中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,117話 部下の評価が甘くなってしまうのはなぜか

2022年05月25日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「管理職の部下への評価が甘いのです」

これは、管理職による部下の評価に関して問題意識を持っている企業のご担当者から定期的に聞く言葉です。

評価をする際に陥りやすいエラーの一つとして、寛大化傾向があります。これは、文字どおり評価全体を寛大に行ってしまうことです。具体的には、特定の能力や特性について実際よりも良く評価すること、また、頼りにしている部下を実力以上に評価するなど、評価全体を甘くしてしまうことです。

では、なぜ管理職は部下の評価をなぜ甘くしてしまうのでしょうか?先日、この点について既に管理職になっている人にインタビューをさせていただく機会をいただきました。その結果は、主に次の3つに分けられます。

A管理職:「直属の部下の評価をよくしたいと考えるのは、管理職として当然のことだと思います。評価をよくすれば、部下のやる気につながります。そして、人事の処遇もよくなるわけですから。大切に思っている部下だからこそ、良い評価をつけてあげたくなりますよ」

B管理職:「私はマイナスの評価をつけてしまうと、部下へフィードバックするときが辛いのです。ネガティブなことであっても部下へ伝えなければならない、それが苦手なのです。それでついつい甘くしてしまっています」

C管理職:「正直に言うと、私は部下との人間関係が壊れることを恐れています。マイナスの評価をすると、その後一緒に仕事をしにくくなるように感じるからです」

いずれも本音で話をしてくれましたが、評価することの大きな目的が部下の人材育成だということを考えると、いずれの方も管理職としての役割の一部を少々放棄しているように感じられました。ぜひ今一度、管理職の役割、そして評価の目的を整理していただきたいと思うのです。

さて、インタビューをさせていただいた中で最も大勢の方が指摘されたのが、マイナスのフィードバックが難しいということでした。行動改善を部下のやる気につながる表現で伝えるのは確かに簡単なことではありませんので、うまく伝えるためには訓練が必要です。

それでは、どのように伝えればよいのでしょうか。ここでヒントとなるのが、同じことを伝えるにしても、行動よりも人格のことを言われた方が身が引き締まるという理論です。具体的には、A「うそをつかないで」よりB「うそつきにならないで」や、A「裏切らないで」よりB「裏切り者にならないで」を例にして考えてみると、いずれもAは行動について訴え、Bは人格について訴えているのです。(「脳はなにげに不公平」池谷裕二 朝日新聞出版)

確かに「うそつきになるな」や「裏切り者になるな」の方が、直接気持ちに訴える部分が強いように思えます。もちろん、フィードバックは「人格と行動」だけに限ったものではありませんから、これだけですべてを解決することはできませんが、大きなヒントにはなりそうです。マイナスのフィードバックでお悩みの管理職の皆さんは、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

ただ、いずれにおいても、フィードバックを行う際にはその根拠となる情報をしっかり収集しておかないと、部下のやる気につながる適切なフィードバックはできません。どのように伝えるかのみならず、どのようにその根拠となる情報を収集するのかも、評価における大切なポイントになるのではないかと思います。

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第1,116話 成功体験をどのように積ませるのか

2022年05月18日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下(25歳)が、ちょっとしたことで落ち込むんです。管理職の私からすると、落ち込む必要はないと思うのですが。十分能力があるんだし、こちらも無理難題を要求しているつもりはないんですけれど。彼は理想が高すぎるのかな?理想が高いのは決して悪いことではないけれど、どうしたものでしょうか?」

これは、先日弊社が管理職研修を担当させていただいた際に、一人の受講者から相談された言葉です。詳しくお話をお聴きしたところ、直属の部下は、自分の能力を低くとらえがちで、自信をなかなか持てない。部下が落ち込んでしまっていることがわかっても、大きな失敗をしたわけでもないので、上司として何をどのようにフォローをすればよいものか・・・「頑張れ!自信を持て」と言葉でと叱咤激励しても効果があるとは思えないし、考えあぐねているとのことでした。

お話をお聴きして感じたのは、この部下は一所懸命に仕事に取り組む真面目な人柄のようですが、一方で自己肯定感がとても低いのではないかということです。そのため、彼が自分にもっと自信を持つためには、成功体験を積んでもらうことが大切なのではとのアドバイスをさせていただき、話を終えたのでした。

この成功体験に関して、先日のNHKの「チコちゃんに叱られる」で、「小学校の授業に逆上がりが採用されたのはなぜか」を取り上げていました。

そもそも鉄棒などの器械体操は1811年にドイツで生まれたもので、ドイツの教育者だったフリードリヒ・ルートヴィヒ・ヤーンがその生みの親だそうです。逆上がりは筋力をつけるということだけでなく、日々練習を続けることによりできるようになることが多いため、すぐには成功できない逆上がりという課題に対して成功体験を積ませることが目的だったのです。「どうすればよいのか?」と自ら考え、最終的に乗り越えることで力が養われる、頑張ればできるようになる、努力は報われるということを体験を持って感じてもらうということです。

これは、まさにエドワード・L・デシのモチベーション理論における「内発的動機づけ」に該当するのではないかと思うのです。

デシは、内発的動機づけをする理由の一つに有能感があるとしています。有能感とは「能力があると感じる」ことで、達成可能な目標を与え、それを達成したことによる満足感が有能感を生むのです。当然目標が高すぎると達成することができず、やる気も出てきません。逆に目標が低すぎると、達成は当然のこととなって有能感もあまり得られません。

この点から考えると、管理職が一人一人の部下に対して、頑張れば達成可能な目標(ストレッチ目標)を適切に与えることができれば、部下は努力することで成功体験を得ることができ、成長することができるというわけです。

しかし、このストレッチ目標は個々人の能力や状況によって異なるわけで、各々に合った目標を見つけることはそう簡単なことではありません。一人一人の能力をきちんと把握するためには、管理職として日常的に部下の仕事ぶりや言動を観察し続けることが必要だということです。

管理職の皆さんには、慌てず、焦らず、じっくりと部下を観察し、その上で適切なストレッチ目標を与え成功体験を積ませる、この繰り返しで少しずつ部下を育てていただきたいと思います。

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第1,115話 文章は長すぎたり細かすぎたりしては相手に伝わらない

2022年05月11日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「文章を書くのが苦手です」

これは、弊社が研修を担当させていただく際に受講者からかなりの頻度で聞く言葉です。研修中に行っていただく課題の中では、話し合いだけでなく文章で表現していただくこともあります。たとえば、議事録作成の練習をしていただいたり、ときには課題図書を読んでいただき、実務でどのように活用するかなどについて書いていただいたりすることもあります。そうしたときに、研修の内容やテーマとは別に、冒頭の「文章を書くのが苦手です」という感想をいただくことが多いのです。

では、なぜ文章を書くことが苦手だと感じる人がたくさんいるのでしょうか?理由は様々だとは思いますが、一つには文章を書くことに関して私たちがしっかり習ったり練習したりする機会が、実は少なかったからなのではないかと私は考えています。 

「読み書き算盤」という言葉がありますが、これは文字どおり文字や文章を読む、文章を書く、計算をすることです。これらは初等教育で獲得する基礎的な能力・学力ですが、読むや計算についてはは学ぶ機会は多いものの、それらに比べると書くことについて習ったり練習をしたりする機会(時間)は案外少なかったように記憶しています。こうしたこともあって、多くの人にとっては「書く」経験がさほど多くなく、その結果として文書の作成に苦手意識を持つことになってしまったのではないかと推測しています。

それでは今後、ビジネスパーソンとして最低限必要となる文章を的確に作成するためにはどうすればよいのでしょうか。こればかりは特効薬といった類のものではなく、地道に経験を積むことが近道なのだとは思いますが、苦手意識を持つ人が自ら積極的に経験をつむとするのは簡単ではないとは思います。

この「書く」に関して、先日NHKで放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の中で興味深いシーンがありました。

源頼朝に対して、源義仲を追い詰めている現況に関しての知らせが京都より続々と届いている場面で、以下の4名からの報告書に対して次のとおり頼朝が感想を述べていました。

土肥実平(目付け役):「あまり書きなれていないようで、とても読めたものではない」     

和田義盛(侍所別当):「絵入りでそれなりの工夫は見られるが、これも読めたものではない」

小四郎(北条義時):「中身は確か。しかし、内容が細かすぎて全く頭に入ってこない」

梶原景時:「戦の進み方や御家人の主な働きなど肝要なことのみ手短に記され、実に読みやすく見事な出来栄え」

あくまでドラマの中ですが、頼朝は梶原景時の報告書を評価していたわけです。私たちビジネスパーソンに求められる重要な役割の一つに報告書の作成がありますが、その際には頼朝の感想のように、報告書を書く時には長すぎたり細かすぎたりしては相手に伝わらないということをふまえ、短めの文章でポイントを押さえて書くことが大切だということです。これは鎌倉時代であっても現在でも変わらない、文章作成時のポイントです。そして、報告書に慣れてきたら徐々に自身の考えやメッセージなどを盛り込んだ文章を書いてみるという流れがおすすめです。まずは、短い文章からでよいので、「書く」経験を積むことをお勧めします。

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