はじまりと同時に飛車先を一歩一歩伸ばしていく。近頃ではそんな光景は名人戦でも町の道場でもすっかり見られなくなった。「飛車は最初の場所に居座って縦に使うもの」それが王道であった時代は長かった。居飛車は遙か歴史の奥に封じられ、今は振らなければ始まらない。
「大駒は大きく動かすものだ」中飛車、四間飛車、三間飛車、向かい飛車……。そして、もっと新しい振り飛車が、既に将棋バーの片隅で指され始めている。(それはまだ開拓されていないどこか……)
石田流に構えた新四段が、窓の外に視線を向けた。まもなく空飛ぶ車があたたかい昼食を運んでくるのだ。
「ビーフストロガノフ」
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最初からよくはならない振り飛車の出だしは呪い多きメルヘン
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