「いっぱいか……」
テーブル・バジルがたずねてきた時、誰かが席を譲るのだという雰囲気になっていた。
「ここは当然私が」
最初に立ち上がろうとしたのは、塩コショーその人だった。そこに待ったをかけたのは、意外にも塩と胡椒の二人だった。
「いいえ。混じり気のない私たちが行かせていただきましょう」
塩コショーは驚きを隠せなかった。一旦は引き留めはしたものの、二人の堅い決意に押し切られて腰を落ち着かせた。
「どうも」
二人に感謝の気持ちを示し、テーブル・バジルは空いた席の1つにかけた。
「あいつら算数できないんじゃない?」
成り行きを見守っていた七味唐辛子が、ようやく口を開いた。何か二人に不満がありげだった。一瞬、塩コショーは七味唐辛子の方に鋭い視線を送った。テーブル・バジルは空いた席の方をまっすぐ見つめている。
しばらく遅れてブラック・ペッパーがかけてきた。
「ちょうどよかった」
そう言って余っていた席に着いた。塩コショーは、もう一度七味唐辛子の方に今度はもっと鋭い視線を投げた。たまらず七味唐辛子がせき込んだ拍子に席から転げ落ちそうになった。
「はじめてですね」
テーブル・バジルがブラック・ペッパーに話しかけた。