新しいシャツを身に着けることは難しい。どこが首でどこが腕か右も左もまるでわからないのだ。恐る恐る入口を探り何度か失敗を繰り返しながら相応しい位置にたどり着く。新しい朝を迎える度に間違いは少なくなる。新しいシャツの匂いが好きだった。新しい季節に移り変わる頃、シャツは自分に慣れてくる。もう迷うことはなくなった。恐れていたことがうそのように自然と身に着けられるようになった。夏が戻って来る頃、シャツは少し伸びていた。好きだった匂いも忘れてしまった。何度も春が巡る頃、シャツは古着になっていた。私は年を取って、新しいシャツのことを忘れた。それは最初の人生だった。
思わずに
だるんだるんで
生きていく
人生はもう
2度目ですから
(折句「お大事に」短歌)
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