中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,144話 口癖は直した方がよいのか

2022年11月30日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「ご提案をするかたちで」、「個人情報に則ったかたちで」、「エリアマーケティングというかたちで」

これは、先日ある企業の営業担当者のプレゼンテーションの際に聞いた言葉です。同じ会社から2名が出席し説明をしたのですが、どちらの人も「・・・・かたちで」という言葉を次々と連発したため、私は途中からこの言葉が気になってしまい、肝心の話の内容があまり耳に入ってこなくなってしまったのです。

この「・・・かたち」は口癖の一つだと思いますが、口癖には様々なバリエーションがあります。一般的に多いのは、話の冒頭に「えー」、「あのー」などの音を入れてしまうものですが、いずれであっても、使用頻度が多くなると耳障りに感じてしまう人が多いのではないでしょうか。

口癖が全くない人もいますが、では口癖がある人はどうしてそれを発してしまうのでしょうか?私のこれまでの経験から考えてみると、口癖を連発してしまう人も飲み会の席など比較的リラックスしているような場面では、口癖を発することは少ないように感じています。

そう考えると、やはり緊張感が原因の一つなのかもしれません。確かに、プレゼンテーションやスピーチなど、大勢の人を前にした際に、口癖を連発してしまう人が多いように思いますので、緊張感は大いに影響がありそうです。

ちなみに、私自身は聞き手の人数に関係なく、頭の中で整理できていないことを説明するときに「あの」と発してしまうことがあることを自覚しています。

では、これらの口癖をなくしたいと考えている人はどうすれば良いのでしょうか?

それには、まず自身の声を録音し、どのくらいの頻度で口癖を発しているのかをきちんと自覚することから始めてみることがお勧めです。弊社が行ったプレゼンテーション研修の中で実際に録音をしたことがありますが、自分がこれほど口癖を連発しているのかと驚く人が何人もいるなど、本人が自覚するにはとても有効な方法です。

次にすることは、プレゼンテーションの準備をしっかりと整えることです。緊張を強いられる場面で口癖が出てきてしまう人が多いのですから、逆に言えばそうならないようにあらかじめ丁寧に準備をしておくことには大きな効果があります。あわせて話す際に句読点で間を入れる、一語一語ゆっくり話すことを意識するのも有効です。

また、冒頭の例のように同じ部署で仕事をしていると、いつの間にか口癖が伝染しまうということもあるようです。そういうときには、思い切って部署全体の課題事項として改善に取り組む事項に位置付けるというのも一つの手かもしれません。

もちろん、「口癖は問題ない、愛嬌だ、話す中身が大事だから直す必要はない」という考え方もありますので、絶対に直さなければならないとまでは言えないとは思いますが、あまりに連発されると気になる人も多いと思います。

口癖があるのか、ないのかを含めて、まずは定期的に自身の話し方を振り返ることから始めてみることが良さそうです。自戒の念をこめて。

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第1,143話「絶対悲観主義」を薦める理由

2022年11月23日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「悲観」とは、「物事がうまくいかず、悲しんで失望すること。または落胆すること」と辞書に書かれています。楽観の反対の意味である悲観は、一般的にはマイナスの状態をさして使用することが多い言葉です。

「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもない」、「こと仕事に関していえば、そもそも自分の思い通りになることなんて、ほとんどありません」

これは「絶対悲観主義」(楠木健2022 講談社+α新書)の中での著者の言葉です。

「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもないという前提で仕事をする」こと、「世の中は甘くない、・・・うまくいくことなんてひとつもない」これが楠木氏が言うところの「絶対悲観主義」です。

絶対悲観主義を前提に仕事をすれば、たとえば会社の内外を問わず納期が過ぎてしまっているのにもかかわらず何の音沙汰がないことに慌てたり、イライラしたりするなどのマイナスの感情を持つことが減るのかもしれません。もともと上手くいかないことを前提に、予め先手を打ったり予防線を張っておいたりするなどの備えをしておけば、仮にそれがうまくいかなかったときでも「やっぱりそうなったか!予期していたとおりだ。それなら、こういう手を打とう」というように、さほどがっかりもせずに、粛々と事を運べばいいというふうになるのかもしれません。

私たちは物事を楽観的に考え、「きっと大丈夫だろう」「きっとうまくいくだろう」とさしたる根拠もなしに思い込み、きちんとした準備もすることなく物事を始めてしまい、その結果痛い目を見るということが少なくない。そうしたことから、この「絶対悲観主義」の考え方が出てきたようにも思えます。

私自身、これまで仕事やプラーベートの上で思いどおりにいかず、慌てたりいらいらしたりすることは数えきれないくらいあったわけですが、はじめから自分の思い通りにうまくいくことなんてないのだと思っていれば、さぞかし気持ちは楽だったろうなと思います。

同時に、私はこの「絶対悲観主義」は「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもない」から、物事をいい加減にやってもいいと言っているのではなく、「自分自身はやるべきことをきちんとやったうえで、それ以上のもの(他人や環境など)には過度の期待をしないこと」と言っているようにも理解をしました。

他者や周囲の環境は、なかなか自分の思い通りにコントロールすることはできませんが、逆に言えばそれ以外の自分でやれることはきちんと準備をしておく。まさに「人事を尽くして天命を待つ」ことの大切さにも触れているように感じられたのです。

「思い通りにいかないことを前提条件にすることで、逆に自分に対して楽に生きることができる」との著者の言葉、何十年も仕事をしてきたからこそ、改めて染み入ります。良い意味で他者に期待しない、その上で自身としてどう準備するのかが大切なのだと思います。

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第1,142話 ユーモアは言えた方がよい?

2022年11月16日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「ユーモアで周囲を和ませることによって、プラスの影響力を発揮したい」

これは、弊社が管理職研修を担当させていただく際に聞くことが多い言葉です。管理職研修では個々が目指すリーダー像について言語化していただくことがありますが、その際に出てくることが多いキーワードの一つに、ユーモアがあります。ユーモアをさりげなく言えるようになり、笑いによって周囲をリラックスさせたいとのことです。

ユーモア(humor)とは「湿ったもの、体液」という意味のラテン語から派生した言葉のようですが、「上品な洒落や、おかしみ」のことを言います。確かに、ユーモアがある人が周囲にいると場が和むということはあると思いますので、ユーモアはないよりもあった方がよいとは思います。一方で本来の意味のユーモアを言うのはそう簡単なことでもなく、またそれにこだわりすぎてはいけないようにも考えています。

今年の9月に、東洋経済新報社より「ユーモアは最強の武器である」という書籍が出ていますが、新聞の広告によると「ユーモアは結果を出す技術だ!」とのタイトルがつけられています。たちまち4版になっているとのことからも、ユーモアを身に着けたいと考えている人が相当数いるということが想像できますが、タイトルに「技術」と入っていることにも興味を惹かれました。

それでは、ユーモアはどのようにすれば身につき、さりげなく言えるようになるのでしょうか?知識や語彙の量は関係しているとは思いますが、それだけが全てではないでしょうし、人の話を一生懸命に聴けばよいというものでもないのではないとも考えています。

私は、ユーモアは運動神経などと同様に持って生まれたセンスによるところがあるのではないかと考えていて、努力や練習だけで身に着けるには少々難しい面があるようにも。同じユーモアを聞いても「クスッ」と和む人がいる一方で、全く響いていないような人がいたりします。笑いに対する反応は怒りなどのマイナス感情と比べて個々の感性、感じ方の振れ幅による部分が大きく、笑いの感じ方が似ている人だとより「受ける」のではないかと感じています。ユーモアによって人を笑わせたり和ませたりするためには、多くの人に理解してもらえた上で、かつ、ひねりも効いたものである必要があることから、そこを的確にとらえるのはやはりある程度のセンスがあったほうが良いように私は思います。

それにもかかわらず、とにかく笑わせて周囲を和ませようと無理してユーモアを連発した結果、逆効果になってしまうことも少なくないのではないでしょうか。

現に、私の周囲にダジャレを含めてユーモアを頻繁に言う人がいます。本人は場を盛り立てようとしていることはよくわかるのですが、その結果あまりおかしくないときでも、無理して笑わなければいけないように感じられてしまうときがあります。その結果そのユーモアが少々負担に感じられてしまうのです。そうすると、コミュケーションをとることそのものがやっかいに感じられてしまうようなときさえあるのです。

ユーモアを言う狙いには「良好なコミュニケーションを助ける」という意味合いが大きいと考えていますが、ユーモアだけにこだわりすぎて無理をした結果、コミュニケーションがおろそかになることを招くことにはならないように、どうか気を付けていただきたいと思うのです。

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第1,141話 面接か!集団討議か!

2022年11月09日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「採用時に最初に面接をしたのは私なんです。コミュニケーションスキルが高いように見えたので採用したのですが、違いました。私に見る目がなかったのか・・・」

これは、先日ある企業で長年採用担当をされている方から聞いた言葉です。その社員は採用時にはとても感じがよく、コミュニケーションもきちんととれる人だと思い採用したそうですが、採用数か月後に行っている面談ではコミュニケーションがうまく取れず、全く話がかみ合わなかったとのことです。

日本経団連が2018年まで毎年実施していた調査に、「経営者が大卒(高卒)新人を採用する際に重要視すること」があるのですが、16年連続して回答のトップになるのがコミュニケーションでした。以前は就職活動中の学生の中にはこの調査を踏まえて、自らのコミュニケーションスキルの高さをアピールする人が相当程度いたということを幾度となく聞いていました。この調査は中止されて久しいのですが、現在もコミュニケーション力をアピールする学生は少なくないようです。

それでは、この応募者のコミュニケーション力について、採用する側はどのように見極めると良いのでしょうか?実際のところ、コミュニケーションスキルの有無を見極めるのは決して簡単なことではありません。それには様々な方法があると考えますが、私のこれまでの経験からは面談のみならず集団討議が有用だと考えています。

集団討議では、基本的には事前準備ができない中、本番では限られた時間で最大限の成果を出すために初対面のメンバー同士が役割を分担して協力し合い、テーマについて結論を出すことになるわけです。そのため様々な制約条件が多い中で相当なプレッシャーになっているはずです。

その中で、どうやってチームとしての結論・成果を出していくのかはなかなか難しい課題です。伝えるべきことは発言し、他者の話もしっかり聞く。自分とは異なる意見の人に対しては、質問したり、状況に応じて共感したり、発言が少ない人には発言を促ししたりすることが必要です。複数の面接官を前に成果を出すわけですから、それは大変なことだと思います。

しかし、私はこのような制約やプレッシャーの中で行う集団討議には、とても意味があると思っています。それは、当日知らされるテーマに対してインターネットで調べることもできず、周りにいるメンバーの属性もほとんどわからない中で議論を行うことになるため、成果を出すためには取り繕ろっていないありのままの自分を出さざるを得ないからです。まさに「その人らしさ」がはっきり出るわけです。

私は、これまでたくさんの集団討議の場に立ち会ってきました。教科書的な対応をする人、指示していないことをやり始める人、板書係に立候補したもののホワイトボードの前で立ち尽くしてしまう人、そして予定外の行動をとり始めた人を前に呆気に取られている人がいたり、感じよくフォローする人もいたりする人もいます。また、流ちょうではあるけれども聞き手には全然伝わらないような話をする人もいれば、逆にしどろもどろで汗をかきながら話している人が説得力をもってその場に影響力を発揮したりする例もあります。

もちろん、集団討議のみで全てを確認できるわけではありませんが、それでも集団討議は人間の本質を確認することができる一つの有効な手段だと私は考えています。今後も採用選考時に集団討議の面接官の機会をいただいた際には、精一杯務めさせていただこうと考えています。

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第1,140話 「仕組みにする」は魔法の言葉?

2022年11月02日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「仕組みにすればよい」

組織において物事がうまく回らなかったり、何らかの問題が生じたりするときなどに、その解決の手段として使われることが多いのが、この言葉です。弊社が問題発見・課題解決研修を担当させていただいたり、中小企業でコンサルティングを担当させていただいたりする際にも、聞くことがとても多いと感じています。

また、新聞の記事などでも、物事がうまく回っていない状態を改善する方法として、「仕組みにすることが大切」という趣旨の識者の話が載せられていることが多いようにも感じます。

それでは、「仕組みにする」とは何をすることなのでしょうか?「仕組み」という言葉を辞書で調べてみると、「ものごとの組み立てられ方、構造、機構」とあります。組織において「仕組みを作る」ことの狙いの一つには、異動や退職によって人が変わることがあっても、いつでも、どこでも、誰が行っても同じ成果を出せるシステムを構築するということがあると思います。この意味合いからも、仕組みにすることが大切であることがよくわかります。

では、仕組みが整っていないとどういうことが起きてしまうのでしょうか?

まず、仕組みになっていないと仕事が属人化しやすくなってしまいます。特定の人しかわからない業務ができてしまったり、仕事のやり方が改善されず効率が悪くなったりします。また、特定の人に業務を固定化した結果、他の人が新たな業務にチャレンジできず成長の機会を得られなかったり、状況によっては不正が生じやすくなったりすることにもなりえます。

そのように考えると、「仕組みにすること」自体はとても重要なことだということがよくわかります。しかし、一方で「仕組みを作り、運用し、定着させる」ことには相当のエネルギーが必要となることも事実です。このため、掛け声だけで仕組みが定着するようなことはないわけです。しかし、冒頭の言葉のように「仕組みにする」という表現は非常に聞こえがよいことから、あたかも魔法の言葉のように、問題の解決策として万能であるように捉えられてしまうことがあります。

実際、弊社が行う公開セミナーのタイトルの一部に「仕組みにする」という表現を入れると、どこの組織でも使えるようなパッケージになっている仕組みを紹介してもらえると過大な期待をされてしまうことがあります。しかし、残念ながら現状ではそのようなものは存在しないのです。

それでは、仕組みを作り定着させるためには、どうすればよいのでしょうか?

それには、メンバー全員でアイディアを出しながら、5W1Hで具体的な行動を決めて日々共有し続けるという、ある意味では地味とさえいえるような作業をコツコツとやり続けていくことが大切です。

仕組みにすることは、前述のとおり大切なことですから、私自身も今後も推奨していくつもりです。同時に「仕組みにすること」は魔法のように一瞬にして物事に大きな変化をもたらすことではなく、地道な努力が必要となるものであることもしっかりお伝えしていきたいと考えています。

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