「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「部下に55歳の新人がいるんですが、どのように指導すればよいのか悩んでいます」
これは、先日弊社がある企業の監督職を対象に行った部下の育成研修の終了後に、一人の受講者から相談された内容です。詳しく話を聞いたところ、今春55歳で採用された男性が自部署に配属され、直属の部下になったとのことです。
近年、厚労省は就職氷河期世代に対する様々な支援を始めています。就職氷河期世代とは、1990年代から2000年代初頭にかけて就職活動を行った世代を言い、2025年時点では41歳から55歳の層が該当するとのことです。この層に対する支援の一環として、官民を問わず採用の際の年齢枠を拡げ、氷河期世代の受験も可能としているところが増加傾向にあります。
冒頭の受講者の55歳の部下も、この採用枠の拡充により入社試験を受けて採用されたそうです。年上の部下の指導や育成に関する悩みや相談自体は取り立てて新しいものではありませんが、「部下が55歳の新人」というケースは私自身も初めて聴いたことから、正直なところ少々驚いたことは隠せませんでした。
詳しく話をお聞きしたところ、現段階で55歳の新人に取り立てて大きな問題が起こっているというわけではないとのことです。しかし、それ以前に自身より15歳も年齢が上の人が新人であるということに面食らってしまい、どのように仕事を教えればいいのかや、慣れない業務でミスがあった際にどのように指導すればいいのかなどについて、悩ましいと感じているとのことでした。
そもそも部下指導というものは年齢に関係なく難しいものではありますが、このように年上の社員が自分より年下の若い指導者に教わるということに心理的な抵抗感を持つということは、当然とも思えます。したがって、年上の部下を指導する際には最低限配慮すべきポイントがいくつかありますが、私はその中でも特に言葉遣いと態度に十分配慮を払うことが必要だと考えています。たとえば友達言葉で話したり、腕組みをしたりするなど「上から目線」と感じられるような態度をとってしまうと、年上の部下からすれば、違和感やマイナス感情をもってしまうことにつながりかねません。そしてこれらの配慮は、年上の部下への指導に限ったことではなく、本来は年齢に関係なく部下指導の際に配慮すべきことなのだと考えます。
昨今、若年層の労働人口が減少する中、官民を問わず若手の採用がここ数年で一気に難しい状況になっています。東京商工会議所の「2025年新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」によれば、計画以上に確保できている企業は13.4%にとどまる一方、充足率が50%未満の企業は40.3%であり、96.4%の企業が採用環境が厳しいと回答しており、新卒者の採用が足りていない企業の方がはるかに多く、それは企業規模が小さくなるほど顕著です。
生産年齢人口の減少、特に若い世代が減ってきている中で若手を採用することは、今後は官民問わずますます難しくなっていくであろうことは明らかと考えられます。そうした中では、就職氷河期世代のみならずキャリア採用も増加していくと、自分よりもずっと年齢が上の人が部下になるというケースも増えていくはずです。
組織の人間関係を良好な状態にしチームワークを維持していくためにも、年齢が上の人に対しては敬意を示すことともに、部下の年齢に関係なく、言葉遣いや態度には十分に配慮することがますます重要になっていくと考えています。