眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

クリスマスポテト

2014-10-01 12:09:01 | クリスマスの折句
 通い慣れた散歩道を犬が単独で歩いているように見えました。その後にゆっくりと歩くおじいさんの姿が見え、おじいさんと犬の間が実は長いロープでつながっていることがわかりました。犬、おじいさん、ロープという順序で真実が道の上に立ち現れたと思って間もなく、犬は消えてしまいました。先を行くのがおじいさんで、その後を他人のような距離を取って歩いてくるのは少女でした。おじいさんと少女との間は見えない糸でつながっているように、一定の距離が保たれています。少女は歩きを覚え始めた時より少しだけ成長して、おじいさんからぎりぎりまで離れるという遊びをしていたのでした。
 やがてどこからともなく、犬が跳ね戻ってきた時、おじいさんと少女は手にそれぞれロープの端を持って回していました。犬は招かれるまま楽しそうに縄跳びをしています。

「どうぞ。お入りなさい」
 今度は、私に向かって少女が言いました。
「大丈夫。これはトレーニングモードだから」
「そうとも。思い切って失敗しなさい」
 玩具のような犬の跳躍に、私は躊躇していました。
 彼らは私をだますためだけに、架空の劇団を作ったのかもしれない。
「大丈夫。思ったことを口にするのよ」
「そうとも。思い切り嫌われて、思い切り後悔しなさい」
 大きく弧を描く2人の間で、疲れを知らない犬の跳躍が、おいでおいでと語りかけているような気がして、徐々に私の体は、招待の風の中に引き寄せられていくようでした。
(おいでよ、もっと、おいでよ)
「大丈夫。何が起きても、何も起きていないのよ」
「そうとも。思い切って羽を伸ばして」
「さあ、飛んでごらん!」
「さあ、歌ってごらん!」
 大丈夫。この人たちは、悪い人たちではない。私だけを、待っているのだから。
 意を決して飛び込むと、私は犬の後に続いて跳ねていました。
 こんなにも軽いのは、私の背中で羽が伸びているからかもしれない。私はたった今入り込んだモードの中で、できる限りのことがしたくなりました。愛らしい犬の耳を見つめながら、そのようなことを考えていると次のような歌が浮かんできました。それはクリスマスの折句でした。

くだらない
理由をつけて
拗ねている
街は冷たい
スイートポテト

 犬、おじいさん、少女の順で消えてゆくと、最後に歌がロープを渡って逃げてゆきました。


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私たちの正義

2014-10-01 10:15:02 | ショートピース
私たちのルールブックには、たった一文字が書いてある。それはどのようにでも考え得るし、想像力を働かさなければまるで考えないこともできた。その時、最もふさわしい人が解釈することによって、その時の正義になる。守るべきものは何もない。私たちは明日、攻めさえするだろう。 #twnovel
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ワンオペフライト

2014-10-01 01:24:27 | ショートピース
たった一人で迎えて盛って運んで洗って拾って送って、きみも大変だね。たった一人で次々と押し寄せる人波に、洗練された技術と不屈の闘志を持って。まるできみは深夜のジャンヌダルクだよ。「間もなく終わります」煮えたぎる鍋を運びながら、少女は言った。時代が私を許さないから。 #twnovel
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