眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

催眠将棋 ~負けました

2022-11-21 03:57:00 | 将棋の時間
 ものわかりの悪い人にはかなわない。普通の人なら潔く負けを認めるはず。10手も前に「負けました」と言いながら頭を下げているだろう。なのに、あなたは平然と前を向いている。負けず嫌いというだけならまだいいが、まさか私の間違いを期待してのことではあるまいな。だとすれば余計に腹立たしい。形勢は素人目にも大差。玉形、戦力、数字にするまでもない。あなたは手番を生かしてまだ何か言ってくる。どうあがいたとしても、無から有が生まれることはない。

「何? この歩は? 取ったらどうする?」

 こちらから厳しく主張すれば敵玉を追いつめることは可能だ。微かなリスクはあるとは言え、それはいつでもできることだった。だが、そこまでしなくても、あきらめてもらうのが一番手っ取り早い。何しろ有効な手段は1つもないのだから。あなたはあれやこれやと私の飛車にちょっかいを出してくる。

「何? この歩ただだけどな。まあ逃げておくか」

 どうやってもいいというのは、それなりに困る。険しい一本道の方が迷いがなくていい。あなたはなんだかんだと一貫性のない話を続けてくる。まあ、悪くなった方に最善手など存在しないから、仕方がないとも言えるのだが。

「何? と金作りたいの? まあそれくらい許してあげるよ」

 よっぽど好きなんだな。こんなになってもまだ言いたいことがあるなんて。寂しい人の相手をしている内に、奇妙に居心地がよく、また名残惜しくもなってきたようだ。(本当はあなたは悪い人ではないのかも)

「何どうした? さばきたいの?
 仕方ないな。通してあげるよ」

 ついに世に出るはずのないあなたの角が躍り出る。
 穏やかに話を聞いている内に、だんだん筋が通ってきた。聞き癖がついてしまった私は、催眠術にでもかかってしまったように言いなりになっていたのかもしれない。あれよあれよという間に、あなたの駒は息を吹き返した。今や全軍躍動だ。
 はっと我に返った時、手が尽きたのは私の方だった。

「負けました」

 そして私は空っぽになった。

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ミナミのゴースト・キング

2022-11-21 02:38:00 | デリバリー・ストーリー
「選ばずによくなりました!」善行を装う君の改悪に泣く

同じだけマーラータンを運んでも自転車だから300

たこ焼きは歌の店でも焼いている ミナミは言わばゴーストの街

「ココイチよ鳴ってくれんか」人波を縫うだけサウスロードを過ぎる

船場へと渡ったとこで引き返すタッカンマリはすぐ曲がり角

タクシーが果てなく続く堺筋第2が君の第1レーン

「島之内碁盤街には気をつけて。左右も見ずにチャリが飛び出す」

オタロード越えて道具屋筋を行く松屋の先が吉兵衛さんだ

あと5分かけて待ちーとお母さん去年の暮れは水をくれたね

「他店から同時に取って運べます!」「いや冷めてまう。誰得やねん!」

AIがダイスを振って振り分ける 同一労働適当賃金

タコキンの向こうにチキン ピンよりも信頼できる人間の声

吉野家が23時に呼んでいる サンキューここは眠らない街

春雨がよく売れているゴーストは輝くピンク階段の上

「ラーメンか、焼肉、寿司もいいですね」人は自ら選びたいんだ

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