中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,069話 エンジニアは会計を学びましょう

2021年10月31日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

私は20年近く都内の大学で「会計学特論」という授業を担当しています。と言っても理系の大学院生が対象なので基礎的な内容です。受講している学生は100人弱とかなり多いのですが、「簿記3級を持っている」、「株式投資をしている」という学生が例年2、3人いる程度です。ほとんどの学生が会計に関しては全くの素人と言って良いでしょう。

授業は最初に「会社の仕組み」の説明から始めます。株式会社とは何か?一般社員と管理職はどう違うのか?役員(取締役)とは何か?等々、常識レベルの話です。

次に財務諸表の見方を教えます。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の「財務3表」の仕組みと役割を学んでもらいます。

このとき面白いのは、会計という制度に対する反応です。財務3表は数字の集まりなので、理系人間にとってはきっちりとしたロジックをそこに見出そうとします。しかし、ご存じのように制度は人が決めたものであり、その背景に自然現象(たとえば力学)のようなロジックはありません。

もちろん会計はお金に関する制度ですから体系内に矛盾があってはなりません。矛盾しそうな点は最初から排除しておきます。それでも不都合が生じることがあれば、制度を作り直します。自然科学のような節理に則った制度ではないので当たり前なのですが、数字が絡むとどうしても純粋なロジックが背後にありそうに見えます。そこがしっくりこない学生が少しいます。 

しかし授業も4、5回目あたりになると、がぜん乗りが良くなってきます。学生たちの頭が切り替わったのです。

そうなると後はとてもスムーズに授業が進みます。経営分析や原価計算、損益分岐点分析は計算が中心なので説明が楽です。またファイナンス理論も少しだけ解説しますが理論の基礎となる「数列」や「確率分布」などはお手の物なので、あっという間に理解してしまいます。

会計の知識は単なる教養ではなく、数字を通して仕事を見る、考える力になります。製品を開発するときの経済性の計算や、競合他社との競争において、財務諸表を読むことができれば先を読むことができます。それがほんの1歩先だとしても、大いに仕事に役立ちます。

理系の学生ですから就職先はメーカーやシステムインテグレータ、通信事業などがほとんどです。職種は何らかのエンジニアであることはほぼ間違いありません。もちろん本来の技術力があってのことですが、会計に関する知識やモノの見方を身につけたエンジニアは本当に「使えます」。

経営者の皆さん、ぜひ御社のエンジニアにも会計を学ばせてください。会計は簿記のような「帳簿の付け方」ではなく「会社の数字の読み方」です。

言うまでもありませんが、会計は経営者自身が身に付けておくべきものであるということもお忘れなく。

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第1,068話 あなたには何人の部下がいますか

2021年10月27日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「管理職として、何人くらいまで部下の指導ができるものでしょうか?」

これは弊社が管理職研修を担当させていただいた際に、たびたび受ける質問の一つです。

経営学の用語の一つに、スパン・オブ・コントロール(Span of control)」という言葉があります。もともとは軍の編成・組織構成において用いられていたものですが、一人の管理職が管理できる部下の人数や業務領域のことを言います。

では、管理職が管理できる部下の人数は実際のところどれくらいなのでしょうか?業務内容や部下の業務のレベルによっても大きく異なりますので、一概に何人ということはできませんが概ね4~8人、多くても10人くらいと考えられるのではないでしょうか。

たとえば、部下がルーティンワークでマニュアルにしやすいような仕事をしているのであれば、対応可能な人数は比較的多くなります。一方、複数人で課題解決をするプロジェクトのような仕事であれば、少人数でないと管理することは難しいと言えます。

それでは、管理職として部下の人数が適正数を超えてしまうと、どういう問題が起きてしまうのでしょうか?

仕事の内容によって異なりますので、必ずしも一概に言えるものではありませんが、部下とのコミュニケーションの量が減ることになるため、まず個々の部下の状況を把握することは難しくなります。その結果、部下の仕事の進捗状況が把握しにくくなるため、思わぬトラブルに発展してしまったり、部下の目標進捗状況や評能力開発が予定通りに進まず、部下のモチベーションが下がってしまったりというようなことが起きてしまいます。

弊社が担当する管理職研修では課題の一つとして、部下の目標を設定していただくことがありますが、やはり部下の人数が少ない人の方が具体的な目標を設定することができています。逆に、大勢の部下を抱えている管理職は一人一人の部下に接する時間が少なくなる分、どうしても目標があいまいなものになってしまうのはやむを得ないことだと思っています。

一方で、大勢の部下を指導している管理職の下にいる部下の側からは、上司との接点が少ないことから「上司から放置されている」と感じてしまうことがあるようです。また、管理職があまりにも忙しそうにしていることから、部下の方から話しかけたり相談したりするタイミングをつい逸してしまい、結果として部下が抱えている問題がそのまま放置されてしまうことになってしまうこともあるようです。

テレワークが積極的に活用されるようになった現在、対面で仕事をしていた時と比べて管理職が部下と接点を持つ機会は減っています。それゆえに若手社員の中には上司との意思疎通に不安を感じる人が増えていると言われています。

テレワークの活用は今後も続くでしょうし、業績にもよりますが組織の人数は減ることはあっても増えることはなかなかないのではないかと考えられます。スパン・オブ・コントロールを超えていると感じている管理職の方は、この機会に権限委譲できる仕事は部下に任せたり、自分の参謀役を育てたりするなどの手を打ち、積極的に部下とのコミュニケーションを確保することを心がけていく必要がありそうです。

コロナ禍で期せずして仕事の進め方が変わってきている今だからこそ、管理職が忙しそうで声をかけられないという状態を見直す良い機会として、生かしていくことが求められます。

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第1,067話 もう一度「人財、人材、人在、人罪」ついて考える

2021年10月24日 | 研修

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人財、人材、人在、人罪」についてはこのブログでも何度か書いていますが、再度お付き合いください。簡単に説明すると「社員は4つに分類することができる。一番優れているのが人財。最も会社に貢献する社員であり、財宝のように大切に扱うべき対象。次は人材。それほど優秀ではないが材料として役に立つ社員。その次は人在。休まず働かず、ただ「いる」だけの社員。そして最後の人罪は会社にとってマイナスの存在。可能なら辞めてもらいたい・・」といったところです。

最近はほとんど言われなくなりましたが、以前「なぜ御社は人財育成社にしないのですか」と言われたことがあります。当社が「人材」を名乗っている理由と、この「4つの人ざい」論は全く別の次元の話です。いまだに「人材」を「人を材木や材料のように扱う、非人間的な言い方」と思っている人がいるのは驚きです。

「材」とは元々「はたらき。才能。また、才能のある人」という意味です。李白の詩「将進酒」の中に歌われている「材」こそ正しい人材の意味です。中国では「将進酒」は小学生が暗記する「漢詩160篇」の中にあるほどポピュラーです。ジャッキー・チェンの「酔拳」の中で主人公が、師匠と酒を酌み交わす場面でも歌われています。

「人財」は聞こえは良いのですが「財」は財産、要はお金のことです。現預金や有価証券、固定資産は会社が「所有」しているものなので、文字通り財産です。しかし、「人」は会社の所有物ではありません。もちろん、「社員を大切に扱っているから人財と呼ぶ」という会社もあります。その考え方は尊重します。ただ、本来の「材」の意味を是非理解していただきたいと思っています。その上での「人財」ならば大いに結構です。

私が問題だと思うのは「人罪」という考え方です。犯罪でも犯せば別ですが、社員を「罪」扱いするのはいかがなものかと思います。ろくに働かず、サボってばかりいる社員もいるかもしれません。経営者・管理者は、なぜそうなったのかを考え、対策を打つ必要があります。元々そうだったとしたら、採用を決めた経営者の責任です。

社員は性善説とか性悪説で割り切れる存在ではありません。それは「ものの見方」に過ぎず、人の意思は(労働意欲も含めて)あいまいなものです。ちょっとしたことでやる気になったり、逆に無くしたりするのは「当たり前」のことです。まさに育て方によって伸びたりもするし、しおれてしまったりもする「人材」なのです。手前味噌になりますが、だからこそ研修を行う意義があるのです。

研修講師は客観的な視点で受講する社員の考え方や行動を見抜きます。そして、正しい考え方や必要な知識を教えます。さらに、それを仕事の中でどう生かしていくのかを手を変え品を変え伝えます。今は伸び悩んでいても、将来伸びて行く可能性を見つけ、そのきっかけを与えるのです

中には自分の考え方を一方的に押し付けたり、社員を罵倒するような研修講師(研修会社)もあります。それは伸びる可能性のある若木を引き抜いたり、成長が一時的に止まっている樹木を腐らせたりするような行為です。会社にとってはまさに罪以外の何物でもありません。要注意です。

研修会社に依頼するときは、営業担当者ではなく講師と会って「人を育成する視点」について、しつこく質問してください。

そのときは「人ざい」について質問してみるのも良いかもしれません。

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第1,066話 内定辞退を防ぐにはどうすればよいのか

2021年10月20日 | 研修

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「採用予定者が、内定式では○○人になってしまいました。辞退が続き当初の予定人数を大幅に下回ってしまい、正直困っています」

これは、私が今月お会いした複数の企業の人事担当者からお聞きした言葉です。長期間にわたり採用予定者の選考に心血を注いできたのにもかかわらず、結果が報われなかったわけですから、お話を伺っていてとてもがっかりされていることが伝わってきました。同時に、来年度はどうすればこの事態を改善できるのかと悩まれていることもわかりました。

では、実際に学生はどれくらいの数の企業から内定を得て、どれくらいの割合で辞退をしているのでしょうか?

就職未来研究所の就職データによると、2022年の卒業予定者の大学生の10月1日時点の内定取得企業は、2社以上とする人が62.8%、内定辞退企業数は2社以上が33.2%、また内定取得者であっても就職活動を実施している率は5.3%とのことです。この数値からも、企業が採用活動の問題点として内定辞退を上げる理由がわかります。

先日の朝日新聞の記事(2021年10月18日朝刊)でも、複数の企業から内定を得た学生の辞退が入社直前まで続き、企業は戦々恐々とのことでした。

それでは、学生が内定を辞退する理由はどのようなものでしょうか?記事で紹介されていたのは、コロナ禍で選考の方法がオンラインになった結果、企業を訪問することがないままに内定を得てしまい、企業のイメージをつかみにくいことがあるとのことでした。

確かに、オンラインでは企業の雰囲気を感じることは難しいので、入社の決め手となるものがはっきりしないのは事実だと思います。しかし、選考方法が対面に戻れば問題は解決するのかと考えると、そんなに単純な話ではないと私は感じています。

私はここ数年、ある企業の採用の2次試験の集団討議の面選管を担当させていただいています。その企業は1次試験から最終面談まですべて対面で行っており、その際には組織の雰囲気をわかりやすいように工夫をするなど、できる限りの情報提供をされています。しかし、それでも残念ながら辞退を防ぐことはできず、昨年度は再募集を行うこととなりました。

多くの企業が内定期間中に面談の機会を設けたり、先輩社員と交流できる機会を設定したり、社内報を送付したり、内定者同士が繋がれるような工夫をしたり、通信教育を提供したりと様々な工夫をしています。しかし、残念ながらこれらを行っても、辞退を防ぐ有効な手段には必ずしもなっていないのが実情のようです。

今後、わが国では労働力人口の減少がさらに進んでいくことが予想されています。新たな労働力の確保という意味で採用活動はますます重要になっていくわけです。「学生から選ばれる企業になる」ためには、採用活動のみに焦点をあて対応するのではなく、もう少し広い視野から企業全体の魅力を高め、積極的にアピールしていくことを考える必要があると思います。

このテーマは中小企業のみならず、すべての企業において今後ますます重要な課題になりそうですが、将来の大切な人材を確実に採用するためにも、いち早く取り組みを進めることが必要ではないでしょうか。

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第1,065話 「上司の背中を見せる」を再構築する

2021年10月17日 | 研修

すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

20年近く前の話になりますが、私が講師を務めた某大手食品メーカーの管理職研修での話です。研修の冒頭に社長のあいさつがありました。「君たちはこれから苦労すると思うが、管理職として経営者の視点も身につけて乗り越えてほしい」・・・気持ちのこもった、とても良いメッセージが続きました。そして最後に「後進の育成も大切だ。部下は上司の背中を見て育つ。そのことを忘れないでほしい」と言いました。

私はそのとき「上司の背中を見て育つ」という言い方が「古臭い」と感じました。しかし考えてみると、決して悪くないとも思いました。「上司の背中を見ろ」とは、分かりやすく言えば「上司の仕事振りや立ち振る舞いをよく観察して学習しなさい」ということです。

さて、管理職研修では部下を指導・育成する上で必要になる考え方や技術を学んでもらいました。心理学に基づいた対人関係の分析から、「ほめる・しかる」ときの態度や言葉使いの練習まで、かなりボリュームのあるプログラムをこなしました。

また、研修中に「あなたの考える”上司の背中”とはなにかを説明をしてください」というお題でグループディスカッションをしてもらいました。

・上司らしい言動
・確実に仕事をこなす様子
・間違ったときに責任をとる態度
・etc

他にもいろいろとありましたが「いかにも」といった抽象的な言葉が並びました。その後、「ではあなたの部下を誰でも良いので1人思い浮かべてください。いま発表してもらった言動や態度を示すだけで、その部下が確実に理解して成長すると思いますか?」と聞いてみたところ、ほぼ全員が首を横に振りました。

上司が立派に仕事をこなす様を見せるだけでは部下は成長しません。それは今も昔も変わりません。年配の管理職には「自分は先輩の背中を見て学んできた」と言う人が少なからずいます。それは今の若手社員より恵まれた環境にいたからです。

職場に上司や先輩が多くいた時代は学ぶチャンスがたくさんありました。先輩たちの仕事の進め方にも様々なバリエーションがあり、どのやり方が効果的か比較することができました。しかし、今は職場の機械化も進み人が少なくなっています。そのせいで管理職一人当たりの仕事の量はかなり増えました。それは若手社員も同じです。上司も部下も余裕がなくなっているのです。

「部下の学びを意識して」背中を見せる余裕のない上司。上司の背中を見る余裕のない部下。さらにリモートワークが広がるにつれ、状況はかなり難しくなっています。

では、上司は部下指導において具体的にどのような行動をとれば良いのでしょうか?グループで話し合ってもらいました。様々なアイデアや意見が出ましたが、いずれも要約すると(1)やるべきことを決め、(2)分かりやすい言葉で伝え、(3)部下の行動を観察して、(4)適切にフィードバックをする、という形になりました。「これはPDCA※そのものですね」と私が言うと、皆、ああそうか!とちょっと驚きながらも納得していました。

ここまで来るともはや社長が言っていた「上司の背中を部下に見せる」ことからかなり離れてしまいますが、今の時代にフィットした「背中を見せる部下指導」があらためて定義できたといえます。

古い考え方や習慣をむやみに守り続ける必要はありません。しかし、すべてを捨て去ってしまうよりは、その精神を受け継いで再構築する方が上手く行きます。

「全否定も全肯定もしない」⇒「皆で考える」⇒「そしてやってみる」・・・部下指導に限らず会社を成長させるために必要な原理原則ではないでしょうか。

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※言うまでもなくPlan-Do-Check-Actですね。

 

 

 

 


第1,064話 雑談とコミュニケーションの関係

2021年10月13日 | 研修

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「雑談について、講師はどのように考えますか?」

これは、先日弊社がある企業で担当させていただいた部下育成に関する管理職を対象にした研修の際に、一人の受講者から受けた質問です。

質問の意図がよくわからなかったので、確認の意味でいくつか質問をさせていただいたところ、質問者自身雑談があまり好きではないことから、「コミュニケーションをとる上で、雑談は必要なものなのか」を聞きたかったとのことでした。

これに関して、最近の風潮として雑談の有用性について語られることが多いように感じています。試しにAmazonの書籍検索で「雑談」と入力すると、1,000件以上のヒット件数が表示されます。このことからも「雑談」が身近なテーマになっていることがわかりますが、逆に言えば、だからこそ冒頭のような疑問を持つ人も少なからずいるのではないかと思います。

では、皆さんは雑談はお好きでしょうか?苦手でしょうか?

私は、これまでに雑談について書かれた本を10冊近く読んでいますが、雑談の効果として人間関係がうまく築けたり、知識を得ることができたりするなどということが共通して書かれていました。

しかし、雑談は人間関係を築く上で本当に必須のものなのでしょうか?改めて雑談の意味を辞書(広辞苑)で調べてみたところ、「さまざまな談話。とりとめのない会話」とありました。ここからは、雑談とは話の本題とは異なるまとまりのない会話ということで、あくまで本題の前段であり、あってもなくても良いものであると言えそうです。

そのように考えると、雑談≠コミュニケーションであり、雑談ができることが即コミュニケーション上手ということではないと言えるのではないでしょうか。

コミュニケーションとは、単に情報や知識を一方的に伝達することではなく、発する側と受ける側で共有することです。ですから、まず話の本題に関して伝えるべき情報を伝え、それが話し手と聞き手の双方で共有されなければなりません。

これまでコミュニケーションに関する研修を行ってきた経験から、自分自身「コミュニケーションが苦手」と感じている人は少なくないと感じています。そういう人にコミュニケーションが得意な人のイメージを質問してみると、「誰とでも会話が盛り上がる人」、「会話が長く続く人」というような答えが返ってくることが多いのですが、そこには雑談も含まれていることが多いのです。

しかし、雑談で会話が盛り上がり長く続いたとしても、肝心の伝えるべき情報がきちんと伝わり、双方で共有されなければ、それは本来の意味でのコミュニケーションとは言えないものです。

うまくコミュニケーションがとれるということは、無理に雑談をしてでも会話を盛り上げる、量を多くするということではありません。「雑談をしなければならない」という思い込みで、無理をする、自らを苦しめるようなことのないようにしていただきたいと思うのです。

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第1,063話 MBAは「社長」の学びに不要です

2021年10月10日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「経営者セミナーで〇〇社の会長のお話を聞きました。いやぁ、実に素晴らしい内容でした」先日、ある中小企業の社長さんがちょっと興奮気味に私に言いました。〇〇社とは誰もが知っている大企業です。

「その会長さんが言うには、すべての経営者は戦略思考を持たなければならないと言ってました。戦略思考というのは、ロジカルシンキングを土台にした経営理論の上に成り立っているそうで、たとえばマーケティングについては・・・」社長さんは目を輝かせて語っていました。

そして「やはり〇〇社の会長さんみたいにMBAを持っている人は違いますね。実際、アメリカの大企業のトップの多くは有名ビジネススクール出身だそうです」と言いました。

私は社長さんが学ぶことについて非常に前向きになったことに素直に感動しました。そこで、私は提案をしてみました。「社長さん、次回の管理職研修を受講なさってください」

すると社長さんの顔が一転、少し曇ったようになりました。そしてこう言いました。「いやいや、管理職研修を社長の私が受けても意味がないでしょ。ビジネススクールで学ぶような戦略論こそ大事ですよ。」

私は思い切って次のように言いました。

「社長さん、気分を悪くされたら申し訳ないのですが、MBAのような学問は中小企業の、いや大企業も含めてほとんどの日本の会社の経営者には不要です。その理由はすでに大企業、それも優良企業として安定している〇〇社には優秀な管理職や社員がたくさんいます。社長は余計なことをせず神輿に乗っていればまず失敗しません。有名な大企業のトップの仕事の半分は自社の”広告宣伝”です。MBAのような"まぶしい”ラベルを貼った人が発信した方が説得力がありますしね。さて、御社には〇〇社と同じくらい優秀な管理職や社員がたくさんいますか?・・・あ、失礼しました。ほとんどの日本の会社は御社と同じです。それに戦略論や、マネジメント理論、マーケティング、ファイナンス理論などMBAレベルの学びは少なくとも日本では役に立ちません。そうした本を1冊買ってきて読んでみれば簡単にわかると思います。それは単なる教養であって、まったく実務の武器にはなりません。ビジネススクールは大企業で働く人たちのカルチャースクールです。」

一気にまくしたててしまった後でちょっと後悔しましたが、言いたいことは伝えました。

「管理職研修の受講をお勧めしたのは、実務と経営の接点を学ぶことができるからです。ぜひご一考ください。」

社長さんは難しい顔をしたままでした。もちろん、中小企業の経営者が学ぼうとすることはとても素晴らしいことです。だからこそ間違った学びを選ばないように注意をする必要があります。

では具体的にどのような内容を学ぶべきか?「社長の研修」プログラムは近々明らかにしてまいります。

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第1,062話 「旬」の人とは?

2021年10月06日 | 研修

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「年寄りには今さら研修を受けさせてもね。その分、もっと若い者、旬の人を対象に行ったほうがいい」

これは私が時々企業の研修のご担当者からお聞きする言葉です。

私はこのお話をお聞きした後に「〇〇さんがおっしゃる年寄りとは、何歳くらいですか?」と尋ねることにしていますが、そうすると「50代以上」という答えが返ってくることが多いと感じています。

では、皆さんは50代以上を研修の受講対象とすることに対して、どのように考えますか。確かに、研修にかけられる予算には通常は限りがありますから、それをどの階層に重点的に配分するのか、そのためにはどのように考えたらよいのかについては、なかなか悩ましいところだと思います。

これに関して、私はその組織に在籍する以上、必要があれば50代はもちろんのこと、60代であっても積極的に研修の受講対象とするのがよいと考えています。その理由は2点あります。

1点目としては、モチベーションが下がるからです。具体的にいうと、まず研修は必ずしも社員に歓迎されるものではないということがあります。そのため、必修の研修の受講を指名された人の中には、「研修は嫌いだけれど、指名されてしまったから仕様がない。受けないといろいろ言われるから受けるか」といった気持ちで受講する人がいるのも事実です。

しかし、そういう中でも、いざ同じ階層の別の人が招集されている研修で、自分だけが指名されないようなことになると、「なぜ、自分は呼ばれなかったのか?自分はもう不要なのか?」と考えてしまい、一気にモチベーションが下がってしまう人がいるのです。

2点目の理由としては、研修は新たな階層に昇格したタイミングだけでなく、昇格後にも継続的に受けることに意味があると考えるからです。

というのも、先日ある企業で「部下の育成」をテーマにした研修を弊社で担当させていただきました。その研修は希望者が受講できる、いわゆる希望型の研修だったのですが、30名の募集枠に対して大幅に上回る数の人が応募されました。応募した方々の属性は、当初のご担当者の想定では、圧倒的に新任の管理職が多いだろうと考えていたとのことですが、実際には予想とは異なり、8割は管理職になって既に数年が経過している人達だったのです。

その人達は、管理職として数年の経験があるからこそ、部下育成において様々な疑問や悩みが生じていて、何とか改善したいと思っていたのではないでしょうか。オンラインではありましたが、皆、とても熱心に取り組んでいる様子が伝わってきました。さらには、午前中の終わり、そして終了後も多くの人から次々と具体的な質問を受けました。

もし、冒頭の話のように「50代は年寄りだから、もう研修は受講させない」としてしまったら、この受講者達は疑問や悩みを解決できず、自己流で部下育成を続けることになってしまったのかもしれません。そうなると、場合によっては部下のやる気を損なわせてしまったり、成長を止めてしまったりというようなことにもなりかねません。こうなると、最終的にはその企業にとっても大きな問題になってしまいます。

企業にとっては、これまでの65歳までの雇用確保から、70歳までの就労機会の確保が努力義務になりました。それを考えると、50代はもちろんのこと60代であっても、必要であればどんどん研修を受講してもらう必要性が増えていくと思います。もちろん、予算の配分などの問題はあるでしょうが、しかし、組織にとってヒトは最大の経営資源なのです。

そのヒトを有効活用するためにも、企業の人材育成部門においては、年齢で一律に研修対象者から排除するという考え方は改めていく必要があるのではないかと思うのです。

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第1,061話 新人採用のときは「終身雇用」を宣言しよう!

2021年10月03日 | 研修

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終身雇用は崩壊したという言説をよく耳にします。「終身」というのはイメージに訴える簡易的な表現であって、決して「死ぬまで」ということではありません。実際の定義は「長期安定雇用」が正しく、定年までの雇用(概ね65歳くらい)と考えて良いでしょう。

この定義を現在の日本の企業に当てはめてみると半数以上が終身雇用であり、大企業ではその比率はもっと高くなります。また、産業能率大学のアンケート調査「新入社員の会社生活調査(2020 年)」によれば「終身雇用制度を望むか」では、「望む」が64.9%、「望まない」が35.1%となっています。

最近はテレワークの普及や副業の容認など、大きな社会的変化が生じているので、「望む」比率はもっと低下しているでしょう。とはいえ、新人の約6割が終身雇用を望んでいることは事実です。終身雇用制度は日本企業の主流と言っても良いでしょう。

では、終身雇用をイメージではなく実態から考えてみます。

(1)終身雇用は雇用契約ではなく、企業側の意思表示(あるいは暗黙の了解)である

(2)労働法(労働三法のほか様々な法律)によって労働者の権利は守られている

先ほどの調査を見る限り、新人は(1)というメッセージを信頼したいと思っています。もちろん口先だけで終身雇用を唱えて、実態はそうでない企業も中にはあるでしょう。しかし現在のように情報の非対称性が著しく低下している社会では、そんな会社の名前は簡単に知れ渡ってしまいます。

優秀な人材を採用して会社を発展させたいのなら、堂々と「わが社は終身雇用を守っていきたい」と宣言してください。同時に「会社は業績が悪くなれば倒産する。そうなれば雇用自体を維持できない。だから、終身雇用を守るために会社の発展に貢献できるような人材になってほしい」と伝えてください。

もちろん終身雇用にも問題点はあります。いわゆる「働かないおじさん」、「会社にしがみつく社員」です。会社へ貢献もせずに65歳まで居座られたら困る、という声も聞きます。だからこそ「一緒に終身雇用を守っていこう!」というメッセージに真摯に答えようとする新人を採用してください。そして、入社したらしっかり育ててください。

「いやいや、そんなに上手く行く保証はない」とお考えの方はどうぞ「成果主義」を採用してください。

成果主義は短期的な貢献に対する報酬システムです。しかし、一般的に大きな成果を上げられる人材は高い報酬を支払わなければ採用できません。そして成果を上げれば上げるほどそれに見合った報酬をどんどん上げていかなければなりません。それができなければ退社していくことでしょう。また、もし期待外れだった場合(2)のため簡単には解雇できません。かなりリスキーなシステムです。

そう考えれば、終身雇用はまだまだ日本企業、特に中小企業に必要なものだと思います。

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