中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,180話 部長職へ昇格するために必要となるスキルとは

2023年08月30日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「どういうスキルを身に着ければ、部長になれるのでしょうか?」

これは、私の知り合いが「万年課長」として活躍している部下のA氏から相談された際の言葉だそうです。

知り合いによると、A氏は非常に真面目な人柄で業務にも丁寧に取り組み、部下の育成も熱心に行うタイプとのことです。そのため、課長としては及第点がとれるそうですが、知り合いが言うには残念ながら「部長の器」としては十分ではないと感じるのだそうです。

それでは、A氏が部長の器として足りないのはどのような点で、部長になるためにはどのようにすればよいのでしょうか?

管理職として活躍するために必要となるスキルには、様々なものがあります。まず、コミュニケーションを筆頭に、折衝力や交渉力が必要になります。また、部下を評価する力も必要ですし、問題解決や数字に関する力、さらにはリスク管理など幅広いスキルが求められるのです。もちろん、これらのスキルは部長だけに求められるものではなく、課長職にも必要になるものですが、課のトップである課長とそれより規模の大きい部のトップである部長では、当然求められるレベルが大きく異なってくるわけです。

A氏が望む部長職には部長だからこそのハイレベルが求められるわけですが、私はもう一つ大切なスキルがあると考えています。

それは、業種業態により異なるものだとは思いますが、ある程度共通するものとして、大きな問題やトラブルなどが発生した時に、全体最適の視点を持てるかどうかということです。つまり、問題やトラブルが発生した際に、自部署のみならず組織全体の視点から最善かつ最適な道を探れるかどうか、ということだと考えています。

先のA氏の例では、A氏は問題やトラブルが発生した際に、解決すべく前向きには取り組むものの、少々慌ててしまい部下を右往左往させることが多いとのことです。何より問題なのは目先の問題に拘泥することで部分最適の対応のみに走ってしまうことが多々あり、業務全体の中でその問題を捉えて、最終的にどうしていくことが一番良いのかを考えて行動することができないのだそうです。

そのように考えると、現時点でのA氏は規模の大きい組織のトップとしては少々危ないと感じざるをえないところがあり、部長の器にはまだ物足りないということなのではないでしょうか。

ちなみに、組織における部長職の比率はどれくらいのものなのでしょうか?もちろん組織規模によるわけですが、私が仕事でお付き合いをいただいている企業などでは全社員数の数パーセント程度といったところが多いようです。そのように考えると、部長になるということは簡単なものではではありませんし、その「器」を持っている人はほんの一握りということです。

そのような中で、A氏のように部長職に就いて活躍をしたいと望むのであれば、前述の様々なスキルを磨いていくのは当然必要なことです。それに加えて絶えず全体最適の視点を持つことを心がけ、日々の業務の中で「トータルで考えるとなにが一番良いのか」と考えるようにしていくことが第一歩になるのではないでしょうか。

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第1,179話 悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである

2023年08月23日 | キャリア

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「孤独や孤立感を持ってしまいます」

これは、ここ最近カウンセリングを担当した際にクライアントから聞くことの多い言葉です。

若手を中心に孤独だと感じている人が少なくないようです。実際、政府が2万人を対象にした2022年の孤独・孤立の実態調査の結果によると、孤独感が「しばしば・常にある」「時々ある」「たまにある」と答えた人は計約40%に上り、初めて調査を実施した21年の約36%から増えたとのことです。(日本経済新聞 2023年3月31日)

孤独や孤立感を感じる背景にはいろいろな理由があるのでしょうが、増加している一番の原因はやはりコロナ禍により行動制限を強いられたこと、それにともないテレワークの導入が進んだことなどにより他者との接触の機会が減り、コミュニケーションがとりにくくなったという経緯があるように思います。それまでの生活と比べ他者との接点が大きく減った結果、たとえば職場内ですぐに他者に相談をしたり、 仕事の前後に気軽に話をしたり、あるいは協力し合ったりということが難しくなってしまいました。その結果として孤独感や孤立感を感じる人が増えたというのは致し方がないといえるのではないでしょうか。そのように考えると、人間とは人とのつながり、他者との接触によって生かされているものなのだと改めて思います。

新型コロナの流行は未だ終息してはいないものの、一時のような行動制限が解除された今、気持ちを切り替えて自ら積極的に動き始めた人も多いとは思います。一方で一旦縮小した行動を再び元のように戻していくことはそれほど簡単なものではないようにも思います。やらない・縮小した状態に慣れてしまったものに対して具体的なアクションを起こすには、やはりきっかけと相応のエネルギーが必要になるように感じます。

それでは、なかなかプラスの気持ちになれないときに、私たちはどのように気持ちを切り替えていけばよいのでしょうか。

そのようなときに私が思い出すのが、フランスの哲学者のアランの言葉です。アランには様々な名言がありますが、その一つに「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」というものがあります。

私はこの言葉を「悩んだり落ち込んだりすることは誰にでもあり、もちろんそれ自体は悪いことではないけれど、そのままずっと何もしないでいると気分に支配されてしまう。逆に、そうした状態から抜け出すためには、自らの意思でものごとを楽観的に考え行動することで可能である」という意味に捉えているのです。ではそのきっかけになり、エネルギーとなるのは何なのかと考えたときに、私はやはりそれも「他者とのつながりであり、コミュニケーションである」と改めて考えているのです。

今、孤独や孤立を感じているという方、決して簡単なことではないかもしれませんが、まずは意識して気分を変えるように何かをしてみる。(たとえば、毎日少しずつ体を動かしてみることなど)そして、自分から身近な誰かに、ちょっとずつでもいいので話しかけてコミュニケーションを取ってみる。これらを通じて新たな一歩を踏み出すことから始めてみませんか。

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第1,178話 「失敗を許すのか? 許さないのか?」

2023年08月09日 | 仕事

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「責任をとって辞めます」

これは、日本の組織において仕事などで大きな失敗をしてしまった人が、自ら職を辞することで責任を取ろうとする際によく使われる言葉です。テレビドラマの女性外科医のように「私、失敗しないので」と皆が言えればいいのですが、現実には必ず失敗は起こるものです。

ところで、企業をはじめとする日本の組織は己が招いた失敗については何らかの「形」にして責任をとらざるを得ない、つまりは「失敗を許さない」という企業風土が強くあるように思えます。実際、経済協力開発機構(OECD)が各国の15歳を対象にした2018年の調査でも、日本は「失敗への恐れを感じる生徒の割合が77%と、加盟国中で最高とのことです。(日本経済新聞2023年8月7日)

このような「失敗を許さない・認めない」、「個人が責任をとる・職を辞する」といった、ある種の文化のようなものになっていると思えるものは、組織にとどまらず国民性とさえ言えるのかもしれませんが、一体いつ頃から形作られてきたものなのでしょうか。これは定かではないものの、相当昔からのもののような気もします。たとえば、江戸時代に武士が切腹したというのも同じような責任の取り方だったのではないでしょうか。藩内で起こった不祥事に対して、ときには主君を守るために、自らが責任を取って切腹するという道を選んだわけです。

翻って、現在の組織は失敗をした人に対してもちろん切腹こそさせないものの、限られた人に責任を負わせる形で事を締めくくることが往々にしてあるように思います。つまりは、今も脈々とこうした文化が受け継がれているのかもしれません。しかし、このような責任の取り方は結果として失敗を次に活かすことをせずに、闇に葬っているだけです。

一方で、数は少ないのかもしれませんが、組織を揺るがすほどの大きな失敗をした人を許したことによって、その後それらの人が大活躍をしているという組織もあります。

そのような企業を取り上げている番組が、最近NHKで放送されている「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」です。番組では、大失敗した商品や巨大プロジェクトなどを「黒歴史」として取り上げ、講談師の神田伯山が当時のエピソードを講談調でおもしろおかしく紹介しています。

これまで放送された中で私が特に印象に残っているのが、生活日用品メーカー「エステー」の家電開発秘話を取り上げた回です。社運をかけて開発した商品が結局は全く売れず、社の「黒歴史」となったのですが、しかしそのときの開発技術者は現在部長に、そのときに営業力を発揮できなかった営業パーソンは今年6月に、何と社長に就任しているのです。

当時、会社には大きな損失・損害を与えたわけですが、失敗の責任を追及してそこで辞職させていたら、現在のこのような姿はなかったわけです。本人の努力はもちろんのこと、今後その失敗以上の成果を得ることに期待して、リカバリーのチャンスを与えた会社(経営者)の「器」の大きさが見えるような気がしています。

失敗はしない方がいいのというのはもちろんですが、失敗することによってはじめて見えてくる世界や、新たな知恵が生まれるということもあると思います。失敗を許し、教訓を次に活かすことができる組織になれるかどうかが、組織としての「器」というものなのかもしれません。

競争がますます厳しくなる今、失敗しないための取り組みはもちろんですが、成長という観点で「大きな器の組織」にするためにはどうすればよいのかということを考えていく必要もあるのではないでしょうか。

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第1,177話 「対面研修」に戻すのか?「オンライン研修」を続けるのか?

2023年08月02日 | 研修

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「なぜオンラインではなくなったのですか?」

これは、先日弊社が担当させていただいたある企業の対面での1泊2日の中堅社員研修の際に、受講者からかけられた言葉です。この受講者は2年前にもオンラインで研修を受講していただいたことがある人ですが、直接対面したのはこの日が初めてでした。

新型コロナウイルス感染症の5類移行後に、社員研修をオンラインから対面型へ移行する組織が増えてきました。コロナ禍の約3年間、感染状況の悪化等に伴い対面で予定していた研修をオンラインに変更せざるを得ない状況が続いていましたが、本年5月以降はようやく対面での研修に戻ってきています。

この間、私がお会いした受講者の大半は対面での研修に戻ったことを喜んでいるように見受けられますが、一方で宿泊研修に遠方から出席する人は研修前日には会場近くへ移動し、研修終了後も帰途は長く、家に着くのは夜10時を過ぎてしまうという人もいるなど、移動に相当の時間を要しています。移動を含めた拘束時間という点で考えると、対面型の集合研修に出席することは受講者にとって少なからず負担になることは事実です。また、往復の交通費や宿泊費、会場の使用料などコスト面で組織にも大きな負担があることも確かです。

実際、こうした理由から全国各地に支店や工場があるような組織では、対面に戻さずオンライン研修を維持するとしているところもあります。

対面かオンラインか・・・研修に限ったことではありませんが、これまでたくさん議論され、それぞれに一長一短がありますので、どちらが良いと一概に言えるものではありません。しかし、私はこの数か月の間に担当させていただいた研修については、はっきり対面型に軍配が上がると感じています。というのは、公開型の研修はともかく、一つの組織が行う研修においては受講者同士の面識があったり、電話だけでやり取りをしていた人と実際に対面したり、以前の部署で面識があった人と久しぶりに対面ができたりなど、何らかの「縁」がある人との再会ということが少なくないのです。それにより、本来の研修のねらいだけでなく、旧交を温めたり活発に情報交換したりするなど、副次的な効果がもたらされるというメリットもたくさんあると感じているからです。

冒頭の例の研修では、終了後に2時間半ほど懇親会が行われましたが、物足りなかったのか2次会、さらには3次会まで盛り上がったという話を翌朝聞きました。それが幸いしたのか、翌日の研修の演習の話し合いでは前日以上に活発に意見交換がなされ、大きな笑い声が聞こえたりと見ているこちらも楽しい気持ちになるくらい積極的な交流がありました。これは、対面により直接コミュニケーションをとれたことが大きな理由だったのではないかと考えています。

この対面コミュニケーションと物理的な距離とコミュニケーションの頻度の関係については、「アレンの研究」と「ベン・ウェイバーの研究」があります。トーマス・アレン(マサチューセッツ工科大学教授1977年)の「アレン曲線」は、コミュニケーションの頻度と物理的な距離には強い負の相関関係があるというものです。それによれば、約1.83メートル離れた人同士と、18.3メートル離れた席人同士を比較した結果、距離が近い人同士の方がコミュニケーションをとる確率が4倍増えたということです。

このようなことからも、対面研修にはコミュニケーションがたくさんとれるという意味で、オンラインではかなわない良さがあると考えています。

さて、冒頭の対面研修に少々否定的だった受講者ですが、研修終了時には「対面研修でよかった」との感想を伝えに来てくれました。その時の表情が実に晴れ晴れとしていましたので、研修を担当した者としても安堵した瞬間でした。

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