中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,205話 ロールモデルはいますか?

2024年02月28日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「特にロールモデルはいないです」

これは、弊社が女性を対象にしたキャリア研修を担当させていただく際に、必ずと言っていいくらい聞くことが多い言葉です。

ロールモデルとは、「目指したいと考える、模範としたい人材」のことであり、お手本としたいと考えている人の具体的な行動から学んだり、その人が保有しているスキルを自らも獲得したりしようとすることです。

身近にロールモデルがいれば、その人から日々様々な刺激を受けることができるわけですから、そういうお手本となる存在がいる場合には、とても心強いと感じることができるのではないかと思います。しかし、私が研修でお会いする前述のような女性社員達は、女性管理職の絶対数が少ないなどの理由により、女性のロールモデルを探すことが難しいという現状をやむなく受け入れている人が多いように感じています。

それでは、若手の男性社員にはロールモデルとしている人がどれくらいいるのでしょうか?私は機会がある度に男性社員にこの質問をすることがあるのですが、答えは女性の場合と同様に、「ロールモデルはいません」という人が圧倒的に多いのです。女性の場合と比べ、はるかに管理職などの絶対数が多いであろう男性でも、ロールモデルに関しては同様の返答となるのです。

これらのことから考えると、そもそもロールモデルがいる人は男女とも限られており、ロールモデルがいるのならば幸いなことではあるものの、仮に現段階でそれがいないという人であっても、一概にそのことを悲観するようなものではないのではないかと思っています。

では、今ロールモデルがいないという人は、今後どのように動いていけばよいのでしょうか。これについては、ロールモデルを一人だけに限るのではなく、複数の人から良いところを学ぶという視点を持つことが、まずは重要だと私は考えています。全ての点を特定の人に求めてお手本にしようとすると、それにかなうような人はそうはいないという可能性もあります。逆にはじめからある程度の数の人を対象にして、それぞれの人の良いところをピックアップして、ロボット型のようなモデルとすることがお勧めです。また、ロールモデルは必ずしも同性でなければならないということではないですから、女性社員にとって男性社員も対象になりますし、その逆も然りです。

さらには、同じ組織内においてロールモデルが見つからないという場合には、組織外のネットワークを活用して他組織で活躍している人をロールモデルとすることも一つの方法なのではないでしょうか。

あくまで理想とするロールモデルを探し求め続けるというよりは、まずは身近な人に「見習いたい、お手本にしたい」という部分を見出すのです。その人の行動をしっかりと観察してポイントを把握し、簡単なことから実際に自分の行動に取り入れてみるということから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その場合には一連の行動の結果を振り返り、適宜改善していくPDCAの観点で取り組んでみることも大切なことだと思っています。

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第1,204話 「君付け」で後輩や部下を呼ぶ人の意識とは

2024年02月21日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「先輩社員から『〇〇君』と、「さん」付けではなく呼ばれることに抵抗があります。これはビジネスマナーのルール違反にはならないのでしょうか?」

これは、先日弊社が若手社員の研修を担当させていただいた際に、ビジネスマナーの振り返りをした中で、一人の受講者から尋ねられた質問です。ちなみにこの「君付け」、最近の学校では男女を問わず「さん」と呼ぶことが多くなっているようですが、一方で国会中継などを見ていると議員のことを呼ぶ際に「〇〇君」と言っています。そこでここではあくまで職場での呼び方について考えてみたいと思います。

さて、職場内では以前から他者のことを「〇〇さん」ではなく、「〇〇君」と君付けで呼ぶ人がいます。実際、私が会社員をしていたときにも、後輩社員を「〇〇君」と呼ぶ同僚がいましたし、現在も研修を担当させていただいている会社の担当者が、後輩社員を「〇〇君」と呼んでいるのを頻繁に耳にしています。

それでは「〇〇さん」でなく、敢えて「〇〇君」と呼ぶのには何か理由があるのでしょうか。以前から気になっていたことから、実際に職場で君付けをしている人に尋ねてみたことがあるのですが、一様に「親しみを込めて使っている」との返答でした。本人はあくまでポジティブな気持ちから使用しているようなのですが、一方では冒頭の質問をした受講者のように、君付けで呼ばれることに抵抗感を持っている人も少なからずいるのではないかと感じています。

いくら「親しみを込めて言っている」としても、目上の人に対してはさすがに君付けでは呼ばないはずです。そのように考えると、君付けをしている人は後輩社員に対して、無意識であったにしても「自分より目下の存在である」というような、何らかの意識が働いているのではないでしょうか。そのため、職場などで何かのきっかけで相手に対する言動が「上から目線」になったり、上から下への命令口調になったりしやすいということがあるのではないかと考えています。

これに関連して、先日(2024年2月17日)の朝日新聞の天声人語に、刑務所や拘置所などに収容されているすべての人について、今年4月から「名字+さん」でよばれることになるという記事が載っていました。かつては番号で呼ばれたという受刑者について、戦後は番号ではなく苗字を呼び捨てで呼ばれることが多くなったとのことでしたが、以前に起こった刑務官による受刑者への暴行事件等を受けた改革の一環として、呼び方を「さん」付けに変えるとのことでした。

ちなみに、「さん」は江戸時代に「様」から転じて使われるようになったということで、年齢や性別に左右されずに誰にでも使用できる呼び方とのことです。確かに「君」より「さん」のほうが語感も柔らかいように感じられ、使いやすいように思えます。

「たかが呼び方、されど呼び方」かもしれませんが、同時に朝日新聞の記事にもあったように、「呼び方」によっては様々な(上下の)関係のあり方が固定されてしまうというような面も持っているのではないでしょうか。これまでは、小さなこととしてあまり真剣に取り上げられることが少なかったテーマかもしれませんが、私は人の気持ちに大きく影響する大切な事柄なのではないかと考えています。

さて、あなたは職場でどのような呼び方を使っていますか?また、あなたの職場全体ではどうでしょうか?もし、呼び方が職場の人間関係などに何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられるのなら、一度皆で話し合って別の呼び方を試してみてはいかがでしょうか。

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第1,203話 外国人労働者からの「刺激」

2024年02月14日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「会社にいるインド人の社員はとても仕事ができる」、「部下の一人はベトナム人だ」など、近年外国人労働者の話を耳にすることが多くなったと感じます。私自身、この1か月間だけでも担当させていただいた企業の研修の受講者の中に、中国人と韓国人の社員が出席していました。

厚生労働省のデータによると、令和4年の外国人労働者数は182万人で、過去最高を更新したとのことです。この数字からも、外国人労働者の存在が身近になったと感じるのは当然のことと言えそうです。ちなみに、国籍別ではベトナムが最も多く46万人で全体の 25.4%。次いで中国 、フィリピンの順とのことです。

さて、この外国人労働者に関して、私が過去に担当させていただいた研修には、先述の中国人と韓国人以外にもインド人、アメリカ人、ブラジル人、インドネシア人、マレーシア人の社員が出席していましたが、いずれの方も実に前向きな姿勢で取り組んでおり、さすがその企業が採用しただけのことはあるなと思わせるような人ばかりでした。たとえば、ある中国人の若手の受講者は、私が受講者全員に対して質問を投げかけた際には真っ先に挙手し、所属している企業の理念や売上数字などを明確に答えてくれました。また韓国人の受講者は管理職として部下の育成に取り組んでいる様子や、評価の難しさを感じていることなどについて熱心に話してくれました。そして、彼らに共通している点として、単に日本語を話せるというだけでなく、きちんとした文章を書くこともできるということもあると思っています。

昨今、日本人の若手は主体性や外向性が低下している人が増えてきているのではないかと言われることが多いように感じていますが、そうした中で何事にも前向きに取り組んでいる彼らの姿勢は実に頼もしく、ある意味眩しいような存在だとも感じられます。同時にこのままの状態が続くと、やがては日本人社員の存在感がどんどん薄れていってしまうではないかという危機感すら覚えてしまいます。

既に日本では人口減少が始まり、それに伴い労働人口も減り始めています。そうすると、ますます頼りにしていかなければならないのが、先述のような技術や知識を持つ外国人労働者です。即戦力として活躍してくれる彼ら外国人労働者をいかに獲得し、しっかり育てていけるかが企業のこれからの成長の鍵を握っていることは間違いないように思えます。

このように外国人労働者がますます増えていく中では、我々も彼らの積極的な姿勢を真摯に学んでいく必要があります。同時に文化的背景の違う人たちと一緒に働くうえでは、それぞれの文化や習慣などをはじめコンテクストの違いをきちんと理解していないと、コミュニケーションをはじめ様々な問題が生じてしまいかねないことが懸念されます。

これまでもそれぞれの企業では様々に取り組んできていると思いますが、今後はますますその必要性・重要性が増していくことになりそうです。

我が国の企業や労働者を取り巻く環境は日々大きく変化し続けていますが、そうした中で外国人労働者達から様々な「刺激」を前向きに活かして、我々自身もさらに成長していくことの重要性を、彼らの姿勢から感じています。

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第1,202話 生き生きと働くシニア層になるためには

2024年02月07日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「昨年と同じものをやっていても面白くないから、新しいものを考えたい」

これは先日、ある組織に非正規雇用されている68歳の男性A氏から聞いた言葉です。私は今から30年程前に当時人事の研修担当の係長だったA氏と初めてお会いしたのですが、A氏は当時からとても前向きな姿勢で仕事に取り組む方であり、私も研修の打ち合わせをする中で随分とプラスの影響を受けたものでした。

A氏はその組織を定年退職後に、再雇用で65歳まで働いた後、現在は1年ごとの契約更新の非正規職員として勤めています。今回私がその組織で仕事をすることになったことを伝え聞いたとのことで、研修終了後にわざわざ訪ねてくださり、久しぶりに再会することができたのでした。A氏は当時と変わらずに颯爽と現れ、今の状況などについて色々と話してくださったのですが、そのときに話されたのが冒頭の言葉だったのです。そこからは、現在も当時と変わらずに積極的に生き生きと仕事に向き合っていることが伝わってきました。

さて、組織におけるシニア層の雇用や戦力化にかかる、様々な課題が顕在化するようになって久しいです。シニア層の割合は年々増え続けており、直近では全就業者の約7人に1人(総務省統計)にもなるようですが、多くの場合年収や待遇の低下により働く意欲を喪失する傾向が強いことが課題になっています。私がお会いするシニアの方からも「給与は現役時代の6割程度にもかかわらず、仕事の負担はあまり変わらないので、モチベーションが下がってしまっている」というような話を聞くことがたびたびあります。

こうした人が圧倒的に多い中で、A氏が今も「やる気」を維持している理由は何なのでしょうか。私は話をお聞きしている中で、A氏が新しいものを企画することを楽しんでいること、事業に参加した人の反応に高い関心を持っていること、何より飽くなき好奇心を持ち続けていることなどを強く感じました。その証拠に、A氏は今でも非常にフットワークが軽いのです。新しい企画の際には机上だけではなく、遠方であっても自腹を切って実際に現場に足を運んでその場所を見たり、様々な人から話を聞いたりするなどして進めていくのです。そしてその結果、新たな人と人との関係が繋がるなどにより、それがまた新たな企画につながるなどの好循環を生んでいるようです。

こうしたことを踏まえると、A氏がここまで仕事に前向きに取り組めている理由とは、内発的に動機づけされているからではないかと私は考えています。内発的動機づけとは、給与や名誉などのためではなく、その人にとっての達成感や充実感など内的な要因に基づくものによって自分の内部から湧き出る意思のことを言いますが、前述のA氏の様子はまさにそれそのものではないかと思えるのです。

もちろん、全てのシニア層がA氏のように簡単に内発的動機付けができるわけではないとは思います。しかしどうせ働くのであれば、以前の状況と比べて不満に思いながら働くのでなく、A氏のように自ら達成感を得られるように前向きな姿勢で取り組めたら、何より自身が幸せな気持ちで働くことができるのではないでしょうか。まずは何か一つでいいので楽しみながらはじめてみていただければと、A氏の生き生きとした表情を見ていて感じたのでした。

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