キンクスもストーンズもおしゃべりに呑み尽されてしまう、すべては人が多すぎるのがいけないのだ。こんな落ち着かないフロアはもううんざりだった。逃げるようにエレベーターに乗り込んだ。
「焼肉に行こうか」
餃子は終わったしと男は言った。一度エレベーターに乗り合わせたくらいで、一緒に行くのは気が引けた。こちらの心を読まれているようで気色が悪く、色々と理屈をつけて三階に戻ることにした。フロアに戻るとあれほど密集状態にあった席が減っていた。テーブルとテーブルの間が五メートル以上も離れているし(これならいい)、ロックからクラシックに音楽も変わっていた(これはどうだろう)。店のコンセプトが突然変わってしまった。
「窓を開けて、明細を届けるように言って!」
一階の従業員に伝えるようにと女社長の指示が飛ぶ。
「僕、行って来ます」
大声を出すのは面倒だったし、会って伝える方が確実だ。エレベーターまで行くとちょうど花嫁が乗り込むところだったので遠慮して、階段で行くことにした。
下では兄が冷蔵庫を組み立てていた。
「どうするんだ?」
途中までやって僕に訊いてくる。
(わかりもしないのに組み立てて!)
小さな部品を組み合わせて、火柱が立った。
(それでどうするんだ!)
「消そうよ」
先行きが心配になり、提案した。
「まだ途中だぞ」
やり始めたら最後までやり遂げたいということらしい。
「ここは組み立てるには狭すぎる」
「確かにそうだな」
鋭いところを突けてほっとした。
炬燵の上で、兄はふーっと吹いて火柱を消した。もう一度、吹いて種火も消した。吹くくらいで消えてくれたので、またほっとした。火が立っていた鉄板が、冬の朝の道のように濡れて見えた。触ってみようと思ったが、熱いかもしれないと思いとどまった。
まずは古い冷蔵庫を捨ててからにしようとついでに提案した。
「そうするか」
広い場所に移ってやれば、すべては上手くいくような気がした。
「焼肉に行こうか」
餃子は終わったしと男は言った。一度エレベーターに乗り合わせたくらいで、一緒に行くのは気が引けた。こちらの心を読まれているようで気色が悪く、色々と理屈をつけて三階に戻ることにした。フロアに戻るとあれほど密集状態にあった席が減っていた。テーブルとテーブルの間が五メートル以上も離れているし(これならいい)、ロックからクラシックに音楽も変わっていた(これはどうだろう)。店のコンセプトが突然変わってしまった。
「窓を開けて、明細を届けるように言って!」
一階の従業員に伝えるようにと女社長の指示が飛ぶ。
「僕、行って来ます」
大声を出すのは面倒だったし、会って伝える方が確実だ。エレベーターまで行くとちょうど花嫁が乗り込むところだったので遠慮して、階段で行くことにした。
下では兄が冷蔵庫を組み立てていた。
「どうするんだ?」
途中までやって僕に訊いてくる。
(わかりもしないのに組み立てて!)
小さな部品を組み合わせて、火柱が立った。
(それでどうするんだ!)
「消そうよ」
先行きが心配になり、提案した。
「まだ途中だぞ」
やり始めたら最後までやり遂げたいということらしい。
「ここは組み立てるには狭すぎる」
「確かにそうだな」
鋭いところを突けてほっとした。
炬燵の上で、兄はふーっと吹いて火柱を消した。もう一度、吹いて種火も消した。吹くくらいで消えてくれたので、またほっとした。火が立っていた鉄板が、冬の朝の道のように濡れて見えた。触ってみようと思ったが、熱いかもしれないと思いとどまった。
まずは古い冷蔵庫を捨ててからにしようとついでに提案した。
「そうするか」
広い場所に移ってやれば、すべては上手くいくような気がした。
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