、工事、開発と忙しい毎日を送っておりました。順風満帆とはこういうときのことを言うのでしょう。しかし、運命の歯車は突如として狂い始めることになってしまいます。

 「マイクロデマンドコントローラー」が完成し、当然の如く納品しようとすると「うちの事務所狭いし置くとこ無いからしばらく預かっといて」とのこと、仕方ないので「うちの決算までには引き取ってくださいね」と念を押し、納品書・請求書を発行しました。後は入金を待つのみという段階になりました。それまで、S社との取引は期間は短いとはいえ何の問題も無かったので全く心配はしてませんでした。入金予定日を過ぎても入金が無いので、経理から問合せがあるし、果ては社長からお叱りを受ける羽目になってしまいました。

 A専務に連絡を入れても音信不通、事務所にもここ数日顔を出していないとのこと。不覚にもS社のM社長には面識が無く、八方塞がりの状況に追い込まれてしまいました。会社に出ても針の筵に座らされているようで、部屋中に重苦しい雰囲気が漂っておりました。かといって、これといった打開策があるわけも無く、ひたすらどうしようか思い悩むだけでした。

 ただ色々と調べていくと、注文書をA専務が独断で発行していたということがわかってきました。注文書の印鑑も通常取引の注文書と同一の印鑑が押印してあるので、法律的には問題は無いだろうとのことでした。ただ、後はM社長が払ってくれるかだけの問題です。払ってくれなければ、裁判するしかないと腹をくくっていました。

 そんな時、たまたまS社に挨拶に来ておられたY社(S社への納入メーカー)のS部長が、この話を聞かれて「同じメーカーとして他人ごとではない。」と私のところに来られ「M社長に話しておくから心配しないように。」と言葉をかけていただきました。S部長とは以前から面識はあったのですが、自分との利害関係が無いにも関わらず、お骨折りいただいたことに今だに感謝いたしております。

 S部長と面談した翌日は土曜日で、気分転換に当時趣味で楽しんでいたパラグライダーに出かけました。何時もと同じようにフライトを楽しんでいたのですが、ランディングに失敗して左足首を粉砕骨折してしまいました。ついていないときは何をやっても駄目なもんです。例の件が頭にチラツキ、集中力を欠いていたのでしょう。もっと重大事故になっていてた可能性もありますから、これ位で済んだのだから不幸中の幸いといえるのかも知れません。

 フライト仲間から救助してもらい、氷などで患部を冷やしつつエリア(阿蘇)から車で地元の病院まで1時間半位かけて自力で向かいました。レントゲン検査の結果が先述の診断です。早く治るということで手術することに決め、翌週の火曜日から入院することにしました。月曜日に出社して侘びを入れるしかない。焦付きの件もあるし、半ば首を覚悟しました。

 余談ですが、翌日曜日は、夫婦で出場予定だったマラソン大会の日でした。私の方は、手術前の仮固定状態で、痛み止めを服用している状態ですから当然のこととして、一人で行ってくれるものと信じていました。ところが平然として「私、高速運転できないから運転してくんない!」ときたものです。さすがの私も耳を疑ってしまいました。毎年出場している大会だし、走った後の新鮮な魚介類の市場や温泉を楽しみにしているのは分りますよ、そりゃ。でも夫が瀕死とは言わないまでも重傷を負って苦しんでいるのに、そりゃないでしょう!

 「トイレはどうするの?」と弱々しく抵抗したのが大失敗でした。「今から簡易の尿瓶みたいの買ってくるから」と、全くの藪蛇でした。何も言わずに拒否しておけば良かったと悔やまれるのでした。敵もさる者、私の操縦法を研究し尽くしているものと感心するほかありませんでした。

 同様に年明けのマラソン大会のアッシー君も務めることになってしまいました。今度は片道4時間の強行軍です。その頃は、手術して二週間以上経過していましたから、連れ合いが走っている間は、ゆったりと温泉につかってリハビリに勤しむことができました。「今まで忙しかった分のご褒美だ!」と思えるくらいに精神的にも回復していたのでしょう。

 そうこうしている内に段々と退院の日が迫ってきます。仕事に復帰したら即刻、例の問題を解決しなければなりません。憂鬱な日が続きます。出社して、挨拶もそこそこにS社のM社長に翌日のアポを取付けました。証拠書類などの資料を準備し翌日の面談に備えます。翌日は、当社の社長と共にS社に乗り込みました。初対面の挨拶もそこそこに、証拠書類を示しながら説明し、支払の件をお願いしました。

 M社長は「当社の社員の不始末から発生したことであり、こちらこそ申し訳なかった」と言っていただけました。もちろん支払の承諾もいただけました。

 S部長の口添えもあって、すんなりと問題が解決して本当にホットしました。あの時、ケガをせずに勢い込んでS社に乗込んでいたらスムーズに解決していたかどうかわかりません。人生って本当に不思議なものです。

 後日、湯布院にあるM社長の別荘に呼ばれ、今まで食べたこともないような極上の牛肉をご馳走になり、温泉に浸かりながら「A専務も悪気があってやったことではない。君のところの製品に惚れて、良かれと思ってやったことだ。今後もA専務を助けてやってくれ」と業務提携の強化を約束していただきました。 災い転じて福と為すの典型でしょう! このA専務とは、更なる劇的なドラマ展開が待ってます。それは、随分と後のことです。その前には小さなドラマが展開して行きます。

 昔は、こんなことして楽しんでました。

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