中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,207話 『大丈夫です』が多用されているのはなぜか

2024年03月13日 | 研修

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「大丈夫です」

これは弊社が担当させていただいた研修の中で、受講者に「何か質問はありますか」と声をかけた際に返されることが多くなった言葉です。また、同様にコンビニなどで買い物をした際にも、店の人から「袋は大丈夫ですか?」と聞かれることも多くなったと感じています。

このように「大丈夫」という言葉は様々な意味や場面で使われることが多いのですが、改めてその意味を調べてみると、「①立派な男子。 ②しっかりしているさま。 ごく堅固なさま ③間違いなく。たしかに。(広辞苑)」とあります。

もちろん、私自身もたとえば体調が良くなさそうな人には「大丈夫?」と声をかけたりするなど日常的に使っています。一方で何でもかんでも「大丈夫」で済ませてしまうかのような、最近の使い方には少々違和感を持っています。

そこで先日、若手社員の研修を担当させていただいた際に、休憩時間に数人の受講者にこの点について質問してみました。彼らの返答によると、「大丈夫」は返答する際も、質問する際も、とても便利な言葉だそうで、人を気遣う際など様々な場面で応用しやすい言葉とのことです。それに対して、冒頭の例のように「質問はありますか?」への返答として「ありません」と答えるのは相手への気遣いが足りない表現だと感じてしまう。同様に「袋はよろしいですか?」と質問するのではなく、「大丈夫ですか?」と質問してしまうのも、自然な表現だと感じるとのことでした。

この話を聞いて思い出したのが、最近はメールやSNSなどの文言の末尾に句点「。」がついていると、威圧的・冷たいと感じ怒っているように感じることがあるという話で、これを「マルハラ」(マルハラスメント)と言うのだそうです。

私の年代は文章の終わりに句点を付けることには何の違和感もなく、むしろ「。」がないと落ち着かない、文字どおり締まりがないように感じられるのですが、最近の若い人たちは逆に感じているということなのです。このように、句読点一つの使い方をとっても年代によってこのように違いがあるものであり、これらは今後も時代とともに移り変わっていくものなのかもしれません。 

この点については、弊社が行う研修の主要なテーマの一つである「コミュニケーション」についても、同じことが言えるのではないかと思っています。コミュニケーションは仕事の場面に限らず、人と人が意思疎通を図るために欠かすことができない、日常的に行っているものではありますが、同時に人と人が行うものである以上、「大丈夫」や「。」の例と同様に、使う言葉や表現ぶりについての理解が年代によって違いが生じてくるのかもしれません。今後時代が進んでいけばコミュニケーションそのものの在り方も変わっていくのかもしれません。

とはいっても、コミュニケーションの中で互いの解釈や理解に齟齬が生じないように、押さえるべきポイントはきちんと押さえていかなければいけないのは当然です。同時に、それでも様々な齟齬が生じてしまうケースは決して少なくないなど、私自身も未だに「コミュニケーション」は難しいものだと思うことが多々あります。

今回、「大丈夫」という言葉から言葉の持つ意味合いの深さとともに、改めてコミュニケーションの難しさにも思い至ったわけですが、研修の際には押さえるべきポイントはきちんと押さえていく。しかし同時に、相手や時代に合わせて変えていくべきところは柔軟に変えていくこともまた大事であると感じました。

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第1,206話 自分とは何者なのか

2024年03月06日 | キャリア

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「私は穏やかな性格です」

ある私の知り合いは、かつて自身の性格を評してこのように言っていました。確かにその人は普段はわりと穏やかではあったのですが、追い込まれて余裕がなくなったりすると、一転して激しく怒鳴ったりするなど、周囲はその変貌ぶりに驚かされることが度々ありました。

この例のように、人は自分のことをわかっているようで、案外わかっていない生き物なのかもしれません。もちろん人間はいろいろな面を持ち合わせているわけですから、一概に「〇〇だ」と言えるような単純な存在ではないことも、また確かだと思います。

これに関して、古代ギリシアの哲学者タレス(Thales)は、人から問われた際に「自分を知ることが一番難しい、反対に容易なことは他人に忠告すること」と答えたとのことです。また日本にも同様の意味の諺「遠きを知りて近きを知らず」がありますから、古今東西、人は「自分のことを知る難しさ」を感じてきたのではないでしょうか。

話は変わりますが、近年就職活動をしている新卒者や入社間もない若手社員から、「就職活動において最も大変だったことは何か」という質問に対して、「自己分析をすること」という答えを聞くケースが多くなってきています。

自己分析とは、文字どおり自身の性格、考え方の傾向、興味の対象や嗜好などを顕在化させ、把握・分析して強みを見出すことです。中には早い段階でできている人もいるのでしょうが、まだ20代前半とさほど人生経験が多くはない若者が自己分析をし、それを文章化することはさぞかし難しいであろうことは、想像に難くありません。

では若者に限らず私たちは、どうすれば自分のことをより深く知り、それを分析することができるのでしょうか。その答えは簡単なものではないのだろうとは思います。たとえば自分にとってあまり歓迎しないような事柄が起こったときや難題にぶつかったときなどの場面において、自らがどのように感じ、考え、その事柄に対峙するのか、そうした自分にしっかり向き合うということが大切なのではないかと私は考えています。そうすることで自分にとっても普段は見えない、意識していない自分の姿が見えてくるということがあるのではないでしょうか。そして、定期的に自己をリフレクションしたり、他者からのフィードバックや専門家の助言を得ることも、自身への理解を深めた上で分析をする際の手助けとなってくれるのではないかと思います。

このように考えると、私たちは普段あまり意識していなくても、人生のいろいろな節目節目で「自分とは何者なのか」という問いを続け、その答えを探し続けるものなのではないだろうかとも思えてきます。

話を若い人の就職活動に戻すと、受け入れ側の組織に求められるのは、応募者の自己分析はまだ人生における「発展途上」の段階での分析にすぎないことをきちんと押さえておくこと、そしてそれを踏まえてどのように育成していくかをしっかり考えて当人と共有していくことが、いるのではないでしょうか。

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第1,205話 ロールモデルはいますか?

2024年02月28日 | キャリア

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「特にロールモデルはいないです」

これは、弊社が女性を対象にしたキャリア研修を担当させていただく際に、必ずと言っていいくらい聞くことが多い言葉です。

ロールモデルとは、「目指したいと考える、模範としたい人材」のことであり、お手本としたいと考えている人の具体的な行動から学んだり、その人が保有しているスキルを自らも獲得したりしようとすることです。

身近にロールモデルがいれば、その人から日々様々な刺激を受けることができるわけですから、そういうお手本となる存在がいる場合には、とても心強いと感じることができるのではないかと思います。しかし、私が研修でお会いする前述のような女性社員達は、女性管理職の絶対数が少ないなどの理由により、女性のロールモデルを探すことが難しいという現状をやむなく受け入れている人が多いように感じています。

それでは、若手の男性社員にはロールモデルとしている人がどれくらいいるのでしょうか?私は機会がある度に男性社員にこの質問をすることがあるのですが、答えは女性の場合と同様に、「ロールモデルはいません」という人が圧倒的に多いのです。女性の場合と比べ、はるかに管理職などの絶対数が多いであろう男性でも、ロールモデルに関しては同様の返答となるのです。

これらのことから考えると、そもそもロールモデルがいる人は男女とも限られており、ロールモデルがいるのならば幸いなことではあるものの、仮に現段階でそれがいないという人であっても、一概にそのことを悲観するようなものではないのではないかと思っています。

では、今ロールモデルがいないという人は、今後どのように動いていけばよいのでしょうか。これについては、ロールモデルを一人だけに限るのではなく、複数の人から良いところを学ぶという視点を持つことが、まずは重要だと私は考えています。全ての点を特定の人に求めてお手本にしようとすると、それにかなうような人はそうはいないという可能性もあります。逆にはじめからある程度の数の人を対象にして、それぞれの人の良いところをピックアップして、ロボット型のようなモデルとすることがお勧めです。また、ロールモデルは必ずしも同性でなければならないということではないですから、女性社員にとって男性社員も対象になりますし、その逆も然りです。

さらには、同じ組織内においてロールモデルが見つからないという場合には、組織外のネットワークを活用して他組織で活躍している人をロールモデルとすることも一つの方法なのではないでしょうか。

あくまで理想とするロールモデルを探し求め続けるというよりは、まずは身近な人に「見習いたい、お手本にしたい」という部分を見出すのです。その人の行動をしっかりと観察してポイントを把握し、簡単なことから実際に自分の行動に取り入れてみるということから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その場合には一連の行動の結果を振り返り、適宜改善していくPDCAの観点で取り組んでみることも大切なことだと思っています。

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第1,204話 「君付け」で後輩や部下を呼ぶ人の意識とは

2024年02月21日 | コミュニケーション

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「先輩社員から『〇〇君』と、「さん」付けではなく呼ばれることに抵抗があります。これはビジネスマナーのルール違反にはならないのでしょうか?」

これは、先日弊社が若手社員の研修を担当させていただいた際に、ビジネスマナーの振り返りをした中で、一人の受講者から尋ねられた質問です。ちなみにこの「君付け」、最近の学校では男女を問わず「さん」と呼ぶことが多くなっているようですが、一方で国会中継などを見ていると議員のことを呼ぶ際に「〇〇君」と言っています。そこでここではあくまで職場での呼び方について考えてみたいと思います。

さて、職場内では以前から他者のことを「〇〇さん」ではなく、「〇〇君」と君付けで呼ぶ人がいます。実際、私が会社員をしていたときにも、後輩社員を「〇〇君」と呼ぶ同僚がいましたし、現在も研修を担当させていただいている会社の担当者が、後輩社員を「〇〇君」と呼んでいるのを頻繁に耳にしています。

それでは「〇〇さん」でなく、敢えて「〇〇君」と呼ぶのには何か理由があるのでしょうか。以前から気になっていたことから、実際に職場で君付けをしている人に尋ねてみたことがあるのですが、一様に「親しみを込めて使っている」との返答でした。本人はあくまでポジティブな気持ちから使用しているようなのですが、一方では冒頭の質問をした受講者のように、君付けで呼ばれることに抵抗感を持っている人も少なからずいるのではないかと感じています。

いくら「親しみを込めて言っている」としても、目上の人に対してはさすがに君付けでは呼ばないはずです。そのように考えると、君付けをしている人は後輩社員に対して、無意識であったにしても「自分より目下の存在である」というような、何らかの意識が働いているのではないでしょうか。そのため、職場などで何かのきっかけで相手に対する言動が「上から目線」になったり、上から下への命令口調になったりしやすいということがあるのではないかと考えています。

これに関連して、先日(2024年2月17日)の朝日新聞の天声人語に、刑務所や拘置所などに収容されているすべての人について、今年4月から「名字+さん」でよばれることになるという記事が載っていました。かつては番号で呼ばれたという受刑者について、戦後は番号ではなく苗字を呼び捨てで呼ばれることが多くなったとのことでしたが、以前に起こった刑務官による受刑者への暴行事件等を受けた改革の一環として、呼び方を「さん」付けに変えるとのことでした。

ちなみに、「さん」は江戸時代に「様」から転じて使われるようになったということで、年齢や性別に左右されずに誰にでも使用できる呼び方とのことです。確かに「君」より「さん」のほうが語感も柔らかいように感じられ、使いやすいように思えます。

「たかが呼び方、されど呼び方」かもしれませんが、同時に朝日新聞の記事にもあったように、「呼び方」によっては様々な(上下の)関係のあり方が固定されてしまうというような面も持っているのではないでしょうか。これまでは、小さなこととしてあまり真剣に取り上げられることが少なかったテーマかもしれませんが、私は人の気持ちに大きく影響する大切な事柄なのではないかと考えています。

さて、あなたは職場でどのような呼び方を使っていますか?また、あなたの職場全体ではどうでしょうか?もし、呼び方が職場の人間関係などに何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられるのなら、一度皆で話し合って別の呼び方を試してみてはいかがでしょうか。

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第1,203話 外国人労働者からの「刺激」

2024年02月14日 | 研修

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「会社にいるインド人の社員はとても仕事ができる」、「部下の一人はベトナム人だ」など、近年外国人労働者の話を耳にすることが多くなったと感じます。私自身、この1か月間だけでも担当させていただいた企業の研修の受講者の中に、中国人と韓国人の社員が出席していました。

厚生労働省のデータによると、令和4年の外国人労働者数は182万人で、過去最高を更新したとのことです。この数字からも、外国人労働者の存在が身近になったと感じるのは当然のことと言えそうです。ちなみに、国籍別ではベトナムが最も多く46万人で全体の 25.4%。次いで中国 、フィリピンの順とのことです。

さて、この外国人労働者に関して、私が過去に担当させていただいた研修には、先述の中国人と韓国人以外にもインド人、アメリカ人、ブラジル人、インドネシア人、マレーシア人の社員が出席していましたが、いずれの方も実に前向きな姿勢で取り組んでおり、さすがその企業が採用しただけのことはあるなと思わせるような人ばかりでした。たとえば、ある中国人の若手の受講者は、私が受講者全員に対して質問を投げかけた際には真っ先に挙手し、所属している企業の理念や売上数字などを明確に答えてくれました。また韓国人の受講者は管理職として部下の育成に取り組んでいる様子や、評価の難しさを感じていることなどについて熱心に話してくれました。そして、彼らに共通している点として、単に日本語を話せるというだけでなく、きちんとした文章を書くこともできるということもあると思っています。

昨今、日本人の若手は主体性や外向性が低下している人が増えてきているのではないかと言われることが多いように感じていますが、そうした中で何事にも前向きに取り組んでいる彼らの姿勢は実に頼もしく、ある意味眩しいような存在だとも感じられます。同時にこのままの状態が続くと、やがては日本人社員の存在感がどんどん薄れていってしまうではないかという危機感すら覚えてしまいます。

既に日本では人口減少が始まり、それに伴い労働人口も減り始めています。そうすると、ますます頼りにしていかなければならないのが、先述のような技術や知識を持つ外国人労働者です。即戦力として活躍してくれる彼ら外国人労働者をいかに獲得し、しっかり育てていけるかが企業のこれからの成長の鍵を握っていることは間違いないように思えます。

このように外国人労働者がますます増えていく中では、我々も彼らの積極的な姿勢を真摯に学んでいく必要があります。同時に文化的背景の違う人たちと一緒に働くうえでは、それぞれの文化や習慣などをはじめコンテクストの違いをきちんと理解していないと、コミュニケーションをはじめ様々な問題が生じてしまいかねないことが懸念されます。

これまでもそれぞれの企業では様々に取り組んできていると思いますが、今後はますますその必要性・重要性が増していくことになりそうです。

我が国の企業や労働者を取り巻く環境は日々大きく変化し続けていますが、そうした中で外国人労働者達から様々な「刺激」を前向きに活かして、我々自身もさらに成長していくことの重要性を、彼らの姿勢から感じています。

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第1,202話 生き生きと働くシニア層になるためには

2024年02月07日 | キャリア

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「昨年と同じものをやっていても面白くないから、新しいものを考えたい」

これは先日、ある組織に非正規雇用されている68歳の男性A氏から聞いた言葉です。私は今から30年程前に当時人事の研修担当の係長だったA氏と初めてお会いしたのですが、A氏は当時からとても前向きな姿勢で仕事に取り組む方であり、私も研修の打ち合わせをする中で随分とプラスの影響を受けたものでした。

A氏はその組織を定年退職後に、再雇用で65歳まで働いた後、現在は1年ごとの契約更新の非正規職員として勤めています。今回私がその組織で仕事をすることになったことを伝え聞いたとのことで、研修終了後にわざわざ訪ねてくださり、久しぶりに再会することができたのでした。A氏は当時と変わらずに颯爽と現れ、今の状況などについて色々と話してくださったのですが、そのときに話されたのが冒頭の言葉だったのです。そこからは、現在も当時と変わらずに積極的に生き生きと仕事に向き合っていることが伝わってきました。

さて、組織におけるシニア層の雇用や戦力化にかかる、様々な課題が顕在化するようになって久しいです。シニア層の割合は年々増え続けており、直近では全就業者の約7人に1人(総務省統計)にもなるようですが、多くの場合年収や待遇の低下により働く意欲を喪失する傾向が強いことが課題になっています。私がお会いするシニアの方からも「給与は現役時代の6割程度にもかかわらず、仕事の負担はあまり変わらないので、モチベーションが下がってしまっている」というような話を聞くことがたびたびあります。

こうした人が圧倒的に多い中で、A氏が今も「やる気」を維持している理由は何なのでしょうか。私は話をお聞きしている中で、A氏が新しいものを企画することを楽しんでいること、事業に参加した人の反応に高い関心を持っていること、何より飽くなき好奇心を持ち続けていることなどを強く感じました。その証拠に、A氏は今でも非常にフットワークが軽いのです。新しい企画の際には机上だけではなく、遠方であっても自腹を切って実際に現場に足を運んでその場所を見たり、様々な人から話を聞いたりするなどして進めていくのです。そしてその結果、新たな人と人との関係が繋がるなどにより、それがまた新たな企画につながるなどの好循環を生んでいるようです。

こうしたことを踏まえると、A氏がここまで仕事に前向きに取り組めている理由とは、内発的に動機づけされているからではないかと私は考えています。内発的動機づけとは、給与や名誉などのためではなく、その人にとっての達成感や充実感など内的な要因に基づくものによって自分の内部から湧き出る意思のことを言いますが、前述のA氏の様子はまさにそれそのものではないかと思えるのです。

もちろん、全てのシニア層がA氏のように簡単に内発的動機付けができるわけではないとは思います。しかしどうせ働くのであれば、以前の状況と比べて不満に思いながら働くのでなく、A氏のように自ら達成感を得られるように前向きな姿勢で取り組めたら、何より自身が幸せな気持ちで働くことができるのではないでしょうか。まずは何か一つでいいので楽しみながらはじめてみていただければと、A氏の生き生きとした表情を見ていて感じたのでした。

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第1,201話 問題解決に取り組んだ後のドキュメントとは

2024年01月31日 | 仕事

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「いずれ新たなパンデミックは発生するだろう。そうであれば、『古株』の最後の仕事として、これまでの経験を記録に残すべきだと考えるようになった。」

これは、新型コロナウィルス感染症対策分科会会長をはじめ、コロナ対策で数々の役割を担った医師である尾身茂氏が、その著書「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」(日経BP)の中で語っている言葉です。

本書には、尾身氏をはじめ専門家が出した100以上の提言の根拠やそれらに込めた思い、専門家同士の激しい議論、首相や大臣、行政官などとのやり取りなどが詳しく書かれています。特に、第1回緊急事態宣言の解除の条件を議論する勉強会で尾身氏自身が声を張り上げたときの生々しいやりとりをはじめ、当時の緊張感あふれた様子などにもふれられており、3年半にわたるコロナ禍の中、専門家としてどのようにコロナ対策に向き合ったのかを知ることができます。

コロナに対応した専門家ほどの大きな問題ではないかもしれませんが、私たちも公私を問わず日々大なり小なり様々な問題にぶつかり、その解決を模索しながら生きています。問題が生じることは滅多にないという人もいるにはいるようですが、そういう人はそれほど多くはないのではないでしょうか。

さて、弊社では定期的に問題発見・課題解決をテーマとした研修を担当させていただいていますが、その際は問題を発見し解決するまでの一連の流れを6つのステップ(①問題を発見し、②原因を分析し、③3現主義によって調査し、④解決策を立案する、⑤解決策を実施、⑥評価と対策)に則って進めることが多いです。

このステップに基づいて問題解決に取り組む場合に、①から⑤までは熱心に取り組む人が多いかと思いますが、⑥の評価と対策まで取り組む人は限られているようです。本来は解決策を実施した後には、実行からその評価までのプロセスをドキュメントにして、記録として残すことが必要なはずですが、問題が解決できるとそこで安心してしまい、その後にしっかりと記録を残すという人は多くないというのが実際のところのようです。

しかし、せっかく問題解決に取り組んでも、ドキュメントをきちんと残さないと、一連のプロセスの中で行われた議論やそこで獲得した知識や経験等が、時間の経過とともにやがては薄れていってしまいます。次に同様の問題が発生してもそれを活かすことができず、最悪は再び0(ゼロ)からのスタートになってしまうなど、せっかくの取組みの積み重ねが無駄になってしまいます。

そのように考えると、今回尾身氏が執筆された本書はまさに問題解決の最終ステップである「評価と対策」を中心に書かれています。尾身氏も指摘するとおり今後新たなパンデミックが発生するようなことがあった場合には、今回書かれたようなドキュメント(書籍)が役に立つことは間違いないと思います。

私たちも、日々の仕事の中で遭遇する問題発見・課題解決に取り組む際は、同じことを繰り返さないためにも、また速やかに対応できるようにするためにも、一連の流れを必ずドキュメントとして残しておくことが肝要だと、今回尾身氏の書籍を読んで改めて感じました。

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第1,200話 管理職に登用する際に、どのように選抜すればよいのか

2024年01月24日 | キャリア

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社員(職員)を管理職に登用する際に、どのように選抜すればよいのか。これについては、古今・官民問わず様々な考え方があると思います。私がこれまでお付き合いをいただいている組織においては、本人の希望の有無にかかわらず人事考課の結果によって昇格を判断しているところが圧倒的に多いと感じています。実際、「等級制度と昇進昇格・降格の最新実態」(労務行政『労政時報』第4036号⦅2022. 6.10⦆)によると、一般社員から管理職への昇進・昇格の際に試験を導入しているのは1,000人以上の組織の場合で76.3%とのことです。このデータからは、規模が大きい組織の方が昇格試験を導入しているところが多いということが読み取れます。

昇格試験にはメリット・デメリットの双方が考えられ、一概にどちらがよいと言えるものではありません。試験を導入するメリットとしては、管理職として活躍したいというやる気がある人を見出せること、試験を通して管理職としての適性の有無を見極めることができ、その後の活躍が期待できることが挙げられます。一方、昇格試験を導入しないのであれば、昇進・昇格にかかる上司の部下の評価のレベルを一定に保つためにも継続的な訓練が必要となりますが、それはそれで簡単なものではありません。

そのように考えると、昇格試験はもっとも公平・公正な手段だと言えます。しかし、昇格試験と一言で言ってもその中身にはいろいろな方法があります。具体的には、筆記試験・論文試験・プレゼンテーション・面接試験等々あり、フルコースで導入している組織もあれば、一部のみを実施しているところがあります。

外部の私が担当させていただくことが最も多いのが面接試験で、受験者に対して先入観がない外部の面接官として、受験者に様々な質問をすることにより、管理職としての適性を評価させていただいています。これまでの経験では、面接でお会いする受験者は課長になりたいという思いが強く伝わってくる人が多く、真面目で真摯に業務に取り組んでいる様子が伝わってくる人がほとんどです。一方で、管理職とし組織の目標を達成するためにリーダーシップを発揮することができるだろうか、部下指導を熱心に行えるだろうかなど、管理職としてはやや物足りないと感じる受験者がいるのも事実です。そして当然のことながら、ある一定の割合で合格には至らない人もいます。翌年以降再びチャレンジする人も多いのですが、1年間で見違えるほど成長して管理職としての適性が感じられるようになる人がいる一方で、残念ながらあまり変わらない人もいます。

それらを踏まえ、私が昇格試験を担当させていただく中で改めて思うことは、不合格だった人にはなぜ不合格になってしまったのか、今後どのような改善を行っていけばよいのかなどについて、適切なフィードバックをすることが大切だということです。管理職への登用試験は確かに公平・公正な手段ではありますが、同時に適切なフィードバックを怠ってしまうと受験者のやる気が失われたり、仕事そのものへのモチベーションが下がったりという危険性も考えられるのです。そうした事態を避けるためにも、残念ながら不合格となってしまった人には、どういった点が足りなかったのか等についてのフィードバックを必ず行い、それをふまえて上司と部下で話し合って、その後の成長につなげていくことが強く望まれます。

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第1,199話 「くまモン」が大人に人気があるわけ

2024年01月17日 | コミュニケーション

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皆さんは、熊本県のPRマスコットキャラクターのくまモンをお好きでしょうか?」

今更言うまでもありませんが、ゆるキャラグランプリ2011王者であり、現在は熊本県の営業部長兼しあわせ部長を務めています。

先日熊本県を訪れた際に、くまモンの活動拠点である「くまモンスクエア」に行く機会がありました。当日くまモンは午前に続き午後2時にも出勤予定だったため、それに合わせて少々早めに1時間前に現地に到着したのですが、既に会場には大勢の人が集まっていました。

開演1時間前にも関わらずそうした状況だったため、一体どこに立って待っていればよいのか、どこにいればくまモンの舞台を見ることができるのか側にいた人に聞いたところ、「舞台を囲んで並んでいる20席には子どもしか座ることができない。」とのことで、見やすい場所を教えていただきました。話を聞いた人は常連で、定期的にくまモンスクエアを訪れているそうですが、立って待ちその後舞台を観るのは長時間で大変なので、毎回折りたたみ椅子を持参しているとのことでした。

待つこと1時間、開演前には舞台を取り囲む何重もの人の列ができていました。そしていよいよ開演、くまモン隊のスタッフの女性が観客に「どこから来たか」、「午前中も観たか」などと質問しましたが、日本各地以外からも台湾やアメリカから来ている人や、午前中に続いて2回目だという人もかなりの人数いました。くまモンスクエアには、子どもとその保護者が集まっているのだろうとイメージしていた私からすると、このように大勢の大人が何度もくまモンに会いに訪れていることは少々驚きであり、同時に新鮮にも感じました。

では、これほど多くの大人がこのようにくまモンに惹かれるのは、一体なぜなのでしょうか。理由は様々あるかと思いますが、私はくまモンがステージの上を自由に動き回って、観客にハグをしたりするなどの「非言語」に加え、大人に対しても子どもにと同じように愛嬌を振りまいている、ある意味では公平に接しているというところにもあるのではないかと思っています。

弊社が管理職研修や管理職登用試験の面接官の担当をさせていただく際、「上司から公平に接してもらえなかったり、気分屋だったりする上司の指導を受けて苦労をした」という話を聞くことが頻繁にあります。そのためか、上司に声をかける前に「今日の機嫌はどうだろうか?」、「今声をかけて怒られたりしないだろうか?」などと、恐る恐る声をかけたという経験を持つ人は少なくないようです。

私たちは、日々周囲の人と様々なコミュニケーションをとっています。このブログでも、これまでたびたびコミュニケーションについてふれていますが、永遠の課題と言ってもいいのではないかと思えるほどに難しいテーマでもあります。

職場においては、くまモンのようにいつもニコニコして愛嬌を振りまいているだけでは、コミュニケーションはなかなか成立しません。しかし、それでも今回くまモンの笑顔を見ていて、職場での対人関係・コミュニケーションの中では、相手によって態度を変えたり自身のマイナスの感情をストレートにぶつけてしまうことは控えなければならない態度だということです。特に管理監督職は部下に対しては公平に接することを心がけること、そのことが回りまわってくまモンのように周囲からの好感につながり、信頼を築くなどのよい結果につながっていくのかもしれないなと改めて感じました。

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第1,198話 コミュニケーションは部下指導の万能薬ではない

2024年01月10日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「コミュニケーションに力を入れます」、「毎日、全員に必ず1回は声をかけるようにしています」

これは、弊社が管理職研修や昇格試験の面接官を担当させていただく際に、管理職である受講者や管理職を目指す受験者から繰り返し聞く言葉の一つです。

具体的には「管理職として心がけたいことは何か」、「部下指導で力を入れたいことは何か」などの質問への回答なのですが、近年ではその傾向がますます強まっているように感じています。

公私を問わず、私たちは日々コミュニケーションを通して生きているわけで、コミュニケーションが重要であることは言うまでもありません。一方でコミュケーションがまるで「生きる術」のように使われることには、少々違和感を覚えることがあります。

研修や面接の場面で、あまりにも頻繁にコミュニケーションという言葉が繰り返されるため、私から「コミュニケーションをどのように捉えているのですか」と質問することもあるのですが、「言葉を交わすこと」以上の答えがないことも少なくないのです。こうしたこともあり、多くの人はコミュニケーションの「量」を増やすことのみに関心があり、「質」を高めることを重視している人は少ないように感じています。

ところで、組織の中で管理職に必要とされる能力について述べているものに、アメリカの心理学者のロバート・カッツ(Katz, Robert L.)の「カッツ理論」があります。カッツはマネージャーに求められる能力を、業務遂行能力(テクニカルスキル)、対人関係能力(ヒューマンスキル)、概念化能力(コンセプチュアルスキ)の3つに分類しています。3つのスキルについては、組織の上層部に行くほど概念能力の重要性が増し、反対に組織の現場に近いほど業務遂行能力が求められるとされています。

この理論からも、管理職に求められるスキルはコミュニケーションスキルや対人関係能力ばかりではなく、論理思考や批判的思考などの概念化能力も必要となると考えられるわけですが、コミュニケーションのスキルにばかり関心を示す人が圧倒的に多いのはなぜなのでしょうか。

理由はいろいろあるかと思いますが、コミュニケーション以外のスキルは何となくイメージにしにくく、具体的に何をどのように達成すればよいのかを明確にしにくいのかもしれません。一方で、コミュニケーションのスキルは誰でも簡単に高めることができるようにイメージされてしまいやすく、多くの人が「量を増やすこと」=「スキルアップ」と簡単に考えてしまい、結果としてコミュニケーションをまるで万能薬のようにイメージしてしまっている人が多いのではないでしょうか。

コミュニケーションは量だけでなく質そのものを高めることも必要ですし、そもそもそれだけをスキルアップすれば済むというものでもありません。管理職には、前述のような概念化能力を始めとする能力、DXなどをはじめとするテクニカルスキルも求められるものですので、現管理職・管理職を目指す皆さんにはスキルアップに向け頑張っていただきたいと考えています。

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