
「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「メンタル面にも踏み込んだ研修をお願いします」
先日弊社が担当させていただいた、採用試験の面接官を担当する人に対する研修に関して、顧客企業からは面接官として必要となる知識やスキルを習得できるような研修を行いたいとの要望をいただいていました。
事前の打ち合わせの中で詳しくお話を聞いたところ、近年メンタルの不調などにより休職や退職に至ってしまう社員が増加しているため、できるかぎりメンタル面での不調に陥ることがないような人を採用したいとの要望が強く出され、冒頭の依頼をいただいたのです。
これに関連して、6月25日に2024年度分の「過労死等の労災補償状況」が厚労省より発表されました。過重労働や仕事のストレスによる死亡や疾患などの過労死等の労災認定件数が1,304件と過去最多となったそうです。とりわけ増加傾向が顕著だったのが、うつ病などの精神障害で1,055件と初めて1千件を超えたとのことです。年齢別では40代が最多の283件、30代と20代は240件強、原因別ではパワハラが最多で244件、仕事内容・仕事量の大きな変化が119件、以下カスハラ、セクハラと続くとのことです。
精神障害による労災認定が増加傾向にあることはこれらのデータからも伺えることから、採用側としてはこれまで以上にメンタルヘルスを採用の判断基準の一つに加えたいと考えるのも当然のことだと思います。
では、よく言われるメンタルヘルスとはどのような状態を指すのでしょうか。
仕事をしていれば、大なり小なり様々なストレスに直面することは誰にでもあることです。一般的にメンタルヘルスとは、そういう場面でも長期にわたって落ち込んだりするのではなく、感情やストレスを適切にコントロールしたり、対処したりできる能力であるとされています。
それでは、採用面接でメンタルヘルスをきちんと維持できるような人を見極めことは、はたしてできるものなのでしょうか。
私自身がこれまでに外部の面接官として様々な採用面接に関わってきた経験から考えると、実際のところそれはなかなか難しいのではないかと考えています。たとえば面接の際に極度の緊張から言葉がスムーズに出てこなかったり、手が震えてしまっていたり、端的に返答をまとめられなかったりする人がいますが、ではそういう人は「メンタルヘルスが弱い」と言えるのでしょうか?と言うのも、私自身そういう人が採用されてから活躍している例をたくさん知っているからで、表面的な部分だけでの判断は困難です。
少しでも採用面接でメンタルヘルスを見極めたいと考えるのであれば、ストレス耐性や問題解決能力などに関する質問をしてみることが、その一助となります。具体的には「過去のストレスの経験や困難な状況に陥ったときにどのように対処したのか、克服したのか、それらによって、どのように成長したと考えているのか」などを質問して掘り下げることによって、ストレスへの耐性や候補者が自身をどのように客観視し評価しているかなどが一定程度分かるのではないかと考えています。
短時間の面接でその人を見極めることは非常に難しいものであり、わかることはほんの一部である。そのことを踏まえた上で、面接官には相手としっかり向き合う覚悟が必要なのではないでしょうか。