中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第897話 テレワークではっきりする生産性

2020年03月29日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

先日、ある会社の社長さんがテレワークについてこう言っていました。「このご時世だから、うちも仕方なくテレワークに切り替えたんだけど、ダメですね。」私が、どうしてですか?と尋ねると「テレワークって在宅勤務でしょ?家にいたらサボるに決まっているじゃないですか。」そう答えました。

続けて「うちの社員はオフィスにいてもだらだら仕事している奴が多い。そんな連中が家で仕事?どうせ途中でネットやテレビを見はじめて、疲れたと言っちゃあ横になって、そのうち眠くなって気が付けば夜になってますよ。もう、目に見えるようですよ。」と言うのでした。

私は「なるほど。確かにその可能性はありますね。で、生産性はどうなのですか?」と聞きました。

社長さんはポカンとして「はあ?サボっていれば低くなるのは当たり前でしょ。」と言いました。

「では言い方を変えます。生産性が低いというからには、生産性を具体的に測定できるということですね?」
「そりゃあ、仕事をこなす量とか出来栄えとかでわかりますよ。」
「テレワーク以前の職場でその生産性を測定していたのですか?」
「いや、測定はしてないです。でも比べればわかるはずです。」
「ということは、テレワークに移行しても量や出来栄えが変わらなければ生産性は低下していない、ということですね?」
「・・・まあ、理屈はそうですけど・・・」

ここで私は労働生産性の定義と具体的な測定(推定)方法について社長さんに説明しました。そして次のように言いました。

「在宅勤務で社員がネットサーフィンしていようが寝ていようがまったく関係ありません。はっきり言えば、家で好き勝手にしていて良いのです。測定可能な成果物を納期通りにアウトプットできれば良いし、少しでもそれが増加するなら生産性は向上したことになります。」

すると社長さんは顔を曇らせて「それじゃまるで社員は機械と同じじゃないですか。お互いにコミュニケーションをとることでチームワークを発揮して生産性が上がるのじゃないですか?」と言いました。

「先ほど社長さんは”うちの社員はオフィスにいてもだらだら仕事している奴が多い”とおっしゃいました。職場にいてもチームワークを発揮できずだらだらと仕事をしてるのですから、もともと生産性は低いのです。テレワークは良い機会ですので、先ほど説明した測定可能な具体的成果物を社員に課してください。それと同時に、家で何をしていようが自由だと伝えてください。」

「成果物のノルマですか・・・社員にとっては厳しい対応になりますね。」

「そうです。ただ、社員が機械と同じになると思われたようですが、それは違います。単なる成果主義です。達成目標を明確にし、達成できない場合は格下げや昇給をストップすることを宣言してください。テレワークとは個人の業績が厳しく問われる働き方なのです。そして、もうひとつ大きなメリットがあります。」

「メリットですか?」

「またオフィスで仕事をする日が来れば、以前よりもチームワークが良くなり、生産性も大きく改善していることは間違いありません。もちろんテレワークの方が良いという社員も何割かは出るはずです。」

「なるほど。厳しいけど、当社の生産性を改善する絶好のチャンスかもしれません。」

皆さんの会社もテレワーク導入の機会を利用して、社員の生産性に関する意識を変えてみてはいかがでしょうか。

実は、経営者自身の意識を変えることが第一の目的なのですが。

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第896話 「お察し文化」はコミュニケーションを阻害する

2020年03月25日 | 仕事

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「大丈夫だとは思うのですが、万が一弊社の社員に感染してしまったら困りますの

で・・・。申し訳ないのですが・・・、そこのところをご理解いただいて。・・・」

これは先日、私の知り合いが打合せを予定していた相手方の企業の担当者から受けた電話でのやりとりです。

現在、多くの企業では新型コロナウイルス感染防止のために様々な取り組みをしていますが、その一つに社外からの訪問を見合わせているところがあります。

そうした中で、先方から打ち合わせの予定を変更してほしいという連絡をしてきたのですが、それをはっきり伝えることがためらわれたようです。遠回しな表現を繰り返されたとのことです。

もちろん、知り合いは前後の文脈から「今回の訪問を遠慮してほしい」と言いたいのだということはすぐに理解できたそうです。

しかし、敢えて「感染が心配ということですね。それではどうすればいいのでしょうか?」と質問してみたそうです。それを受けてようやく先方は「訪問をご遠慮いただきたい」という言葉を発したとのことでした。

たったこれだけのことを伝えるのに、先方は随分と回りくどい伝え方をしたわけですが、あなたはこのような言い方を他者からされたり、自身がしてしまったりという経験はありませんか?

自分の伝えたいことをはっきり言わずに「相手に察してほしい」というコミュニケーションでは、直接的な表現を避けることで摩擦を回避したいという考えです。そこで敢えて婉曲的な表現をしているわけです。

これは、一見相手をおもんぱかるような姿勢のようにも思えますが、暗黙のうちに「No」を伝えていることにもなります。

つまりこれはまさに「コンテクストに頼っているコミュニケーション」と言えます。コンテクストとは、文化や価値観、習慣などと訳されますが、日本人の中にはこの「コンテクストに頼ったコミュニケーション」が基本になっている人もいるではないでしょうか。

「言わなくてもわかるでしょう?」という暗黙の了解を求めるコミュニケーションは、言っている本人は相手に配慮しているつもりかもしれませんが、結果的に相手に察することを強要していることになります。同時に言いたいことをこちらから主体的に伝えるのではなく相手任せにするわけですから、受け身のコミュニケーションとも言えるでしょう。

そして、言われた方はたとえ同じ会社や身近な人であっても、必ずしも同じ文化や価値観、習慣を共有しているとは限りません。ましてや社外の人であれば、文化や価値観が異なることは当たり前です。よって「察する」ことができないこともあるでしょう。これでは、正確なコミュニケーションのやりとりはできません。

同時に、こうしたコミュニケーションは時に誤解を生んでしまう可能性もあります。効率という観点からも大いに問題であり、仕事の生産性を向上させるどころか、逆に阻害してしまうことにもなります。

まずは、仕事の生産性を上げるためにも「文化や価値観、習慣はでそれぞれで異なるものだ」ということを念頭おくことが大切です。続けて含みを持たせずダイレクトに具体的に伝えることを意識し、実行することから始めてみてはいかがでしょうか。

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第895話 コンコルド効果を知っていますか?

2020年03月22日 | 研修

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コンコルドという超音速旅客機をご存じの方も多いと思います。イギリスとフランスが巨額の投資と長い時間を費やして完成したコンコルドは、1976年に就航し、マッハ2超というジェット戦闘機の最大速度並みの速さでロンドン・ニューヨーク間を3.5時間で飛行していました。しかし、コンコルドは2003年に営業飛行を終了し、今は飛んでいません。

そんな素晴らしい飛行機なのになぜなくなってしまったのでしょう。

飛行場に非常に長い滑走路が必要
超音速飛行時に発生する大音響
機体価格、維持費用が非常に高額

さらに、2000年に起きた墜落事故の影響も大きかったようです。墜落事故の原因は、コンコルドの前に離陸した旅客機が落とした部品をコンコルドの前輪が跳ね上げ、翼の燃料タンクに穴を開けたことでした。ツイてないとしか言いようがありません。

現在、コンコルドは「ありがたくない」言葉の代名詞として使われています。「コンコルド効果」というその言葉の意味は「すでに投資してしまったお金や労力、時間が無駄になるのが惜しいという理由で、この先損失が増えることが分かっているのに止められない」状態を指します。

経理やファイナンスの世界ではおなじみの埋没費用(サンクコスト:sunk costs)と同じ意味です。埋没費用とはすでにかかってしまった費用のうち、回収できないもののことです。

ひとつ例を挙げてみましょう。X社に、ある新製品の開発プロジェクトがあったとします。研究開発に5億円、量産試作プラントに5億円、計10億円がすでにかかっているとします。

いよいよ量産に入ろうとした矢先、ライバルのY社が同等以上の性能を持つ新製品を、X社の販売予定価格よりも安い値段で発売してしまいました。このままではX社の新製品はY社よりも安い値段を付けざるを得ず、どう考えても売れば売るほど赤字がかさむことがはっきりしています。

もし、あなたがX社の社長ならどうしますか?

お分かりかと思いますが、新製品の発売を中止し10億円は損切りをするのが正解です。

このまま発売すれば10億円にさらに赤字が積み重なっていきます。つまり、開発や試作に費やした10億円は回収することができない、沈んでしまった(sunk)コスト、埋没費用です。

コンコルドも250機売れれば採算が取れる目論見でしたが、どう考えても無理なことがわかっていました。それでもプロジェクトは止められず実際に就航したのでした。作られたのはわずか16機でした。

現在のように、社会も経済も先が見えない時期こそ会社の中のプロジェクトを見直し、もしも「コンコルド的なもの」があれば思い切って埋没費用としてしまうことをお勧めします。そして騒動が去ったときに備えて、今のうちにすべての仕事を見直し人材を育てておきましょう。

さて、コンコルド効果を生んでしまったのはイギリスとフランスの「国家の威信」でした。

私の個人的な感想になりますが、2020年の東京オリンピックはすでにコンコルドです。残念ながら。

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第894話 議事録はムダな仕事ではない

2020年03月18日 | 研修

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この度、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う事態が公文書管理ガイドラインで定める「歴史的緊急事態」に指定され、関連会議の議事録作成が義務付けられました。これは東日本大震災の時に、当時の政権が意思決定過程を記録していなかった反省から決定されたとのことです。

さて、この議事録ですが、あなたの会社での取り扱いはどのようになっているでしょうか?

弊社が担当させていただく企業研修においても、議事録の書き方を練習する機会を設けることがありますが、実は議事録を適切に作成することは簡単なことではないのです。

そのため、新入社員であればたとえ研修を受けたからと言って、すぐに完璧なものを作成できるわけではありません。そこで何度も「書く」経験を積むことで、作成技術だけでなく仕事の前後関係を理解できたり、組織全体を俯瞰したりする視点を持てるなどのメリットもあります。

しかし、議事録の書き方を正式に習ったり作成する機会がないまま中堅社員になってしまったりすると、議事録の作成を敷居が高く感じたり、かなり時間を取られてしまう人もいるようです。このため、会議後に議事録を作成することをきちんとしたルールにしている企業は、意外と限られていると感じます。

また、近年、多くの企業で働き方改革が進められていますが、この改革の一環として議事録の作成を廃止してしまう企業もあるようです。

先日、ある大手企業の経営者の講演を聞く機会がありましたが、年間労働時間の削減のために全社で議事録を廃止し、代わりにホワイトボードに板書したものを共有することにしたとのことでした。

確かに労働時間を削減するためには、ムダを徹底的に排除することが必要になりますが、私は板書したものを共有したとしても、それを議事録の代わりとするには十分ではないと考えています。

ここで、議事録がなぜ大切なのかを考えるために、改めて議事録を作成する目的を考えてみましょう。

議事録は、議論の経緯(決定事項、未決事項、保留事項)を明確にし、後で関係者の曖昧な記憶で混乱を引き起こすことがないようにするためのものです。

具体的に記載することによって、誰が、何を、いつまでにしなければならないかが明確になり、次の行動につながるとともに、責任の所在も明らかになります。

そして、会議で決まったことを出席者や欠席者、その他の関係者に徹底することによって、情報を共有することができるわけです。

では、なぜ板書では議事録の代わりにはならないのでしょうか。板書では記入スペースに限りがあるために、どうしても箇条書きにならざるを得ません。行間の言葉が不足してしまったりすることによって、個々が自分の都合の良いように解釈してしまうことが起こりえます。

反対に考えると、議事録がなければ、会議で決定された事柄であっても誰も手を付けず先延ばしにしてしまったり、「上の人がやるだろう」というように責任放棄をしてしまったりすることにもなりえます。

冒頭の「歴史的緊急事態」の時であっても、その対応が議事録に記してあれば、それは後世の人たちへの貴重な情報の財産になります。

議事録は「今、ここ」で使うだけのものではなく、未来においても大切な意味を持つものですから、作成の労を惜しんではいけないということです。

働き方改革の推進に当たり、ムダを排除することはもちろん重要なことです。しかし何がムダであるかをきちんと見極め、くれぐれも議事録のように大切なものを排除することのないようにご注意いただきたいと考えています。

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第893話 不安が感染しても、入社式は大事

2020年03月15日 | 研修

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新型コロナウイルス騒動(あえて”騒動”としておきます)のため、4月の入社式や新入社員に対する集合研修を中止する企業が増えています。すでに当社のクライアントも、ほとんどが中止を決めています。

とりわけトヨタ自動車やJR東海が入社式の中止を決定したことは、多くの企業に影響を与えました。

「トヨタが中止したのだから、当然うちも中止だ」という話を聞きました。ウイルス自体よりも「ウイルスによる不安」の感染力は強いようです。

こうした不安は、日本中の会社の入社式とそれに続く新入社員研修の中止というかたちで「感染」しています。

私は、入社式と研修を集合形式で実施しないことで、新入社員のモチベーション低下することを懸念しています。

入社式および新入社員研修はわずか2~3日、いや、たとえ1日であっても、とても重要な意味を持ちます。学生時代のようにお金を払ってサービスを受ける「お客様」から、労力を提供してお金を得る立場に変わるという、とても大きな人生の転換点なのです。

ですから「入社式」は大事な「儀式」です。以下は「儀式は何の役に立つか※」という本からの引用ですが・・・

情報を共有することと、人々が共通の知識をもつことはまったく別のことである。「人々がある事実を知る」だけでは、不十分であり、「『人々がその事実を知っている 』ということを皆が知っている」ことが重要なのだ。

入社式を行わず「こういう人たちが入社しました」という情報を文書やネットで社員に知らせても、会社にとって大切な「共通の知識」になるとは限らないというのです。

ちょっとややこしいですが、入社式によって新入社員が「自分は新入社員である」という自覚を持つこと、そして、経営者以下全社員がその様子を目の当たりにすることによってはじめて「共通の知識」が生まれるというわけです。

もちろん、入社式を実施しなかった年の社員が、他の年の社員よりも劣るかどうかはわかりませんし、実証もできません。

とはいえ、「入社式から新入社員の集合研修」はあたかも漢方薬のように、長い時間をかけて企業文化を形作っていきます。もし今年をきっかけに、これから先もずっと入社式をしなくなれば、おそらく徐々に何らかのマイナスの影響が企業文化に現れてくることでしょう。

ぜひ、社内のネット環境を使ってでも社員全員がリアルタイムで参加する(なんらかの形で同時刻に関わりを持つ)入社式を実施してみてください。

 

※「儀式は何の役に立つか―ゲーム理論のレッスン 」(マイケル・S‐Y. チウェ  (著) 安田 雪 (翻訳)、新曜社、2003年)

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第892話 育成をしないことの付けは数年後にやってくる

2020年03月11日 | 研修

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「今年は入社式も新入社員研修も取りやめになりました」

これはこの2週間ほどの間に、様々な企業の研修担当者からお聞きした言葉です。

新型コロナウィルスの影響により、弊社でも2月最終週の後半から研修やセミナーの中止や延期の連絡が続々と入り始め、4月末までに依頼をされていた研修やセミナーの実に9割がなくなってしまっています。

こうした中で最近特に気になっているのは、今後、研修やセミナーなどの人材育成の必要性自体が問われることにならないかということです。

冒頭の企業のように、新入社員研修を中止にするとの連絡をくださった研修担当者には今後の対応を伺っています。そうするとほとんどの企業は4月1日の入社後は即各部署に配属し、その後は先輩社員によってOJTを行うとのことです。

こちらから「では、感染が一段落したら新入社員研修は実施されるのですか?」とお聞きすると、答えも各社ほぼ同様です。「未定です。しかし、たぶん今年はやらないことになるでしょう。初夏のころは忙しいですし。そもそも初夏に今の状況が終息しているかわかりませんからね。その代わりに、秋くらいにフォロー研修をやることを検討しようと考えています」とのことです。

現在、日本を含む世界が過去に経験したことのないような事態に直面しているわけですから、上記のような対応はいたし方ないことだとは思います。

しかし同時に心配に思うのは、人材育成に関する来年以降の対応です。

現在は新入社員研修のみならず、他の階層の研修も延期や中止になっているのですが、そのような一旦止めてしまった人材育成を再開することができるのかということです。

研修やセミナーなどによる人材の育成は、必ずしも即効性を望めるものではありません。新入社員研修を例にあげるならば、今年研修を受講せずに配属された新入社員と、過去の研修を受けた先輩社員との差が歴然としていればよいのですが、短期間では必ずしもそれが明確に現れるとは限らないです。

薬で言えば、漢方薬のようにじわりじわりと効いてくるもので、効果が現れるにはそれなりの時間が必要です。しかし、一定程度のスパンで見れば成長には必ず差がつくものです。

残念ながら、今回の新型コロナウィルスの問題は中小企業はもちろんのこと、大企業であっても売り上げや利益に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

そして、こうした先が見通せない状況の中では、ある程度費用も時間もかかる人材育成は真っ先に節減項目に挙げられ、短期的な判断で後回しという結論になることとには、やむを得ない面もあります。

しかし、きちんとした人材育成を行わないことによる「付け」が回ってくるのは今ではなく数年後であり、程度の差はあれ、それは必ず現れるものなのです。

はたしてその時にどうなっているかを踏まえ、どうか拙速に答えをだすことのようにしていただきたいと切に願っています。

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第891話 121位はとても恥ずかしい!

2020年03月08日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

3月8日は国際女性の日(International Women's Day)でした。すでにご存知のことと思いますが、世界経済フォーラムによる2019年の「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等の度合いのランキング)」では、調査対象の153カ国の中で日本は121位と過去最低、先進7カ国では最下位、中国や韓国よりもランキングが下でした。

「女性の活躍の推進」を掲げる日本政府としては大変恥ずかしい結果だったと言えます。

特に、女性役員を含む女性管理職の比率を「2020年に30%」に伸ばすとした女性活躍推進法(2015年施行)の目標は達成は絶望的で、2019年で平均 7.7%という有様です。

さて、企業では達成すべき目標がある場合、一般的に「数値目標」を掲げます。営業部門ならば全体の目標売上金額があり、営業担当者1人1人に割り当てられます(ノルマというやつです)。

では、女性管理職の比率について、罰則規定を伴った達成目標(すなわちノルマ)を義務化するべきでしょうか(現在は罰則規定はなく、数値目標も各企業や自治体に委ねています)。

この法律の罰則規定については様々な議論があり、多くの有識者が様々な見解を述べているので、ここではあえて触れません。ただ、「拘束力のある数値がない限り目標は達成されない」と言いたいのです。

まず、会社で「女性管理職比率」を設定してはいかがでしょうか。いえ、「目標」ではなく実際の比率をそうするのです。現在が0なら10%以上、10%程度なら20%以上を、とりあえずは「問答無用」で実行してみましょう。

「いや、急にそんなことをしたら混乱が起こる」という意見もあることでしょう。しかし、やってみないとわからないことをやらずに議論しても始まりません。

「管理職はそんなに簡単にできるものではない」とおっしゃるなら、今の管理職の方々は相当高いスキルをお持ちということになります。ならばそのスキルと知識を使って「やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、ほめて」育ててください。

そして、もし上手く行かなかったとしたら、何が問題だったのかを明らかにし、対策を考えましょう。

さすがに世界121位というのは、「日本は日本、他の国とは違う」と居直るにはあまりにも無残な数字です。

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第890話 異動をチャンスに

2020年03月04日 | コンサルティング

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「新型コロナウイルスの感染防止のために、今春の異動は最小限にする予定です」

これは先日、ある企業の人事担当者からお聞きした言葉です。新型コロナウイルスの影響が日に日に大きくなりつつありますが、ついに4月の人事異動にまで影響が出始めているようです。

確かに、既に多くの企業で在宅勤務・時差出勤・出張の禁止・外部会議への参加自粛や、社外からの訪問をお断りするなど、様々な対応が行われています。

日々これまで経験したことのない事態になってきていることへの心理的不安も加わり、多くの企業では様々な形で仕事の効率が低下したりしています。さらに一部の企業では客足が途絶えるなど存続にかかわる影響が出てきているところもあり、経済全体に深刻な影響を及ぼしています。

こうした状況の中、年度替わりの人事異動や転勤をどうするかが、企業にとって大きな問題になっています。4月は1年の中でも最も異動が多いタイミングですが、「人が動く」ことによる感染リスクが高まること以外にも、異動直後は各々が慣れない仕事を担当することになるため、一時的に仕事の生産性は落ちてしまいます。

したがって、二重の生産性の低下を招かないためにも今回の異動は最小限に抑え、感染の終息後に本格的な異動を行うという考えの企業も出てきているようです。

さて、異動に関して近年では特に転居を伴う異動が問題視されるケースが増えてきています。異動には人材の育成、ノウハウの伝授、社内の活性化、不正の防止などのメリットがあります。一方、個人にとってはキャリアの断絶や、転居を伴う場合にはライフプランを築きにくいなどのデメリットがあります。

しかし、逆に異動をさせないことのデメリットも多々あるのです。人員が固定されることにより、同じ会社であっても支社や工場ならではの独自の文化が構築されてしまったりします。その結果、全体での情報の共有が難しくなったり人材の育成が滞ったりなどによって、組織に大きなダメージを与えてしまうのです。

これらのことから考えると、異動は良きにつけ悪しきにつけ企業の成長にも大きな影響を及ぼす一大イベントとも言えるわけです。

そういう大きなイベントだからこそ、現在のような時期には実施を差し控えるというのは、もちろん一つの大切な選択だと思います。

しかし、感染はいずれ終息します。(してくれなければ本当に困ります。)

であれば、今回のことをある意味でのピンチを逆に活かすことを考えてはいかがでしょうか。たとえば、事態が落ち着いた際に異動はどうするのかという今後の展望を今のタイミングできちんと社員に説明しておくことが大切です。

同時に、この機会に異動のルールを改めて社員に示したり、個人の希望を聞く機会も設けたりすることもいいのではないでしょうか。

過去にないほどのこの緊急事態を乗り越えるため、イレギュラーな対応をとることはやむを得ないことです。しかし、このピンチをチャンスにするために、今このタイミングでしておくべきことをきちんとしておくことがなにより大切だと考えています。

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第889話 その相談は演武か実戦か

2020年03月01日 | 研修

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ある大手企業の管理職研修が終了し、片づけをしているときに受講者の一人から相談を受けました。「私は営業部のマネージャーなのですが、部下のモチベーションがまったく上がらないのです。今回の研修で教えていただいたことはほとんど実践しているので、もう打つ手がありません。とても困っています。なにか良い方法はないものでしょうか。」

実は、研修講師をやっていると、こうした質問を受けることは少なくありません。若い頃(と言っても40代ですが)の私は、「やれやれまたか・・・」と思いながら「少しでも結果を出せるよう地道に努力を続けるしかありませんね」と答えていました。

しかし、今はこう答えています。

「なるほど。では、部下の方は具体的にどんな様子なのでしょうか?」すると「そうですね。私が言ったことをやろうとしないのです。誰でもできるようなことなのに。」

「ああ、それは大変ですね。ではこうしたらどうでしょう」、すると「ああ、それは何度かやったのですが上手く行きませんでした。」そして

「ご苦労が絶えませんね。他にはどんな困ったことがありますか?」・・・以下、時間の許す限りこんなやり取りを続けます。とは言っても、長くてもせいぜい5分くらいですが。

もうお分かりいただけたと思いますが、これは一種のカウンセリングです。

なぜこのようなやり取りをするかと言えば、相談する人は問題を解決してもらおうなどとハナから思っていないからです。しかも厄介なことに、相談者自身がそのことに気づいていないのです。

いや、正直に「本当は解決してもらおうなんて思っていないでしょう?」などと言おうものなら怒り出してしまいます。その結果、研修後のアンケートに悪口でも書かれてしまったら、商売あがったりです。

しっかりとお話をお聴きして、「困りましたねえ」、「大変ですねえ」、「そこまで行くと、私もお手あげです」とお答えするのが良いのです。相談者ご本人が解決できないことを一番よくご存じなのですから。

誤解しないでいただきたいのですが、これはけっして相談者をあしらったり、おちょくったりしているのではありません。

このやり取りは武道で言う「組手演武」のようなものです。流れるような会話が決まると相談者は満足して帰ります。

しかし、相談者が本当に困っていて真剣に解決を望んでいるときは、私も真剣に考えてお答えします。そのときは実戦です。

演武と実戦を見分けるのは簡単で、最初の一問一答でわかります。長年研修講師をやってきたおかげです。

言うまでもなく、真剣なご相談にお答えするのは簡単ではありません。いちど会社にお邪魔して詳細なお話をお聞かせいただき、解決のための概略プログラムと見積書をお出しいたします。そこから何回かの訪問とご相談を繰り返すことで、ようやく問題解決の糸口が見えてきます。

もちろん、それだけの時間とコストに見合う成果は必ず手に入ります。

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