中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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ブログを続けていること

2018年12月30日 | コンサルティング

約2,600万。いったい何の数字だと思いますか?

少々古いデータですが、総務省情報通信政策研究所のブログの実態に関する調査研究(平成21年3月)によると、世界全体のブログの数は7,000 万以上、そのうち日本語による記事は全体の 37%とのことでした。つまり、その時点での日本語のブログが約2,600万だったということです。

それから約10年が経過していますので、現在の日本でどれくらいのブログが書かれているかは定かではありません。弊社のこのブログもたくさん書かれているブログのうちの一つということになります。

2013年5月からスタートした我が人材育成社のブログは、社名のとおり人材育成に係わる内容について書くことを旨として行ってきましたが、本日が何と768回目のブログになります。

これが長いのか短いのかはよくわかりませんが、自分たちにとってはやはり感慨深い数字です。

あれから早5年半。スタート当初は平野と芳垣が毎日交代で書いていましたが、2014年からは週に2回更新(1人が毎週1回ずつ交代で書く)としています。

当初、どれくらいの人にこのブログを読んでいただけるのだろうかと手探りの状態でした。しかし、おかげさまで現在はページビューが平均で600、多いときは1,000を超えるなど大変多くの皆様に見ていただくようになり、書き手にとっては大変励みになっています。

5年半ブログを続けて思うのは、その年その年によってアクセスが集中するテーマが異なるということです。やはりその時々の話題・キーワードに関する内容を書いたときにはアクセスが増えています。

今年でいえば、特にアクセスが多かったのが部下の育成、管理職の役割に関するテーマであり、あらためてこのテーマの重要性を感じています。ある意味で永遠の課題なのでしょう。

また、ブログのスタート当初に取り上げた「研修アンケートに関する内容」については、5年半の間、一貫してアクセスが多いテーマです。

さて、この5年半を振り返ってみると、こうしてブログを続けてこられたのも、ひとえに継続的に読んでいただいている読者の皆様あってのことだと感謝しています。

ときにはコメントを寄せていただいたり、研修で直接お会いしたときにブログの感想をいただいたり、さらには関心をお寄せいただいたテーマに関してディスカッションをさせていただくこともあります。

このように、ブログをきっかけに多くの皆様といろいろなご縁をいただいていることに、あらためてお礼申し上げます。

さて、2018年は今回のブログが最後になります。引き続き2019年も頑張って続けてまいりますので、今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

それでは皆様、どうぞよいお年をお迎えください。

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ロールモデルは大勢いた方がいい

2018年12月26日 | コンサルティング

先日、管理者を対象にした研修を担当させていただいた際に、「過去に一緒に仕事をした人の中で、立場に関係なく『自分の成長に影響を与えてくれた人、お手本になった人、見習いたいと思う人』」を挙げていただきました。

すると、あるグループでは6人のメンバーのうち、3人が偶然にも同じ人(Aさん)を挙げたのでした。この組織では定期的に異動が行われているため、現在、3人は別々の部署に所属していますが、過去にそれぞれがAさんの下で働く機会があったとのことです。

当初、3人は各々が語っているのが同じAさんの話だということはわからなかったそうですが、話を進めるうちに徐々に同じ人の話をしているのだということがわったとのことです。

3人にとってAさんはプラスの影響があったわけですが、興味深かったのは3人がそれぞれ異なった視点で「Aさんから影響を受けた」と言っていたことです。

1人はAさんのマネジメント能力から影響を受けたと話していましたし、もう1人はAさんの部下を育成する能力について触れて、自分は彼から育てられたと話していました。そして最後の1人はAさんのプレイヤーとしての活躍を話してくれました。

Aさんが過去に3人に対してプラスの影響力を発揮したという点は共通していますが、3人がお手本にしたいと考えているのは、全く別のものだったのです。

「ロールモデル」とは、自分にとって具体的な行動や考え方の模範とする人物のことです。ときどき「うちの会社には、残念ながらロールモデルになるような人がいない」や、「誰をロールモデルにして頑張ったらいいのかわからない」といった声を耳にすることがあります。

しかし、先の例からもわかるように、同じ人からそれぞれ異なる面で影響を受けている例があるということは、別の視点から考えると、1人の人にロールモデルとしてのすべての役割を求める必要はないと言えます。

あらゆる面で卓越した知識や能力などを持っている、いわばスーパーマンのような人はそうそういないでしょう。もしすべてを1人に求めてしまうと、ロールモデルにしたい人に簡単には出会えないことになってしまいます。

ですから、ロールモデルについてはすべての面を1人の人に固定にして求めるのではないということです。Aさんからはこの点を学ぼう、BさんからはAさんにはないこの点を教えてもらおう、Cさんからはここをお手本にしようというように、少しずつ良いところをチョイスして、自分なりのロールモデル像を作ればよいということです。

もう一つ言えるのは、ロールモデルは必ずしも自分の組織の中だけに求める必要はないということです。

たとえば、定期的な異動がある職場であればロールモデルとなる人に出会う機会も増えるとは思います。しかし、もしそうした異動がない職場であるならば、組織の外にロールモデルを求めるのもありです。

そして何よりも必要なことは、様々な人から少しずつ「良い所取り」をするためには、出会いを求めて自ら動く姿勢を持つということです。

さて、あなたにはロールモデルとしたい人はいますか?まだいないという方は、来年こそは見つけてみてはいかがでしょうか。

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階層型とフラット型、どちらが優れている?

2018年12月23日 | コンサルティング

ほとんどの企業や役所には階層があり、「一般職、主任、係長、課長、次長、部長」といった役職がそれぞれの階層に対応しています。一方、比較的新しい会社やIT系の企業では意図的に複数の階層を取り払い、フラットな組織構造を持つところもあります。

フラット型は組織がシンプルな構造になっているため、規則が少なく、権限委譲が進んでいるため素早い意思決定ができます。判断を誤っても、すぐに方向転換できる身軽さがあります。

それに対して、階層型組織は意思決定に関わる人が多くなるため、意思決定に時間がかかります。また、間違った判断であっても、上意下達(トップダウン)によって通ってしまう、というデメリットもあります。

変化の激しい現代においては、どう考えてもフラット型の方が良さそうです。

しかし、人材を育てるという点からみると「階層型組織」の方が優れています。

階層を一段ずつ上がっていくたびに、徐々に権限と責任を負わせていくやり方は時間がかかりますが、「凡人」を一人前にするためにはこの方法がベストです。

優れた人材を多く確保できるならば、フラット型組織の方が良い結果を生みます。もし、あなたの会社が優れた人材の宝庫だとしたら「役職」なんて必要ありません。成果に報いる仕組みだけ作っておけば良いのです。

そうではなく、あなたの会社が凡人の集団だとしたら、階層構造のもとで時間をかけて育ててください。

ひと皮むけた凡人の集団は意外と強いものです。

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飲みに行かなければ、部下の育成はできないのか

2018年12月19日 | コンサルティング

「最近は飲みに行かなくなったから、部下を育てることが難しくなった。俺たちが若い頃は、飲み会で上司から仕事のやり方を教えてもらったからな」

近年、弊社が部下育成研修を担当させていただく際には、「人材育成に関する悩みや問題点」を考えていただく演習を行っていますが、冒頭の言葉は必ず問題点として挙げられる一つです。

確かに今の管理職が若手の頃には、「ノミニュケーション」(飲むとコミュニケーションを組み合わせた造語)の機会は、今よりもはるかに多かったです。

そこでは、仕事の悩みを聞いてもらったり、上司からアドバイスをもらったりするなど、職場を離れた場所だからこそ、ざっくばらんに話せることや聞けることがあったわけです。それは上司にとっても部下にとっても有用な場となっていたものです。

しかし、いつの頃からか、職場の「ノミニュケーション」の機会がどんどん減っていったのは確かです。最近の若い世代は、職場の付き合いよりも自分のプライベートを優先する人も多いそうです。歓送迎会や忘年会など公式に開催されるもの以外の、残業後に「軽く一杯行く?」といった「ノミニュケーション」の機会は明らかに減っているようです。

それが、良いことなのか残念なことなのかは一概には言えないとは思います。しかし、見過ごすことができないのは、部下の育成が順調に進まない理由を飲みに行かなったことのせいにすることです。

もし、飲む機会がなければ部下を育成できないということになれば、極端に言えば、飲めない上司は部下を育成する機会がないことになってしまいます。逆に飲めない部下も上司から育成される機会はないことになってしまいます。

さらに言えば、朝から飲み始めて一日中飲み続けていれば、部下の育成がどんどん進むという、おかしなことになってしまいかねません。

少々極端な例を挙げましたが、ここであらためて申し上げたいのは、部下育成が順調に進まない理由を飲み会のせいだけにはしないでいただきたいということなのです。

そもそも、人材は一朝一夕に育つものではありません。また、人材には様々なタイプがあり、世話なしに成長する人がいる一方で、簡単には育たない大器晩成型の人がいるのも事実です。ですので、上司は部下それぞれに合った形での育成につとめることが必要であり、人が育たない理由を飲みに行かなくなったことだけに求めるのはいかがなものかと言わざるを得ないです。

飲み会の場で行う部下指導は、あくまで仕事の場で行うもののプラスαであって、部下育成のメインの場所を飲み屋で行うなどは本来はあり得ないことです。

部下育成が順調に進んでいないと思っていらっしゃる管理職の皆さん、どうか飲みに行かないことを「隠れ蓑」にしてはいけない、部下それぞれに合った育成が求められているのだということを、今一度肝に銘じていただくようにお願いいたします。

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研修って本当に効果があるの?

2018年12月16日 | コンサルティング

「研修って本当に効果があるの?」研修会社をやっていると何度もこのセリフを言われます。言い換えれば「形のない、品質の良し悪しがわからない、効果さえはっきりしない研修などというものに金を払うのは疑問だ」ということです。「効果」というものを企業の業績すなわち「利益」とするならば、まったくその通りです。

研修に関する評価モデルとしては「カークパトリックの4段階評価」が知られています。

Level1 (Reaction)は研修終了後に受講者の好感度を評価するもので、アンケートが用いられます。研修内容や講師について「満足した」「役立った」等が多ければ効果があったとするものです。
Level2 (Learning)は研修で得た学習成果による評価です。研修後のテストなどで理解度や習得度を測定します。
Level3 (Behavior)は研修終了後職場に戻った後で、研修で学んだ内容を生かしているかといった職務行動の変化を、上司による行動観察などにより評価します。
Level4 (Results)は研修を実施した結果、企業の売上や利益にどれだけ貢献できたかを評価します。それにより投資対効果(ROI:Return on Investment)を測るわけです。

研修業界ではこの「カークパトリックの4段階評価」が唯一の公認(?)評価モデルとして広く利用されています。たしかに技能面や知識面だけにフォーカスすれば、このモデルは役に立ちます。

たとえば、工場の労働者に作業効率をアップさせる技術を教え込めば、生産ラインの稼働率は上がり、不良率も下がります。その結果、製品の生産量は増え、品質は上がるので利益の増加に貢献することは間違いありません。投資金額と利益額の増加分も比較的はっきりしますからROIの計算も十分可能です。

その他にも公的資格が必要な分野ではLevel4までの評価は容易です。法律関係のコンサルティング会社で、従業員を学校に通わせて弁護士資格を取らせることを「研修」とすれば、かなりはっきりしたROIが計算できるでしょう。

というわけで「研修って本当に効果があるの?」という問いに対しては「技能教育や専門教育では効果があります。投資対効果も計算できます。」と答えることができます。

しかし、それ以外の研修、特にヒューマンスキル(対人関係能力)に関するものはどうでしょう。リーダーシップ、コミュニケーション力などのヒューマンスキルは、企業の規模、業種、職種に関係なく組織で働くすべての人にとって必須の能力です。

言うまでもなく、ヒューマンスキル研修の成果は測定が難しく、ROIの測定などは不可能に近いでしょう。

しかし、全社員の技術力がアップし、資格取得者が大幅に増えたとしても、社内のコミュニケーションが上手く行かず、パワハラが横行し、メンタルの不調を訴える社員が増えていくようなことがあれば、どんなに優れた技能研修も無駄になってしまいます。

ヒューマンスキル研修を行ってから技能研修を行えば、技能研修の成果は上がります。ヒューマンスキル研修は、研修成果を確実にするための「必要条件」なのです。

「研修って本当に効果があるの?」はい、(必要条件を満たせば)あります!

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研修に集中できる研修会場の条件とは

2018年12月12日 | コンサルティング

あなたはレストランの席を選べるとしたら、どこに座りたいと思いますか?

また、新幹線の座席の予約をするときに、どこでも選べるとしたらどの席を予約しますか?

席の好みは人それぞれかとは思いますが、私の経験から考えると、一般的にはレストランも新幹線も窓側から席が埋まっていきます。これから想像するに、人間は意識するしないにかかわらず、窓から外を眺めたり外の光を求めたりしているのではないでしょうか。

それでは、社員研修を行う会場はどのようなところが良いのでしょうか?

一般的に、研修ではパワーポイントやスライドなどでスクリーンを使うことが多いためか、窓がある部屋であっても、研修中はずっとブラインドを降ろしていたり、カーテンを閉めていたりすることが多いのです。

確かに、昔はプロジェクターの性能が今ほどは良くなかったので、部屋を暗くしないとスクリーンが見えにくいこともありました。しかし、現在はそういうプロジェクターを使うことはあまりありません。つまり、部屋を暗くする必要は少なくなってきていますし、そもそもプロジェクターを使わない時間帯もあるはずです。

それにもかかわらず、ずっとブラインドやカーテンを閉めたりするので、部屋の明るさや閉塞感などにより、長時間の研修の場合、時間の経過とともに疲労感が増します。実際に休憩時間にストレッチをしている受講者を見かけることがあります。

もちろん、疲労感の原因はそれだけではないでしょう。しかし、私のこれまでの経験上でも窓がない、あるいはブラインドやカーテンを閉めている部屋での研修では、休憩時間に部屋の外に行く人が多いです。一方、逆の場合には休憩時間でも席を離れる人が少ないと感じています。

つまり、窓の有無や外の光が入るかどうかが、休憩時間の過ごし方や疲労感にも影響しているのではないかと感じていました。

そうしたところ、先日、板硝子協会 建築環境WGの「窓の生理的・心理的効果とその魅力」というレポートを読む機会がありました。その中に「自然光の有無が集中力やストレスに影響している。ある調査によると自然光を取り入れた教室の学生では、窓のない教室の学生よりも、疲労の減少や出席率の増加が見られるようになった。自然光と生産性の関連性について、労働者が自然光を好み、窓のない部屋ではストレスを感じて生産性に影響を与えると結論づけられている」との記述がありました。これを読んで私のこれまでの実感が裏付けられたように感じました。

弊社では、これまで様々な会場・部屋で研修を担当させていただいています。バブル時代に建てられたような会場だと、「研修に集中するためには、窓がない方が良い」という考え方が当時はありました。食堂には大きな窓があるのにもかかわらず、反対に研修会場には敢えて窓を設けなかったのです。

しかし、前述のように窓から外が見える、外の光が入る会場の方が集中力が高まり、作業の能率も改善することが科学的にも証明されているわけです。研修においても効果を高めるためにも、会場を窓のある部屋にすること、そして窓があるのなら、ブラインドを一律降ろしっぱなしにすることをやめることを提案したいと考えています。

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あなたが身につけたノウハウはあなたの私物ではない

2018年12月09日 | コンサルティング

ある会社の管理職研修でのことです。部下指導についてグループディスカッションをしていた時に1人の受講者が「私はこれまでに、きちんとした指導を受けた記憶がありません。自分1人で苦労して今の業務のノウハウを身につけました。」と発言しました。

すると他の受講者も口々に「そういえば、自分もちゃんと教えてもらったことがないよ。」、「そうそう。わざわざ教えるなんて、誰もしてくれなかった。」、「うん。一人前になるまでずいぶん苦労したな・・・」と言い始めました。

この研修は、製造部門の50代の現場の管理職を対象にしていました。その目的のひとつは、受講者自身が持つ様々なノウハウを若手に「伝承」してもらうことです。ところが、こうした発言をきっかけに、研修全体の雰囲気が「伝承」どころか「自分のノウハウは自分のもの。それをタダで教えるなんて損だ」という具合になってきました。

実は、こうしたことはベテラン社員が対象の研修ではたまに起きることです。私にとっては想定内のことなので、しっかりと説明をして「風向き」を変えます。

ところが、この研修ではなかなか変わらなかったので、急遽1つのワークを追加しました。「どうやって自分が一人前になったか、そのプロセスを具体的に書き出して発表してください。」というものです。

詳細は省きますが、「終業後、1人で作業マニュアルを見て勉強した。」「こっそりと先輩の作業手順を見てノートに書き取った。」「上司に何度も叱られて、その度に工夫を重ねた。」といった内容でした。

その発表を聞いて私は「皆さん、上司や先輩、他部署の人やお客さん、外注先の人たちからしっかり教えてもらっているじゃないですか!」と言いました。

「作業マニュアルを作ったのは先輩方ですよね?作業手順だって、皆さんが先輩を見たときに隠したりしなかったでしょ?上司は叱ったときにどこが悪かったを指摘しませんでしたか?皆さんは多くの人からいろいろな方法で、たくさんのことを教えてもらったんです。」

多くの受講者は(多少しぶしぶでしたが)うなずいていました。

そして私はこう付け加えました。「一番忘れてはならないのは、皆さんはそうしたノウハウを給料をもらって身につけたということです。」「つまり、皆さんの頭の中にあるものは会社の資産なんです。」「だから、誰にも教えないというなら、それは会社の資産を私物化することに等しいです。」

ちょっときつい言い方ですが、ほとんどの場合、納得していただけます。

現在は、昔のように怖い上司や先輩がいなくなり、社内にいる人の数も少なくなってきました。そういう意味では、今の若手は可哀そうです。

ベテランと呼ばれる方々は「多くの人によって育てられた人」です。ぜひご自身が獲得した資産を使って若手社員を「育てる人」になってください。

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多くの人によって育てられた人が、多くの人を育てる人になる

2018年12月05日 | コンサルティング

「妥協したらプロじゃなくなる」、「日常的に続けていたら、面倒なことも苦痛ではなくなる」、「客先で説明する際に発する『えー』という口癖を徹底的に指摘されたので、その口癖はなくなった」

これらは、弊社が担当させていただいた部下育成研修の中で、「自分の成長に影響を与えたもの」を発表していただいたときに、受講者から発せられた言葉の一部です。

具体的には、現在、管理監督者になっている方々が新人~若手時代だった当時に、上司から直接かけられた言葉や上司の仕事に取り組む姿勢から影響を受けたものとして語ってくれたものです。

現在、管理監督者になっている方々ですから、若手時代からは既に10年以上は経っているのにもかかわらず、当時のことを鮮明に記憶していらっしゃるようです。どういう場面でこれらの言葉をかけられたのかを、まるで昨日のことのように話してくれました。

当たり前のことではありますが、私たちは10年前のことをすべて鮮明におぼえているわけではありません。

しかし、「自分にとって役に立った、救われた」というような言葉については、それを語ってくれたときの上司の表情や姿勢とあわせ、時が経っても色あせることなく、克明に印象に残っているものだと改めて感じました。

そして、そうした指導を受けて管理監督者になった人たちは、現在、とても熱心に部下を育成する人になっていると感じます。

これは、「自分がされて良かった、ためになった」と感じたことについては、立場が変わっても、今度は別の誰かに提供したいと考えるようになるということなのではないでしょうか。

実は、このことはかつて私が修士論文を書く際に行った調査でも、同様の結果が得られていました。調査では、管理職になっている人にインタビューを行いましたが、マネージャー職が過去に受けた影響と、現在部下指導で実践している要因との間には非常に強い相関がありそうだという結果を得ていたのです。

あれから早6年が経過していますが、部下育成研修の講師を担当させていただくたびに、前述のように調査結果と同じ思いを持っています。

さらには研修を通じて、こうしたプラスの影響は多ければ多いほどいいのです。つまり直接の上司に限らず、大勢の人からプラスの影響を受けることができれば、その分だけ自分が上司になった際に、熱心に部下指導を行えるようになるのではないかとも感じています。

このように考えると、タイトルのように部下の育成は今現在の部下のためだけに行われるものではなく、その部下がやがて上司になった際の部下指導にまで影響を及ぼす可能性があるのです。管理監督者の皆さんの責任は結構重大と言えそうです。

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人材を「型」にはめるな!

2018年12月02日 | コンサルティング

人材育成分野において「人材の型」は昔からよく使われています。まず、横軸が知識の幅を縦軸が知識の深さを示す図を描きます。

I型人材は、縦に1本長い形をしています。ひとつの分野を深く掘り下げる専門家、スペシャリストのことです。
-型人材は、横に1本長い形です。広く浅い知識・スキルしか持っていませんが、異なる分野を知るゼネラリストです。
T型人材は、まさにT字のようにある分野の専門知識を持ちつつ、幅広い分野もそこそこカバーできる人材です。「これからの理想はT型人材だ!」という言葉を以前はよく耳にしました。
他にも「π(パイ)型人材」すなわち2つの専門分野を持つゼネラリスト、さらに「H型人材」という複数の専門分野を繋ぐコミュニケーションスキルに優れた人材型が登場してきました。

さらに、最近はハイブリッド型人材という「新種」が注目されています。ハイブリッド(hybrid)とは「種や品種が異なる生物から生まれた子孫」という意味です。ハイブリッド型人材とは、以前ならばそれぞれ異なる部署で求められていた2つ(以上)の能力を兼ね備えている人材のことだそうです。

実は私にもハイブリッド型とπ型やH型との違いがよくわからないのですが、「情報工学的技術と社会・経済活動における管理、政策提言力の両方を兼ね備えた人材」(日本ソフトウェア科学会2014年講演集)という表現からして、どうやら「異質なものの組み合わせ」がポイントのようです。

ビジネスにおける例を挙げるならば、「統計分析ができる営業パーソン」や「技術に詳しい人事部員」といったところでしょうか。このように説明すると「理系・文系の垣根を超えた人材のことですね」とおっしゃる方がいますが、意味が違いますのでご注意ください。

ハイブリッド型人材は一見優れた人材のようですが、本来の「ハイブリッド」意味から考えると大いに疑問が湧きます。

ハイブリッドは「種や品種が異なる生物から生まれた子孫」ですから、人材も最初から「異なる専門知識を同時進行で身につけている」ことになります。おそらく、様々な知識を「融合」した教育をすることでそうした人材が育成できるということでしょう。実際、いくつかの大学では「融合」した学部が生れています。

これは確かに魅力的な考え方ではありますが、「融合」を最初から意図して早いうちから人材を育てようとすることには賛成できません。

一つの専門分野を突き詰めていくとやがて限界が見えてきます。壁に突き当たるというイメージです。それを何とかして乗り越えようと試行錯誤することで新しい知見やイノベーションが生まれます。

はじめから「融合」した人材を育てようとすることは、「限界」や「壁」を避けて、あるいは無視して進む人間を生み出すことになるのではないでしょうか。

新しい知見やイノベーションは「融合」ではなく、異なる専門知識を持った多くの人々を「混合」することから生まれます。人材育成も同様です。その時に、どの人がどんな「型」なのかということはあまり大きな意味を持ちません。人それぞれです。とにかく多くの人が「混合」する場を作ること、それが優れた人材を生み出すために最も有効な方法です。

新しい人材の「型」を考えるのはもう止めましょう。

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