中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

大企業で働きたいんです!

2016年01月31日 | コンサルティング

大学の後期授業も終わり、期末試験の時期になりました。学生は良い成績(なんとかA、できればSを)目指して勉学に励んでいる頃です。なんのかんの言っても、就職活動においては学業成績は大事ですから。

私が就活をしていた40年近く前は、銀行などの金融機関は成績重視(都市銀行なら優が9割以上)、流通・サービス業は部活重視(体育会系に限る。大手企業なら武道系の主将あたりがmust)といった感じでした。もっともこれは文系(経済学部)の話ですので、理系は成績がより重視されていたと思われます。

大学の成績表はその学生の「品質」を伝えるシグナルとなります(ただし文系の大学院はこの限りではありません)。採用する側は学生の持つ全ての能力を把握することはできませんから、まずは大学のランクと成績評価の2つを使って「ふるい」にかけます。学生は「ふるわれない」ような成績をなんとか取ろうとします。

先日、最終回の授業が終わったときにある学生が「〇〇社に入りたいと思いますが、難しいですか?」と聞いてきました。その学生の今までの成績を聞いてみたところ、大変優秀でしたので「少なくとも2次面接までは行けると思う。もちろん保証はしないけど」と答えました。

「で、他にはどんな会社を希望しているの?」と聞いてみると、超大手企業の名前が次々と出てきました。私は「どんな仕事をしたいの?」と聞くと、「大企業で働きたいんです!」という(元気な)答えが返ってきました。

「大企業の定義を知っている?」と聞くと、「え?大きな企業ですよね、売上とか従業員数とか資本金とか・・・でもちゃんとした定義ってあるんですか?」と逆に聞き返されました。

「業種によって異なるけど、資本金が3億円を越え、かつ常時使用する従業員の数が300人以上となっている」と私が言うと、「そんなに小さいんですか!資本金100億とか従業員5千人とかだと思いました」とちょっと驚いたようでした。

大企業イコール「テレビや新聞でCMをやっている有名企業」という等式で理解している学生が多いのです。

ここで私は、社会人の先輩として「会社の規模の大小ではなく、自分の専門を十分に生かせる会社や、君が本当にやりたいことを早いうちからやらせてくれる会社を探しなさい」とアドバイスするべきだったのでしょう。

しかし私は「君が希望している会社はどれも従業員1万人、売上高1兆円を超すところばかりだね。難しいと思うけど頑張ってください。ただし、さっき言った大企業の定義を自分でも確認して、自分に合った大企業も考えてみてください」と伝えました。

こうした「有名企業信仰」の功罪はあると思いますが、少なくとも良い成績を目指して一所懸命勉強するインセンティブにはなるようです。

そして、一所懸命勉強をすることは必ず自分のためになります。

「大企業で働きたいんです!」・・・良いじゃないですか。

(人材育成社)


話の長い人の特徴

2016年01月27日 | コンサルティング

あなたの知り合いに話の長い人はいますか?いますよね、もちろん。
昔から「校長先生の朝礼」、「結婚式での上司のスピーチ」などが有名ですが、ビジネスの場でもたまに話の長い人に遭遇します。初対面の人がこのタイプだと、結構こたえます。

私見ですが、話の長い人は明るい性格の人が多いようです。もちろん根暗な人もいますし、攻撃的な人もいれば、自虐的な人もいます。しかし、すべてのタイプに共通する3つの特徴があります。それは、1.自己評価が高い、2.人の話を聞くのが苦手、3.要約する力が弱い、です。

自己評価が高くて明るいタイプ、特にポジティブシンキングを身上とする人たちはかなり高い確率で「話の長い人」と思って間違いありません。

私も今までに何度か、ビジネスパーソンが集まる場でこのタイプの人たちと話をしたことがあります。

あるミーティングで私が司会をしていたときのことです。
「では○○さん、ご意見をお願いします。」
○○さんはゆっくり立ち上がると、話しはじめました。
「はい。いきなり結論を申し上げる前にまず私の立場を改めてみなさんに知っていただきたいと思うのですがえ~と私が学生時代にマネジメントを学んだことがこの問題に関する考え方の背景にありましてあの~先ほどXXさんが言われたような立場も十分理解した上でこれからあえて言わせていただくわけですから決して反論を言うつもりではないことをですねその~わかっていただきませんと本来の意味が間違って伝わってしまうのではないかと危惧するわけで・・」
「あの、○○さん、時間があまりないので短めにお願いします。」
「あ、はいはい。短めですね。わかりました失礼しました今日はとても興味深い議論だったもので一言でお伝えしてしまうのは失礼かと思いましてその~(以下延々と続く)」

先ほど挙げた3つの特徴を見事に示している例でした。

研修でも、受講者にグループ討議の結論を発表してもらうときなど、こういう人に当たることがあります。研修では講師が権限を持っているので、ベルやアラームを鳴らして止めることができます(ごく稀にですが、ベルを鳴らしても暴走し続ける人もいますが)。

話が長いことによって、他の受講者の話す時間がなくなるという「被害」が発生します。話の長い人は時間泥棒なのです。ところが、当の本人にはその自覚がありません。

もし、あなたが「話が長い」と言われたことがあったとしたら、知らず知らずに泥棒をしていたのだと思ってください。

とはいえ、何事もポジティブに考える人にとっては、あまり効き目がないかもしれませんね。

レイモンド・チャンドラー風に言うならば「話の長い人にさよならをいう方法はいまだに発見されていない。」といったところでしょうか。

(人材育成社)


その研修をやると、いくら儲かるの?

2016年01月24日 | コンサルティング

「うちは今まで研修なんてものは一切やったことがないんだけど、社員も増えてきたことだし、試しに一度やってみようかと思ってね。」これは、ある中堅企業の社長さんの言葉です。

大企業の人材開発部門からはまず聞けないような発言ですが、中小企業ではこうしたことは少なくありません。

そして「その研修をやると、いくら儲かるの?」という質問も、必ずと言っていいほど付いてきます。

研修をはじめ「人」に対する投資は、その効果を測定することが難しいものです。

機械や建物など「物」に対する投資(設備投資)であれば、期待される効果はかなりはっきりしています。

たとえば、ある機械を導入するときには、将来得られるであろうリターン(利益の増加などによる金銭的な見返り)を予測しますから「約〇〇円儲かる計画です」と言えます。それに、導入後しばらく経っても期待したリターンが得られそうもなければ、機械を売却して損を少なくすることも可能です。

ところが、研修のような「人」への投資は費用対効果がはっきりしません。しかも、「人」は会社の資産ではありませんから、研修を受けた社員が辞めてしまえば効果はゼロになってしまいます。

そう考えれば「いくら儲かるの?」あるいは「損をしないの?」という疑問が社長さんの口をついて出てくるのもうなずけます。

私はいつも「いくら儲かるのかは、わかりません」と正直に(!)答えて、次のように続けることにしてます。

「例えて言うならば、研修とは兵士に武器を与え、その使い方を教えるようなものです。」
「確実に戦闘能力は上がります。したがって勝利する、つまり儲かる確率は高くなります。」
「しかし、戦闘において兵士の能力を引き出すのは指揮官の仕事です。」
「この会社の指揮官は社長さん、あなたですよね。」
「ですから、研修の費用対効果を決めるのはあなた次第と言うことになります。」

多くの社長さんは「・・・なんか煙に巻かれた感じだなあ」と苦笑いしながらも概ね納得してくださいます。ご自身が指揮官であることを十分にわかっていらっしゃるからです。

一方「それじゃいくら儲かるか全然わからないよ」とおっしゃる場合は、仮に研修の依頼があってもお受けしないことにしています。

トップである社長に指揮官としての自覚がなければ、いくら社員を鍛えても全く成果は望めないからです。

(人材育成社)


ビジネス書は不滅です

2016年01月20日 | コンサルティング

本が売れなくなったという声を聞くようになって、もうずいぶんと経ちます。2014年の出版物の推計販売額は1兆6,065億円で、ピークだった1996年の2兆6564億円から約4割減となっています(出版科学研究所の調べによる)。

10年ほど前までは、通勤電車の中で雑誌や文庫本を読む人が多くいました。しかし、今や性別年齢を問わずほぼ全員がスマホの画面に見入っています。また、公共図書館が新刊を何冊も無料で貸し出すから本が売れなくなったという人もいます。

年々売れ行きが低下している書籍の中で、比較的健闘しているジャンルがあります。それは、ビジネス書です。書店のビジネス書のコーナーには、経営戦略やマネジメントといった高級品(?)から、自己啓発やノウハウ本などの実用品(?)まで幅広く並んでいます。新宿や浜松町などのターミナル駅に隣接する大型書店に行くと、ビジネスパーソンらしき人(大抵は中年の男性)が何人か新刊書を手に取っています。

さらに、確かめたわけではありませんが、ビジネス書は電子書籍ではなく「紙の本」の方がはるかに売れているように思います。

本を手に取った時の重さ、目に映るカバーの色やデザイン、印刷された活字、ページをめくるときの紙の手ざわり。そうした様々な「実体」が、パソコンやスマホの画面の上に現れては消える「信号」とは違って、直接体に伝わってきます。本の中に書き込まれた「知識の重さ」を実感できるような気がします。ビジネス書は「本」に限る!と言いたくなります。

さて、小説家の浅田次郎氏のエッセイ「君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい(文春文庫)」を読んでいたら次のような一文がありました。

「思うに、あらゆる書物中の役立たずの最たるものは、いわゆるノウハウ本であろう。自己啓発法だの成功術だの生活の知恵だの、つまり目先の悩みを解決しようとする類の書物ほど無益なものはない。」

そうかもしれません。

しかし、自己啓発法や成功術であってもそのノウハウを活字から得ようとする人たちがいる限り、紙の上に記(しる)された知識は本という形となって残ります。もしかすると、ビジネス書は書籍文化を守る兵卒、将棋の「歩」のようなものかもしれません。

「歩のない将棋は負け将棋」と言います。ノウハウ本も大いに結構!と、ビジネス書のコーナーに積まれた本の山を見て思いました。

(人材育成社)

 


融資担当者は消える職業?

2016年01月17日 | コンサルティング

ロボットとAIの急速な普及により、近い将来人間が行なっている仕事の半分以上が無くなると言われています。英国オックスフォード大学M・A・オズボーン教授の論文によれば、銀行の融資担当者、スポーツの審判などの職業がコンピューターに取って代わられる確率は90%以上だそうです※。

「創造性を必要としない仕事はすべてテクノロジーに代行される。」とビル・ゲイツ氏は言っています。

確かに、仕事自体の複雑さの違いはあっても、消える職業は蓄積された知識や情報をフルに活用すれば「機械でもできるかもしれない」と思わせるものがほとんどです。

しかし、中には、ちょっと待てよと言いたくなるものもあります。ロボットが動物のブリーダーをできるのか、彫刻師の代わりに大型の3Dプリンターが芸術性の高い作品を作れるのか疑問です。

私がいちばん疑問に思ったのは、リストの最上位にある銀行の融資担当者です。

銀行の仕事は資金を貸して金利を得ることです。コンピューターは、ビッグデータを使って融資案件ごとにリスクを計算し、数値で示すことができます。融資限度額や金利、その他の条件も一瞬にしてはじき出せます。

リスクとリターンをどう評価するかは、金融機関ごとに異っていますが、コンピューターが計算したリスクとリターンの関係を示す一本の曲線(直線かもしれません)上のどこを選ぶかという違いにすぎません。

銀行はローリスク・ローリターンで、ベンチャーキャピタルはハイリスク・ハイリターンで評価をするでしょう。合理的に考えれば、その曲線上から外れた条件で金融機関が融資を行うことはあり得ません。

しかし、その合理性には「人間」に対する期待値が加味されていません。

J.M.ケインズは、企業家の、リスクを好む非合理的な心理をアニマルスピリット(血気、動物的な衝動)と呼び、それがイノベーションの源泉となり、経済の発展に重要な役割を果たすと述べています。

過去に銀行の融資担当者の中にも、思い切ってその経営者の人間性に賭けてハイリスクな融資を行った担当者がいたはずです。そうした銀行員なりのアニマルスピリットがあったからこそ、「大化け」する企業が生まれたのだと思います。

数値では測ることができない「人を見抜く目」を持っていれば、銀行の融資担当者も創造的な仕事になるのではないでしょうか。

※ オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」 より

(人材育成社)

 


「『何でもある』は、もうやめた!」

2016年01月13日 | コンサルティング

インターネットで「何でもある店」というキーワードで検索すると、何と548万件もヒットします。

試しにそのうちの何件かを開いてみると、ある店は「何でもある店です。和食からピザまであるお店です」とされています。また、別の店では「このお店の良い所は、パスタから定食から丼からカキ氷まで何でもあるところ」などと「何でもある」ことがメリットとして強調されています。

「何でもある」は長きにわたり、セールスポイントとして一世を風靡してきました。しかし、この「何でもある」がここにきて、岐路に立たされているとのことです。

ご覧になった方も多いと思いますが、昨日のテレビ東京の「ガイアの夜明け」では、「いつもの"売り場"が大変貌!」のタイトルで、食品から衣料、家電製品、日用雑貨、家具まで幅広く品揃えをする総合スーパーの不振が取り上げられていました。

総合スーパーや家電量販店、ショッピングセンターなどはこれまで郊外に数多くの大型店を出店してきたのですが、現在ではそのビジネスモデルに陰りが見えてきているとのことです。それを受けてたとえばイトーヨーカドーや西友は今後不採算の店を大量に閉店する予定であり、また、イオンやヤマダ電機はこれまでとは全く違ったコンセプトの売り場にするなどして、新たな攻勢をかけ始めていることが紹介されていました。

同じように、昨年の秋にも「『何でもある店』でない新スタイルの総合スーパーへ」と題して、ユニーの取り組みを紹介した報道がありました。

こうした大型店の閉店や全く異なるコンセプトの売り場に変えようとする背景の一つには、「何でもあるが、欲しいものがない」といった消費者の声があるようです。

確かに「取りあえず一通りの物が揃っている」ということは、「実は本当に欲しい物は何もない」ということの裏返しと言えるのかもしれません。

また、消費者のニーズの細分化やネット通販など他の選択肢が増えていることも当然影響していると思いますが、私はこうした流れの根底には、「皆が持っている」や「皆揃っている」というように、私たちが「他者と同じ、横並び」を求めることから、逆に「自分らしくいたい」や「人とは違ったものを求めたい」といった意識の変化があるのではないかと思っているのです。

こうした流れの中で、たとえばこれまでの総合スーパーはチェーン店として、どこでも同じような店舗や売り場を作り同じような品揃えをしてきていたのですが、それに対し新業態のスーパーは地域のニーズを徹底的に調査し、地域ごとに特色のある店舗を作ることで既存のスーパーとは差別化しているのです。

そして、こうした動きは物販に限らず、さまざまなビジネスの分野でもますます広がっていくのではないかと思っています。たとえば、事業を「何でもあり」から「選択と集中」で絞り込むといったことがさらに進むのではないでしょうか。

さて、我が人材育成社の業務はコンサルティングと研修の2本を柱にしているのですが、これまでは具体的なメ二ューはニーズに応じて多種多様に展開していることを良しとしてきていました。

しかし、昨日の「ガイアの夜明け」を見て、あらためて「何でもある」だけでなく、「尖ったもの」を選んで徹底的に追求していくことの重要性を再認識させられたように感じました。弊社は今後、「情報共有の仕組みの構築」と「紙飛行機で会計を学ぶ経営シミュレーション」の2本に注力していきます。

(人材育成社)


ROEと企業の不祥事

2016年01月10日 | コンサルティング

「この10年ほどの間に企業による不祥事や事故に対する社会的関心、および企業の社会的責任に対する意識が高まり、それらに対応した形での法規制の強化が行われるようになった。」
これは「組織風土と不祥事に関する実証分析※」という論文の冒頭の一文です。この論文が書かれたのは今から10年近く前のことです(掲載は2008年1月号)。しかし、大企業や公的な組織の不祥事はいまだに減少する気配すら見えません。

この論文では、不祥事を生み出す様々な要因を統計的手法で分析しており、その中で要因のひとつとして成果主義を挙げています。
「・・・今回の解析結果からは、成果主義が『職場での不正・違反放置の風土』を醸成しやすいことも示されている。Mitchell (2001)は近年のアメリカの法制度が企業の経営陣に短期的な株主利益の最大化を目標とした経営を強いており、そのために企業の不正行為や非倫理的行動が増えたと指摘している。」

私は、成果主義が直ちに不祥事を生む土壌になっているとは考えていませんが、「短期的な株主利益の最大化」すなわち短期的な成果を求める経営については大いに関係ありだと信じています。

さて、近年ROE(自己資本利益率)が投資指標として注目されています。ROEは自己資本に対する利益の「成果」を測る指標であり、ROEが高い企業は収益力が高く株価は上昇しますから、株主が最も重視する指標です。

海外からは、日本の企業のROEが(特にアメリカの企業に比べて)低いことについて「株主軽視だ」と非難を浴びています。それに対しては、海外からの投資を呼び込むために官民を挙げてROEを重視した経営を推奨しているようです。一例として、2014年から「JPX日経インデックス400」に高ROE企業を積極的に採用し「グローバルな投資基準」としてPRしています。

しかし、「短期的な株主利益の最大化」が行き過ぎると、企業の不祥事が生じる可能性が高くなるであろうことは、常識的に考えてもわかるはずです。短期的な利益を上げなければクビになってしまうとしたら、経営者は多少の不正に目をつぶるかもしれません。また、大きな組織では小さな不正が小さいままで終わらず、どんどん大きくなってしまいます。昨年起きたいくつかの大企業の不祥事は、そうしたパターンを踏襲していたように思います。

また、企業の利益についてはもちろんですが、人材育成に関しても「短期で成果を求める」ことは非常に危険だと思います。

仕事に対するモチベーションが、目先の成果を上げることだけだとしたら、その企業はどうなるでしょう。人を育てるなどという悠長な行為は形骸化してしまい、研修などの人材育成が行われたとしても「促成栽培」のような内容になってしまいます。その結果、個人のパフォーマンスは多少上がるかもしれませんが、チームワークはガタガタになり、企業の力は落ちていきます。

短期的な成果を重視し過ぎた結果、企業も人もつぶれてしまっては元も子もありません。企業は人が集まって成り立っている組織です。目先の利益を確保するよりも、長期的に人を育てることにコストを使うべきではないでしょうか。それが企業を将来にわたって健全に成長させる一番有効な手段だと思います。

その結果、海外に比べてROEが多少低くなっても良いではありませんか。

(人材育成社)

※「組織風土と不祥事に関する実証分析」、星野崇宏、荒井一博、平野茂実、柳澤秀吉(著)、一橋経済学2(2): 157-177、2008年1月、https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/15869/2/keizai0020200530.pdf


経済成長のカギは人材育成

2016年01月06日 | コンサルティング

昨日のテレビのニュース番組の中で、新年恒例の経済3団体のパーティーが開催されたことが放送されていました。

毎年この報道に接すると、いよいよ本格的に新年が始働したのだなと実感します。今年のパーティーでは大手企業のトップ1800人が集まったそうですが、あるニュース番組の「今年の経済成長のカギは?」という質問に対して、いくつかの大手企業のトップがそれぞれキーワードをあげていました。あげられたキーワードはそれぞれ実に興味深いと感じましたが、その中でも私が特に興味を持ったのは、トヨタ自動車の豊田章男社長のキーワードです。豊田社長があげられたのは「人材育成」で、「現場に近い多くのリーダーが即断即決し、先を向いた判断をしていくことが大切」とおっしゃっていました。

番組を見ながら、思わず「リーダーが即断即決していくためにはどういう人材育成が必要なのか、手段はどうするのか」など詳しくお話を伺いたいと思ってしまったのですが、もちろんそれが叶うわけではありません。

さて、厚労省が毎年実施している能力開発基本調査の平成26年の結果によると、正社員に対する「OFF-JT」 に支出した費用の実績が、過去3 年間で「増加傾向」とした企業の割合は24.4%で、これは「変わらない」とした企業よりも少ないとのことです。

もちろん、調査対象の企業とトヨタ自動車では、規模をはじめ様々な状況が異なるのだとは思いますが、上記の結果と豊田社長が「人材育成が企業の成長のカギだ」とおっしゃっているのとでは、随分状況が異なっているように感じます。

また、同じ調査で正社員に対する教育訓練において「OJT」を重視する(又はそれに近い)とする企業割合は73.4%で、「OFF-JT」を重視する(又はそれに近い)とする企業の24.9%に比べ圧倒的に多く、企業の人材育成手法がOJT重視であることがわかります。

言うまでもなく、OJTとは「on the job training」のことですが、例えば管理者研修でOJTが具体的に意味するところを質問しても、きちんと理解していない管理者が少なくありません。

先月、弊社が担当したある大手製造業の管理者研修の中でも、OJTの定義について、グループで話し合っていただきましたが、OJTとは「職場の中の実務と人間関係による育成方法」や「先輩などが担う新人指導法」、また「職場内研修会」などの回答が多く出されていました。

いずれの答えも決して間違っているわけではありません。しかし、これだけでは少々説明が足りないように感じましたので、その回答に至った理由を尋ねてみたところ、「OJTという言葉は日常的に使ってはいるものの正確に習ったことがないし、自ら調べるきっかけがないままに管理者になってしまった。また、OJTは新入社員に対して、2~3年上の先輩社員が行うものだと思っていたので、自分が管理者となった今ではOJTを身近なものとして感じていなかった」とのことでした。

これらのことから、OJTを重要視している企業がとても多いにもかかわらず、実態としてはOJTの意味あいが正確に理解されていないことが問題だと感じています。

豊田社長の言葉のように、今後も企業にとっては「人材」が最大の資源であることは間違いありませんし、同時に人材育成の中心的な手段として引き続きOJTが必要とされると思います。

したがって、「OJTとは何か、具体的にどのように進めていけばいいのか」を個々の社員任せにするのではなく、企業全体で継続的に考え、「共通言語」としていくことが必要だと考えています。

さて、「人材育成」を社名とする弊社では、コンサルティングや研修の際には、必ずOJTの定義をきちんとお伝えしているのですが、私どもでは、法政大学にいらした桐村先生の「人材育成の進め方」から一部言葉を拝借して、「OJTとは、管理・監督者(先輩含む)が部下(後輩)の職務に必要な能力(知識・技能および態度)の向上・改善を目的として、仕事を通じて行う、計画的・合目的・継続的かつ組織的な教育活動」としています。

トヨタ自動車の豊田社長の言葉から、企業にとって人材を育成することは費用ではなく将来への投資であることを今一度考えた年始でした。

(人材育成社)