中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

ドラッカーは営業が嫌い?

2017年01月29日 | コンサルティング

「販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。何らかの販売は必要である。だが、マーケティングの理想は販売を不要にすることである。」これは経営学の神様、P.F.ドラッカーの言葉です(「断絶の時代―いま起こっていることの本質」より)。

ドラッカーは「作った物をいかに売るか」が営業であり、「買いたくなる商品をいかに提供するか」がマーケティングであると言っています。営業は「商品」ありきだが、マーケティングは顧客視点、すなわち「顧客が買いたくなる仕組みをつくること」が目的であるというわけです。

もちろん、営業という行為(機能)が全く不必要だと言っているのではありませんが、素直に解釈すれば「営業不要論」であるといえます。

私はどちらかといえば、ドラッカーの「簡単なことを難しく言う」姿勢が好きではありません。高尚ではありますが全く具体例に欠け、時に意味不明ですらあります。

成功した経営者が、自分のやってきた極めて泥臭い仕事の歴史を振り返えるとき、「ドラッカーメガネ」をかけると綺麗で上品に見えるような感じがするのでしょう。「自分のやったことは経営学の理にかなっている。よかった!」と安心できるのです。だから、経営者には人気があります。

私の知り合いの中小企業の社長には、大のドラッカー好きが多いのですが、中には徹底的に嫌いという人もいます。その最大の理由に「マーケティングの理想は販売を不要にすること」を挙げています。

あるアンチ・ドラッカー社長は、「マーケティングは営業に従う」と常に言っています。また「戦略は営業に従う」とも言っていますから、要は欧米流経営学が嫌いなのでしょう。

さて、私自身はドラッカーの本は先に述べたように好きではありません。しかし、ドラッカーの残した言葉には大変すばらしいものがたくさんあります。

「強みの上に築け(Build on strength)」という言葉は、中でもひときわ光っていると思います。

矛盾しているかも知れませんが、強みを究極まで高めると、むしろ強みが目立なくなってくるのかもしれません。営業力が強みの会社が、営業力を突き詰める過程でどんどん顧客志向になり、最終的には(ドラッカーが言うところの)マーケティング力を持つに至るような気がします。

ドラッカーはマーケティングはセリング(営業)とは真逆の行為だと言っていますが、ぐるりと回って同じ輪になっているような気がします。

ドラッカーは単に「営業マン」が嫌いだっただけなのではないでしょうか。

もしかすると、しつこい営業マンに高い中古車でも売りつけられたことがあったのかもしれませんね。

(人材育成社)

 

 


あなたの会社に希望は「あります」か?

2017年01月25日 | コンサルティング

ゆとり世代(1987年生まれ~)を部下に持つ営業部門の管理職の方々と話しをすると、必ずと言って良いほど耳にするのが「あいつらは営業力がない」という言葉です。では、営業力ってなんですか?と聞くとこれもまたほぼ判で押したように「行動力」と答えます。

ある調査※によれば、上司から見たゆとり世代の能力については「行動力」「積極性」が低いという評価が多数を占めています。一方、当の上司の自己評価は「行動力」「積極性」には自信があるという答えが圧倒的でした。

現在の上司(50代以上)が若手だった頃は、現在のようにインターネットは発達していませんでした。営業活動は電話が中心でしたが、個人情報保護法も無く、コンプライアンスという概念も普及していませんでした。企業の代表電話番号は公開されており、そこに電話をして買ってくれそうな部署名を言って頼めばなんとか繋いでもらえました。

電話がダメでも、会社の受付には総務部の正社員(!)である受付嬢(!)がいて、通い詰めるうちに顔見知りになり、担当者に取り次いでもらえたなどということもありました。

言うまでも無く現在はいずれもほぼ絶望的な営業ルートとなっています。

「そこを行動力と積極性で補うのが若手の営業がやることだろう!うちのゆとり連中はそれができないんだ。ホントにダメなんだよなあ~」とおっしゃる方も大変多いのですが、あまりムリをさせ過ぎると部下を「鬱」か「犯罪者」にしてしまいます。

当社は営業部門へのコンサルティングも行なっています。その時に「どうやれば若手営業担当が短期間で顧客を開拓できるのか具体的に指導してほしい。できれば1、2回のレクチャーで」と言われることがあります。さすがに最近は少なくなりましたが「求む!魔法使い!」というクライアントです。

営業部門の改善は、まさに企業の文化に関わるものです。企業の文化、もっと端折って言えば「社風」を変えない限り営業の業績が飛躍的に伸びることはありません。

今までに見てきた中で、成功からほど遠い企業に共通するものは「上司が部下を否定してかかる」社風です。そういう会社には、夢も希望もありません。

上司である幹部社員が住んでいるのは過去です。過去はすでに築き上げた実績や数字という頑丈な素材でできた建物です。一方、ゆとり世代はこれから家を建てなければなりません。

今の上司が若手社員だった頃は、今よりももっと厳しく育てられてきたと思います。しかし、どんなにひどい目にあってもまだ「希望」がありました。日本の企業は今よりもおおらかで、世界の経済もグルーバル化を目指していました。良い製品、良いサービスなら国境を越えて売れる、世界を相手に商売だってできる、そういう時代でした。

今はどうでしょう。「希望」はえらくしぼんでいるように見えます。

「希望」を実現するのはゆとり世代自身の仕事ですが、「希望」が「ある」ことを示すのは上司、経営者の責任です。あなたが経営者なら、あなたの会社の「希望」について堂々とゆとり世代に語ってあげてください。それができなければ社員は育たず、会社も衰退していきます。

あなたの会社には「希望」がありますか?

(人材育成社)

世代とともに変化する営業スタイルに関する調査(管理職や部下を持つ社員対象)


58回目

2017年01月22日 | コンサルティング

弊社の事務所のホワイトボードの隅に「58回目」と書いてあります。

これ、一体何の数字だと思われますか?   

昨年7月に放送された「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」という番組の中で、1人のフルート奏者が取り上げられました。

その人の名前は、川崎梨紗さん。現在、ヨーロッパのエストニアで、国立歌劇場の首席フルート奏者を務めています。

今から15年前、「笑ってコラえて!」は女子高生の旅で、松山市内の中学校に通っていた川崎さんを取材していたのですが、当時、彼女は「フルーティストを目指している。世界に羽ばたきたい!」と語っていました。この川崎さん、中学生時代にはアンサンブルコンクール金賞、全国吹奏楽コンクールで銀賞をとるなど素晴らしい経歴を持っていて、取材の2年後、見事現役で東京藝術大学に合格しました。

番組の中で、スタッフはエストニアに飛び、彼女と再会。今では中学の時の夢を実現し、オーケストラで華々しくフルートを吹く彼女ですが、実はこれまでの15年間、波乱万丈の道のりだったことが本人の口から語られました。

東京藝大に入学後も、コンクールの遠征や生活費のために、アルバイトと奨学金でやりくりしたこと。卒業後はドイツに渡りプロとなったものの、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などをはじめとするオーケストラのオーディションを受けるも50回以上落ち続け、その間5年の歳月が流れたこと。

そして、ついに「58回目」のオーディションでエストニア国立歌劇場の首席フルート合格。ここでようやく大学時代の奨学金を返せるようになったということでした。

そうです、冒頭の58回目はこの数字のことだったのです。

たまたまこの番組を見ていた私ですが、50回もオーディションに落ちながら、58回目でついに願いをかなえた彼女を心から賞賛する気持ちになりました。その間「もう駄目だ」「自分には無理だったんだ」と自信を失ったり、夢を諦めようとしたりしたことが、おそらくは何度もあったはずです。

それでも、夢を諦めずに、ついには自分の力で今のポジションを得た彼女を見ていて、あらためて「諦めないこと」「続けること」の大切さを思いました。

「諦めなければ必ず夢はかなう」とまでは言えないかもしれませんが、少なくとも途中で諦めてしまったら、その時点で夢はかなわなくなってしまうわけです。今は苦しくとも続けることが大切ということです。

同時に、諦めないためには強いモチベーションを保ち続けることが必要です。どのように自分を信じ続け、励まし続けられたのか」、川崎さんご本人に聞いてみたいものです。

ところで、この「諦めない気持ち、継続することの大切さ」は、ビジネスの世界においても共通する価値観でしょう。

企業はそれぞれ理念や目標を持っていますし、それに基づき個々の社員も目標を持っています。その達成のために、トップから社員一人一人まで日々頑張っているわけです。

しかし、ますます競争が厳しくなるビジネス環境の下では、それをかなえることは決して簡単ではないと思いますが、これも諦めてしまったらその時点で達成はできません。

人材育成の場においても諦めない、継続することの大切さをきちんと伝えることは大切です。このことを伝え続けるためにも、弊社のホワイトボードには今後も「58回目」を記しておくつもりです。

さて、本日「稀勢の里」が悲願の初優勝を果たしました。新入幕から73場所かかっての初優勝です。腐らず、諦めずに続けた結果つかんだ勝利に対して、心からの「おめでとう」を送ります。

(人材育成社)


外国人労働者の人材育成とは

2017年01月18日 | コンサルティング

私 「失礼ですが、念のためお名前を教えていただけますか?」

店員「○○です」

私 「はい?」

店員「○○です」

私 「? お名前が良く聞き取れないのですが、もしかして外国の方ですか?」

店員 「はい、私はロシア人で○○という名前です」

これは、先日フランスの雑貨を取り扱う店に電話したときの、店員と私のやりとりです。

以前、この店を訪れたときには、中国人と思われる女性が対応してくれたのを思い出し、フランスの雑貨を扱う店とはいえ、数年前までは全店員が日本人だったのに、この2~3年でずいぶん変わったものだと思いました。

それから数日たって、再びこの店を訪れる機会がありましたが、今度は対応してくれた店員は白人の女性でした。

私  「先日の電話に出てくれたロシアの方というのは、あなたでしたか?日本語が随分お上手ですね」

店員 「私ではありません。私はフランス人です」

私  「このお店には先日は中国人の方がいたし、電話に出てくれたのはロシア人の方だし、今日はフランス人。こちらは、フランスのものを扱っているのだからフランスの方がいるのは不思議ではないけれど、それにしても国際色豊かですね」

店員 「国際色?」

私 「international ですね」

店員 「あっ、そうです。国際色豊かなんです」

厚生労働省の「外国人労働者の雇用状況の届け出状況」(平成27年10月末現在)によると、外国人労働者数は91万人だそうです。国別では、中国人が3分の1の約30万人、それにベトナム、フィリピンと続き、それぞれ10万人ずつほどです。ちなみに、アメリカ人は約2万6千人で、意外に少ない印象です。

最近では、飲食店で中国人が働いているのは日常的な光景のように感じます。先日訪れたお店では大使館が近くにあることも影響しているのか、複数のミャンマー人が流ちょうな日本語で接客をしてくれましたし、とても感じが良かったです。

実際、最近では私が講師を担当する研修に、外国人が参加していることも珍しくなくなったと感じます。中国人や韓国人、アメリカ人が受講しているのはごく普通の光景となり、そのほかにも台湾人、インドネシア人、インド人、マレーシア人が参加する研修もありました。

こうした外国人の受講者は、いずれの人も日本の会社に正社員として採用されているだけあって、皆とても優秀です。日本語を「話す」、「聞く」ことができるのはもちろんのこと、きちんとメモを取る人が多く、それも日本語で「書く」ことができるのです。「話す」「聞く」「書く」の3拍子がそろっているということです。

さらに、受講態度は非常に前向きで、わからないことは研修中だけでなく研修後にもしっかり質問し、研修後の感想もあいまいではなく自分の言葉ではっきりと答えてくれます。

このため、外国人の受講者が一人でもいると、他の日本人の受講者も刺激されるようで、研修全体の雰囲気がとても前向きになると感じています。

先の厚労省のデータでは、外国人労働者数は平成27年までの4年間で、23万人増えています。今後、さらに右肩上がりで増えることは間違いないでしょう。

外国人労働者が増えることについては、メリット、デメリットの双方があると思いますが、これまではどちらかというとメリットが多かったように感じています。

しかし、全体の人数が増えていく分、今後はいろいろなケースが出てきて、デメリットも顕在化してくるだろうと思います。

日本の活力になっていただくためにも、法的な手続きだけでなく、人材育成の場においてもどのように準備をして取り組んで行けばよいのか。

人材育成の一助を担うものとして、弊社も新たな提案ができるように、引き続き取り組んでまいります。

(人材育成社)


上司の背中を見て学ぶ方法

2017年01月15日 | コンサルティング

以前、ある食品メーカで「新人営業担当者の基本」という研修を行なったときのことです。朝9時、研修開始の号令を人事課長が発すると、営業担当常務が壇上に立ち「では、開始にあたってひと言」と話し始めました。

「君たちは、今まで周りの人たちから手取り足取り教えてもらってきたと思う。しかし、社会人、とりわけ営業担当になったらそうはいかない。営業は基本的に1人で行動し、1人で成果を上げる孤独な仕事だ。」

そしてこう続けました。「仕事に対する姿勢は上司の背中を見て学べ。営業の技術は先輩から盗め。」

私も若い頃に「背中を見て学べ。先輩から盗め」と何度か言われたことがありましたが、最近はあまり聞くことがなくなっていました。現代の人材育成の考え方からすると、それは「古い、非効率的」ということになっています。

セールス担当者は客先に出向けば1人で活動しますが、営業という仕事の全体像はチームワークそのものです。営業部門の人材育成も基本となる知識、スキルを上司や先輩が正しい方法で教える仕組みが必要です。この研修でも、営業としての基本動作はテキストや動画で学び、ロールプレイングで身につけます。

研修後、人事課長は私に言いました。「○○常務(営業担当役員)は古いタイプなので”営業研修なんか役に立たないぞ”って言っていたんですよ。でも、この研修をやってよかったです。外部の視点で、営業の進め方や顧客の考え方を客観的に聞く機会は今までほとんどありませんでした。知識やスキルはもちろんですが、私自身も貴重な”気づき”を得ることができました。」

「どんな”気づき”がありましたか?」と私が聞くと、人事課長は少しにやりとして「背中を見て学ぶ方法です」と答えました。

私が少し首をかしげたのを見て、彼は次のように言いました。

「私も最初の配属先は営業でした。当時はまさに”背中を見て”の時代でしたから苦労しました。」
「でも、背中を見て学べというのは間違った指導方法だとは思っていません。」
「と言うのは、できる上司や先輩の行動を日常的にしっかり観察していると、いつ、なにを、誰に対して、どういう行動をとっているのかが、わかるからです。わかったらそれをノートに書き取って、実践してみます。」

「研修の講義の中で、それと同じことをずばり解説してくださったので、自分が何となくやっていたことが正しかったんだなとわかったんです。背中を見るって、要はしっかり観察するってことなんですね。」

「それでも上手く行かないときは、行動や言葉が書かれたノートを持って質問に行くのですが、その上司本人にそれを見せるとすごく喜ぶんですよ。そうすると、それはもう懇切丁寧に教えてくれるんです。」

う言って笑った人事課長ですが、彼が新人の頃に上司だったのが今朝の「ひと言」を発した常務その人でした。

頑固で強持て(こわもて)という噂の常務がこの研修を許可した理由がよくわかりました。

(人材育成社)

 


「何で?」質問の適切な使用法

2017年01月11日 | コンサルティング

友人の連れ合い:「何でそこでワイパーを動かすの?」「何で方向指示器を左に 出すの?右だ!」「何でそこで左に寄るの?もっと真ん中!」

友人:「・・・・・」

これは私の友人とその連れ合いのやりとりです。

友人は日本車の運転には慣れているのですが、自宅にある輸入車の運転には慣れていない(右ハンドルですが、もともと左ハンドル用の設計ため、ワイパーレバーはハンドルの右に、方向指示器が左にある)ため、お正月に運転の練習した際に、助手席に座った連れ合いから「何で?」の質問攻めにあったそうです。

それに対し、友人は何一つ返答ができなかったと言っていました。

「輸入車の運転に慣れていないから練習をしているのに、助手席で何で○○する?何で?何で?何で?と一挙手一投足に対して質問されてもね~。理由なんてないよ。余裕のない運転だから、方向指示器を出すはずが、ワイパーを動かしてしまっているのに、一回ごとに何で?何で?と理由を聞かれても困るだけ。理由は聞かずに、指示だけしてくれればいいから」

友人は余裕のない運転の中で、少しイラついた言い方でこのように叫んだとのことでした。

この話を聞いて、実は「何で?」を結構連発している自分の姿が頭の片隅に思い浮かび、あらためて「何で?」を使う際には注意が必要だと思ったのでした。

「何で?何で?」と繰り返し質問することは、理由や原因などが深堀りできたり、情報をたくさん収集できたりするメリットがあります。問題解決をするときには、問題の原因を探るために、「なぜ」「なぜ」と繰り返し質問することによって、真の原因が見えてきますから、「何で」質問は非常に有効です。

私自身、コンサルティングの場ではお客様に対して、「どうしてこのような方法をとられているのですか?」と質問しますし、営業パーソンの営業に同行した後には、「あの場面でなぜお客様にあの質問をされたのですか」など、「なぜ?」「どうして?」の質問を連発していていたように思います。

しかし、「何で」質問をした際、明確な答えが返ってくることもある一方で、どうしてそうしているのか本人自身もわからないとの答えが返ってくることも少なくないのです。

つまり、行為や考えのすべてに明確な理由があるとは限らないということです。

「何となくやってしまった」「理由なんか特にない」「よくわからないけど、やってしまった」ということも多々あるわけです。

ましてや、余裕のないときや、未熟な状態の人が何度も「何で?」と聞かれると、追い詰められているような気持にさせてしまう可能性のある表現だということです。

そして、この質問が続くと、その挙句に言い訳をしたくなったり真実を隠したくなったり、もっとひどいと、質問をした人に対するネガティブな感情が生まれたりすることすらもありえるわけです。

これまで「質問すること」のメリットにばかりに目が行くことが多かった私ですが、「何で?」「どうして?」はちょっと使い方を誤ると、デメリットが前面に出てきてしまいかねないということをあらためて認識しました。「使用法に要注意!」を年初に当たり肝に据えることにしました。

(人材育成社)


2017年は「生産性」の年

2017年01月08日 | コンサルティング

新年明けましておめでとうございます。いきなりで恐縮ですが、2017年のキーワードは「生産性」です。

安倍首相は1月5日の経済3団体(経団連、経済同友会、日本商工会議所)の新年祝賀会で「(今年は)働き方改革、断行の年にする」と語りました。

振り返れば昨年は長時間労働、過労死、働き方変革、ノー残業デー、一斉消灯などが大きな話題になりました。実際、あらゆるマスメディアは、いかに日本の労働者が(異常な)長時間労働を強いられているかを連日のように報じていました。

昨年12月19日の日経新聞(経済教室)で黒田祥子・早稲田大学教授は、「日本の労働生産性はアメリカの6割」であり「過剰なおもてなしが長時間労働につながっている」と述べています。実際に日本の労働生産性は、OECD加盟国34か国中21位と低い位置にあります。黒田先生は記事を「働き方改革で最終的に追求すべきは生産性の向上だ」と締めくくっています。

私は「全くそのとおり!」と思うと同時に、「・・・で、どうやれば生産性は上がるんですか?」とツッコミを入れてしまいました。おそらく、大学の先生をはじめとしたほとんどの知識人は「それは、それぞれの会社や職場で考えることです!」とおっしゃるでしょう。

確かに会社や職種によって事情が異なるので、具体的にどうこう言えないのでしょう。それはわかっていますが、私はさらにツッコミを入れたくなります。「それじゃあ、一流大学に入りたければもっと勉強しろとか、痩せたければ一所懸命ダイエットしろとか言うのと同じですね。」

また、それ以前にもっと大きな問題があります。それは、ほとんどの人(知識人を除く)が労働生産性の定義を知らないということです。おそらく経営者や管理職の多くが、労働生産性の計算式を説明できないでしょう。ちなみに、(付加価値)労働生産性=付加価値÷労働投入量、です。この付加価値というものの正確な定義や計算式は、財務省のホームページ(※)で確認していただくとして、次のように簡単に覚えておくことをお勧めします。

労働生産性=粗利÷(従業員数×労働時間) (製造業以外)

労働生産性=(売上高-材料費-買入部品費-外注工賃)÷(従業員数×労働時間) (製造業)

製造業はちょっと複雑そうに見えますが、いずれも従業員が単位時間当たりに生み出す粗利(売上総利益)またはそれに近いものです。

たとえば、商品を100万円で仕入れてきて200万円で売れば、付加価値(粗利)は100万円です。「200万円で売れたということは、会社は100万円分の新たな価値(付加価値)を生み出したんだ!」ということです。そのとき、売るのに5人がかりで、それぞれ20時間使ったとすれば、労働生産性は1万円/時です。

したがって、生産性を上げるには「少ない人数で、安く仕入れて、たくさん売る」という当たり前の原則を実現すれば良いことがわかります。

しかし、それを現実するのはそう簡単ではありません。商品をたくさん売って粗利が増えても、労働時間が増加してしまっては意味がありません。より少ない時間で多くの成果を上げる「具体的な策」が必要です。ですから、新聞やテレビから流れてくる「生産性を上げよ!」という単なる「号令」はもう聞き流してください。

2017年、当社は「具体的な策」を持って事業を展開してまいります。ご期待ください!

(人材育成社)

労働生産性及び全要素生産性とは