中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,091話 会議は長いほどいい!?

2022年01月23日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

朝日新聞・朝刊の1面に哲学者の鷲田清一氏が執筆している「折々のことば」という小さな連載コラムがあります。毎回とても良いことばが選ばれているので楽しみにしています。今回は「会議とはものごとを決める場ではない(出版社代表・木村元氏)」ということばでした。

仕事と会議は切っても切れない関係にあります。大企業の社員であれフリーランスであれ、会議を経験したことがない人はいないと思います。ですから、会議を「決める場ではない」と言い切ってしまうことに「え?」と思ってしまうことでしょう。

木村氏は「会議は異なる『声』や視点を提示し共有しあう機会。だから長いほどいい」と言います。

ビジネスパーソンならば「共有しあう機会」には納得できても「長いほどいい」というところには拒否反応を示すはずです。私もそうです。会議は、異なる声(意見)や視点(ものの見方)を全員で共有する機会であることは間違いありません。ただし「長いほどいい」とは思いません。

会議で声や視点を共有する目的は、結論というアウトプットを得るためです。もし結論が不要ならばそれは会議ではなく、座談会か独演会、せいぜい「井戸端会議」でしょう。いずれにしても会社のコストを費やして行うべきものではありません。以前にも書きましたが、会議とは結論という製品を製造する工場なのです。製品を作らない工場に存在意義はありません。

さて、私の知り合いに木村氏と同じような言葉を口にする経営者がいます。日頃社員に「大いに会議をしなさい」と会議を奨励しています。彼はどちらかと言えば気が短いタイプなので意外に思い、それはなぜかと聞いてみました。「会議は決定する場だ。決めたことは参加者の責任になる。そうすればどんなに小さな仕事でも責任をもって取り組むようになる」とのことでした。

そして「責任が伴うからこそ、色々な意見や視点を示して話し合うことが必要だ。そのためには長い時間がかかってもいいじゃないか」と言っていました。

「折々のことば」とは含む意味が逆になりますが、私は大変素晴らしい考え方だと思いました。たとえ短時間で「効率良く」会議を行ったとしても、あいまいな結論や責任の所在がはっきりしない決定しか得られないならば、その会議は無意味だからです。

私は彼の言葉に感銘を受け「なるほど。会議はいくら長くても良いのですね?」と聞いてみました。「もちろんだよ。私も気が短いとよく言われるのだが、会議に関しては長くても構わないと思っている・・・30分以内ならね」という答えが返ってきました。

あなたの会社の会議はどのくらい長いですか?

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第1,090話 あなたは『機嫌がいい』ですか

2022年01月19日 | コミュニケーション

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

部下B:「今はタイミングが悪いと思う。もう少し経ってからの方がいいんじゃないかな」

部下C:「あの上司は朝は機嫌が良くないことが多いからね」

これは、上司へ仕事の相談をするタイミングを見計らっている部下同士の会話です。私自身も経験がありますが、上司によっては同じ報告をするにしても、また同じような決裁を仰ぐにしても、機嫌の良し悪しで事の次第が決まってしまうことがあるのです。そのため、上司と接点を持つ必要があるときには、あらかじめ部下同士で上司の機嫌の情報を共有することがありました。同様に、現在も若手を対象にした研修を担当させていただく際に、部下の悩みの一つとして上司の機嫌についての話を耳にすることが少なくありません。

それでは、当の管理職は自身のマネジメントに関してどのように感じているのでしょうか?実際に弊社が管理職研修を担当させていただくと、自身のリーダーシップに問題意識を持っている管理職が多いように感じています。具体的な悩みとしては「指導力がない、統率力がない、影響力がない、カリスマ性がない」など、ないない尽くしの話をお聞きします。

リーダーシップは生まれつきのものではなく、訓練などで身に付けることができるとは言われているものの、カリスマ性などは努力で簡単に身に付くものではないもののように思えます。

それでは、自身のリーダーシップに悩んでいる管理職は何から始めればよいのでしょうか?そこでお勧めしたいのが、「一所懸命仕事をする中で、できるだけ機嫌よくしている」ことです。

私が最近読んだ本に、「チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論」(畑中翔太 朝日新聞出版2021年)があります。お笑いタレント「ウッチャンナンチャン」のウッチャンこと内村光良氏は「自らはリーダー論などは決して語らないけれども、内村氏がいる現場では必ずいいチームができる」そうで、周囲の人が感じている内村氏のリーダーシップをまとめた内容です。

内村氏のリーダーシップは上からプレッシャーを与えるアプローチではなく、携わるチームメンバーが自発的に動き出し伸びていくという特徴があるとのことです。具体的には、自ら仕事を一所懸命にやっている姿を見せたり、話を聴いたり、成果を認めるなど様々な要素があるようです。中でも私が印象に残ったのが、内村氏は周囲が機嫌をとらなくても「いつも機嫌がいい」のだそうです。つまり、周囲が機嫌を伺うような状況になることもなく、感情に浮き沈みがなく絶えずフラットだということです。

上司に限らず、調子の良いときも悪いときもあるのが人間というものですし、それを表に出すことなく「普通に機嫌よい状態」でいることは簡単なことではないのかもしれません。しかし、部下をはじめとして、周囲が仕事の相談をする際に、まず機嫌を仰がれるようなことでは良いリーダーとは言えません。

あなたが経営者や管理職でいらっしゃるのならば、まずは自分自身は「(普通に)機嫌よくしてるか」と己を振り返ってみることをお勧めします。

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第1,089話 営業支援ITツールの使い方にご注意を!

2022年01月16日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

どのような仕事にも必ず前工程と後工程があります。少なくとも自分が行った仕事のアウトプットは、自分以外の誰かに渡されます。それは開発門なら製造部、総務部なら社員全員、営業部なら顧客・・・いずれにしても自分の仕事のゴールが後工程の仕事のスタートになります。つまり、仕事の出来不出来を決めるのは後工程ということです。

この数年でテレワークが一気に普及し、仕事の進め方が大きく変わってしまいました。テレワークのプラス面は多々ありますが、最大の難点はコミュニケーションの取り辛さでしょう。それによって後工程からのフィードバックが十分になされなくなってしまう恐れがあります。特に営業部門では「目立たない形で」その難点が問題になっているようです。

「いや、そんなことはない。当社はSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)を導入してから営業担当者別の案件の進捗状況を把握しやすくなった」、「顧客とのやりとりも十分かどうかデータを見ればわかる。何かあれば私から担当者に直接アドバイスできる」これは、ある中堅商社の営業担当役員の言葉です。

しかし、この会社の営業部長はこう言っています。「役員が直接担当者に指示を出すのは極力控えてもらうよう頼んでいます」管理者の頭ごなしに担当者に「アドバイス」されては現場が混乱するというわけです。営業担当者も、役員からの言葉がたとえ「ズレて」いたとしても無視することができず困ってしまうとのことです。

テレワークの普及により、企業では様々なITツールが使われるようになってきました。コミュニケーション上の問題を解決するために大いに役に立っている反面、こうしたマイナス面も無視できなくなりつつあります。

さて、役員をはじめとした経営層の後工程は誰でしょうか?それは株主、社員、顧客、取引先など「全て」です。正確に言うならば「ステークホルダー」です。「後工程はお客様」という言葉があります。多少極端かもしれませんが役員にとっては、いち担当者も「お客様」です。

では、役員は勝手に口を出さないようにすれば良いのでしょうか。ところがそう簡単には行きません。まず役員自身のフラストレーションが溜まります。それが溜まりに溜まると「大噴火」することもあります。それをまともに食らった管理者や担当者はたまったものではありません。

こうした事態に至らないための特効薬はないのですが、有効な手段の一つとして「会議」の有効活用をお勧めしています。会議という一種「公(おおやけ)の場」でしっかりと話し合うのです。多少の叱責やお小言もやむを得ないでしょう。ただし、会議以外の場では役員クラスからの「直接指示」は厳禁とします(多少の例外的なルールは仕方がありません)。

その前提として、経営層はステークホルダーとは何か(誰か)を十分に理解しておくことが重要です。そして会議は控えめにするよう心がけましょう。

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第1,088話 ルールの徹底にはナッジを利用する

2022年01月12日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「仕組みを作っても、社員がその通りにやらない」、「なかなかルールが徹底されない」

これは弊社がお付き合いをいただいている中小企業の社長や、様々な企業の問題発見・課題解決研修を担当させていただいた際に受講者からよく聞く言葉です。

組織に人が2人以上存在する場合には、データの管理方法や書類の保管場所など、大なり小なり仕組みやルールが必要になります。仕組みやルールを作ったり、必要に応じて変更したりすること自体簡単なことではありませんが、さらにエネルギーを要するのが、それを守ること、徹底することです。

几帳面にルールを守る人がいる一方、ほとんど気にしないような人がいることも事実です。このため、ルールを全員で共有し徹底するためには、5W1Hなどの具体的な行動計画にしたり、面倒なものにし過ぎるなど敷居を高くしないようにしたりすることがポイントになります。

とはいえ、どんなに工夫をしてもルールを徹底することは簡単なことではないと思います。また、ルールを設けてしばらくの間は徹底されたとしても、時間の経過とともにいつの間にか形骸化してしまったり、ルールを徹底している人だけが煩わしい思いをしたり、損をしているような気持ちになってしまったりするようなことも起きてしまうこともあります。

こうした場合に私がお勧めしているのが、「ナッジ(nudge)」です。ご存じの方も多いとは思いますが、ナッジとは心理学や行動経済学において明らかになってきた人間の行動の原理に基づき行動のきっかけを提供する手法です。

もともとは「肘で軽く押す」という意味のナッジですが、2017年にシカゴ大学のリチャード・セイラー教授がナッジの研究でノーベル経済学賞を受賞して注目が高まるようになりました。

ナッジは、「人は客観的にみると、誤ったり損したりするような選択を知らぬ間にしてしまう」という前提に立った経済モデルを行動経済学とし、大きな費用をかけずに伝え方や表現の工夫だけで一定の成果を挙げることができるとされています。

実際の取り組み例として、宇治市役所では手洗いを促すための工夫として、庁舎のトイレに「手をしっかり洗いましょう」という通常の表現でなく「となりの人は石鹸で手を洗っていますか」というポスターを張ったところ、手洗いをする人が増えたそうです。これは、自分が手洗いをしているかどうかを周囲から見られていることが気になるという意識が働いた結果だと考えられます。これ以外にも、定期検診の受診率を上げるためにナッジを利用している八王子市役所の例など様々なところで取り組まれており、功を奏しているようです。

組織のみならず社会には守らなければならないルールや仕組みが様々あるわけですが、前述のように徹底することはなかなか難しいものです。しかし、そうした前提のもとでナッジのように表現や伝え方を工夫することで改善を試みてみることも一案です。なかなかうまくいかないと思っていらっしゃる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

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第1,087話  STEAM教育というインパクトに備えよう

2022年01月09日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

STEAMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)のそれぞれの頭文字を取った言葉です。STEAM教育の目的は将来社会で活躍できる人材を育てることです。一例として、2020年小学校でのプログラミング教育が必修化されたように、文部科学省が積極的に推進している政策です。

STEAM教育の特徴のひとつに文理融合があります。これは「文系・理系」という分類ではなく、領域横断的な知識と発想を学生に身に付けさせる教育方針です。すでに九州大学、滋賀大学、新潟大学などで新しい学部・学科が作られています。早稲田大学政治経済学部の入試で数学が必須になったのもその一端かもしれません。「・・・だから何?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

「STEAM?うちは営業で成り立っている会社だから関係ないよ」ある企業の営業担当役員の言葉です。この企業は食品メーカーから商品を購入し小売店に販売をする卸売業です。主な業務は、顧客からの注文を受けて出荷指示を出し請求書を発行して売掛金を回収する、という流れになっています。

営業担当役員が言うように「うちの仕事はこまめに小売店の経営者のところに行って信頼関係を築くことだ」という認識がほとんどの役員、管理職に浸透しています。もちろん、それは間違っていません。しかし、一人の営業部長が次のように言っていました。「この数年でかなり顧客の考え方が変わってきた。今までのように”顔と顔”でする営業ができなくなってきた。」

「顔と顔」というのは直接対面してコミュニケーションをとるやり方を指しています。確かに何回も顔を合わせていれば、気持ちも通じ合い商談も進めやすくなります。ところがコロナ禍で営業のスタイルを変えざるを得なくなったこと、そして顧客である小売店側の意識が変わったことが大きな変化をもたらしました。ひとつの例として、ある大口の顧客企業の窓口(担当者)が交代したことを話してくれました。

「長い付き合いだったAさん(窓口)が急に代わったんだ。新しい担当者はまだ20代だよ」、「前の担当者のように融通が利かない上、業務に関する知識も少ない。話をしようにも共通の話題が無い」と少しぼやき気味です。とはいえ、仕事に支障はなく売上も特に落ちることはなかったとのことです。よく話を聞いてみると、どうやら顧客である小売店が積極的にデータ分析を行い、需要予測に基づいた発注を行うようになったことがその理由のようです。

STEAMで人材そのものがまるっきり変わってしまうというわけではありませんが、この企業のようにデータ分析や論理的な思考ができる若手社員が徐々に増えていくことは間違いありません。企業としてもこれから先、社会に出てくるSTEAM人材を受け入れ、活用できる環境を整えておく必要があります。

今から子供と一緒になってSTEAMを学ぶ必要はもちろんありませんが、STEAM教育によってどのような人材が育てられるのかについては十分理解しておくべきです。企業としてはこうした点を念頭に置いて「あるべき人材像」を考えなければなりません。経営者は今すぐに採用と人材育成に関して、何らかの対策を打つように人事部門に指示しておくことをお勧めします。

あなたの会社が20年後も存在しているとしたら、社員の大半はSTEAM教育を受けてきているのですから。

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第1,086話  反省しないことをモットーにしている人

2022年01月05日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「反省する人は成功する。誰でもそうやけど、反省する人はきっと成功するな。 本当に正しく反省する。・・・」

ご存知の方も多いかと思いますが、これはあの松下幸之助氏の言葉です。この言葉のとおり、松下氏自身もその日あったことに思いを巡らし、失敗体験を振り返り「次はこうしよう、こうすればうまくいくかもしれない」と考え、反対にうまくいったことに対しても、そのままにしておくのでなく、ことがうまく運んだ理由を考えて次にもっとうまくやるためにはどうすればよいか、日々考えていたとのことです。

おそらく、多くの人たちは子どもの頃から松下氏の言葉のように「失敗したら反省すること、次に同じようなことが起きた際には前の失敗を活かすように」と周囲の大人から繰り返し言われてきたと思います。そのため、特に意識することなく「日々反省をしている」ように思うのです。

しかし、先日タレントのタモリ氏が「反省しないことをモットーにしている」との話をしているのを聞いて、新鮮に感じたのと同時にその理由に「なるほど」と思わされました。

今年喜寿を迎えるタモリ氏は、同一司会者による長寿番組のギネス記録を2つ持っているそうですが、長く番組を続ける秘訣の質問に対して、「反省しないこと。過去のことをいくら反省してあの時こう言えばよかった、こうすればよかったと言っても、一生同じ状況になることはない。だからそれを反省してもしょうがない。それよりも、未来に目を向けましょう」と答えていました。

「反省」とは過去の時間に思いを巡らすことです。それよりも、「同じ時間を使うのであれば未来を考えることが大切だ」というタモリ氏の言葉は、私にはすっと腑に落ちるように感じられました。

確かに、32年間続いたフジテレビの「笑っていいとも」の最終回の際にも、周囲の出演者が感傷的になっている中で、タモリ氏が淡々と番組の終わりを迎えていたことが強く印象に残っています。このときも、32年という過ぎ去った時間を振り返るのではなく、タモリ氏の目は既に未来に向いていたということなのでしょう。実際に、「笑っていいとも」終了後に、やりたいと考えていたことにいろいろ取り組んだとのことです。

振り返ってみて、私自身は日ごろから失敗したら反省し、次に活かすことが大切だと考えてきたのですが、タモリ氏の言葉に刺激を受けて、2022年は反省の時間は大切にしつつも、より「未来のために今の時間を使うこと」をモットーに取り組んでみたいと考えています。

新年の始まりにあたり、皆さんはどう思われますか。

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第1,085話 モチベーションと利他の精神

2021年12月26日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

モチベーションとは、人を目標に向かって行動させる何らかの動機です。簡単に言ってしまえば「やる気のもとは何か」ということです。一番わかりやすいのは金銭的報酬ではないでしょうか。

たとえばアルバイトを雇ってレンガを積む作業をさせたとします。積む数に関わらず一定の報酬を払う場合と、積む数の多さに比例して報酬を払う場合とを比べれば、明らかに後者の方がやる気になり、成果も上がります。

もちろん、金銭以外の要因もあります。レンガ積みの目的が信者が集う「教会」を建てることだとすれば、信者にとっての報酬は金銭以外の要因(信仰心)にあることは確かでしょう。

また、金銭でも信仰心でもない要因もあります。「利他」の心がその一例です。「利他」とは、他人の利益となるようような行為をすること、自分のことよりも他人の幸福を願うことです。事実、私たちは宗教や金銭に結びつかなくても、慈善活動やボランティアを買って出ることがあります。

その理由は、人は生まれながら利他の心(あるいは性質)を持っているからです。数学を土台にしているゲーム理論によれば、人類が生き残ってきたのは利他的な行動によるものだと考えられています。詳細は省きますが、ゲーム理論では有名な「アクセルロッドの実験(反復囚人のジレンマゲーム)」があります。複数の生物群が競合するシミュレーション・ゲームで最終的に生き残ったのは「しっぺ返し (TIT-FOR-TAT)戦略」を実行する群だったというのです。

「しっぺ返し戦略」というのはまず最初に相手を信頼し、利他的に行動する。それに対して相手が利他的に反応してきたら同じように利他的に、逆に敵対的に反応してきたら敵対的に行動するというものです。つまり相手の取った行動をそのまま相手にし返すのです。それを果てしなく繰り返すことで、他の戦略を取る集団よりも少しずつ優位になって行き、最終的には生き残るというわけです※。

さて、企業研修では従業員のモチベーションをいかにして維持するかを様々な海外の理論(マズロー、マクレガー、ハーズバーグ、マクレランド、ブルームなど)で説明しています。それらすべては仮説であり、ゲーム理論のような数学的な合理性がベースになっているものではありません。

そのため、海外の「モチベーション理論」は心理面あるいは現象面だけのアプローチに終わっているように見えてしまいます(ただし、こうした「モチベーション理論」たちは十分に説得力があり、実際に役に立っています。誤解なさらないようにお願いします)。

私はゲーム理論が図らずも明かしたように、モチベーションの根本には人が生来持っている利他の精神があると考えています。

その考えに沿うならば、最も注目すべきは「論語と算盤」(渋沢栄一)だと思います。渋沢は人間の心の中には利他と自利が一体となって存在していると説いています。人はそのように生まれついているのだからそのことを忘れてはいけないと言っているのです。

無茶を承知で言えば「論語と算盤」が説く「利他と自利」の足元には数学的な理論が見えない形で存在しているように思えてなりません。その意味で、この本は数多(あまた)の海外理論を凌駕する「モチベーション理論」の最高傑作ではないでしょうか。

久しぶりに「論語と算盤」を読み返してそう思いました。

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※ この理論については批判もありますが、概ね受け入れられています。参考文献「社会科学者のための進化ゲーム理論」2008年、大浦宏邦著、勁草書房

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第1,084話 不祥事の再発防止策として研修は有効なのか

2021年12月22日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「急ぎで社員に対して研修を行いたい」

これは企業や自治体等で不祥事が起こってしまった際に、必ずといっていいくらいに発せられる言葉です。そして、実際にその後大慌てで研修を実施するケースも相当数に及びます。
私も不祥事が起きてしまった企業から再発防止のための研修の依頼をいただき、担当させていただいたことがあります。そのときの先方からの要望は、「とにかくできる限り早く、研修を実施したい」というものであり、実際に短期間のうちに幅広い社員を対象に研修が行われました。しかし、それは再発防止を目的に研修を行っているというよりも、研修を実施すること自体が目的となってしまっているように感じました。

果たして、このようなやり方で研修を行って不祥事の再発防止に役立つのでしょうか。

以前私がその研修を担当させていただいた際に強く感じたのは、何より受講した多くの社員がしらけたような雰囲気だったということです。それは、問題を起こした社員はごく一部であり、多くの社員は真面目に働いていたのにも関わらず、一律で研修を受講させられるものだったからです。

中小企業の経営者や研修の担当者と打ち合わせをしていると、「人材育成を行っても、なかなか成果が出ない。行う意味はあるのだろうか?」との疑問の声を聞くことがあります。その際には、私は「研修を1回行ったからといって、社員が劇的に変化するということはありえません。たった1回の研修で社員が大きく変わるような研修があったら、それはかなり怪しい研修です」とお答えしています。
不祥事が起こってしまった企業のトップも、当然1回の研修で社員が大きく変わることはないことはわかっていらっしゃるのです。しかし、それでも「まずは研修を」と考えるのは、不祥事に対して組織として迅速に対応したという外向きのメッセージでもあるのだとは思います。

しかし、不祥事が起こってしまったということは、そこには必ず何らかの原因や理由があるわけです。たとえば、社内の仕組みに問題があったり、風通しが悪い風土であったりということがあげられます。ここで言う風通しが悪い風土とは、組織内のコミュニケーションが取り辛い状態であり、実際に風通しの悪い組織では不祥事が起きやすいという実証的な研究もあるのです。たとえば部下のミスや仕事上の問題は可能な限り早く上司に伝えられなければなりません。しかし叱責や責任追及が優先されてしまうような風通しが悪い組織文化では情報が伝わりにくく、問題が隠蔽されやすい傾向にあるとも言われています。
不祥事が起こってしまう背景にはそれだけの問題があるということであり、それをきちんと踏まえた上で再発防止のための対策を打つ必要があるということなのです。

不祥事が起きてしまうのは、それを起こしえる風土にしてしまったことがそもそもの原因です。本気で風土を変えていこうとするのであれば、同じくらいの長い時間をかけてじっくりと取り組むことが必要です。

日々、研修を提供している立場の者としては、「不祥事の再発防止対策には、アリバイのように研修を行っても真の問題解決にはなりません。腰を据えてしっかりと取り組むことが必要です」と、声を大にしてお伝えしたいと思っています。

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第1,083話 「答えをください」はなぜNGか

2021年12月19日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

当社は今までに数多くの企業にお伺いして研修を行ってきましたが、次のような「要望」を受講者から受けることが何度かありました。それは「答えを教えてください」ということです。研修では、答えそのものよりもそこに辿り着くまでにいろいろと考えることが大事だと伝えています。しかし、そんなことはおかまいなしに「答えを教えてください」と言ってくる方がいます。

先日、財務会計の研修を行ったときにある受講者から「先ほど先生が使ったExcelのファイルをください」と言われました。そのファイルには損益分岐点をシミュレーションするための関数とグラフ、100個ほどの数値データが入っていました。

私は「残念ですが差し上げることはできません。それよりも、テキストを読み返して先ほど説明した手順でご自身で作ってみてください。損益分岐点の仕組みについて理解が深まりますよ」と言うと、「いや、仕組みはいいです。すぐに使ってみたいのでファイルが欲しいのです」と言いました。私は再度お断りました。

ところが、研修終了時に人事部門の研修担当者から「受講者がExcelデータを欲しいと言っているので、ください」と言ってきました。私は再度、受講者が本当に理解をするには自分で作ってみるのが最善の策です、と伝えました。それでも少し不満そうな様子でした。

要は「七面倒くさいことはいいから答えをよこしなさい。こっちは金を払っているんだから」という感じです。このように、お金を払う方が上の立場で請け負う方は下の立場だから言うことを聞け、ということは時々経験します。

しかし、お金を払っているのは受講者でも人事部門の担当者でもありません。会社です。会社が従業員のスキルアップのために研修会社にトレーニングを依頼しているのです。依頼された研修会社の講師は、最も効果の上がる方法でその依頼に応える責任があります。プログラムを考え、試行錯誤した成果を基に研修を行うのです。ですから当社の財務会計の研修で「答えだけを教える」ことは顧客が依頼してきた仕事上の責任を放棄することになります。

先ほどの損益分岐点に関しては、次のように「要望」されたご本人に伝えました。「研修で十分理解できなかったようですので、必要ならメールを使って補習をします。わかるまで何度でもお付き合いします」

さて、その後どうなったかと言うと1度も依頼のメールは来ませんでした。

人事部門の研修担当者の皆様に申し上げます。答えだけを求めているのでしたら市販のソフトや書籍を買って与えれば良いでしょう。研修講師は、受講者が答えを導く過程で多くの気づきを得てもらえるよう最善の努力を行っています。それが仕事を受けた者の責任であると信じているからです。

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第1,082話 ファシリテーターを学ぶべき人とは

2021年12月15日 | コンサルティング

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「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」

これは先日、私が定期的にお会いしている、ある中小企業のM社長からお聴きした言葉です。詳しくお聴きすると、会議ではその日の議題に基づいたテーマを社員が交替で発表する形で進めているそうです。これは、様々な社員にファシリテーターを経験してもらいたい、また会議の場で積極的に意見交換を行ってもらい、今後の業務をよりよく進めるための一助にしたいという社長の考えにより、このような方式を取り入れることになったのだそうです。

しかし、実際にはなかなかM社長が当初想定していたような成果は得られていないとのことでした。この方式を取り入れて既に1年が経過しているそうですが、多くの社員がファシリテーターを経験したものの、会議で積極的に発言する人は相変わらず少数であり、業務の進行にもプラスの影響は出ていないとのことでした。

そこでこの度、私もオブザーバーという立場で会議に参加させていただきました。その日のテーマは、「A業務について効率的な仕事をするためには、どうすればよいか」というものでした。

当日、私は会議の開始前に会社を訪問し、社員が会議の準備をする段階から立ち会わせていただくことにしたのです。準備段階では複数の社員が机の配置を整えたり、プロジェクターの準備を行ったりするなど手際よく進めていましたので、会議をやりなれていることがわかりました。また、準備は社員が協力し合い、活発にコミュニケーションを取りながら行っていましたので、社内の活発な雰囲気も感じていました。

その後会議がスタートし、ファシリテーターの進行のもとテーマに関する発表をある社員が始めました。発表を聴くと、事前にそのテーマに関して入念に準備をしていることが分かるようなしっかりした内容でしたので、私は聴き入っていました。

ところが、そのときです。開始わずか3分後くらいに「まどろっこしい説明だ!聴いていられない。続きは私が説明する」という大きな声が発せられました。

声の主はM社長でした。その後、社長はいきなり大きな声で話を始めましたが、それはもう社長の独壇場で話は延々と続きました。その間、ファシリテーター、発表者、その他の社員は一様に「またか」という表情になっていました。「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」とM社長が言っていた原因は、まさにここにあったのです。

つまりは、ファシリテーターが場を進行しようとしても、発表者が丁寧に準備し一生懸命に説明しても、社長が聴く耳を持たずに自分で会議を仕切るようなことになってしまうと、ファシリテーターも発表者も聴き手も会議の場にいる意味がなくなってしまいます。そして、社員からすれば、どうせ自分たちがやっても満足できないのだから、初めから終始社長が仕切ればよいでしょうということになっていまい、やる気も失われてしまうということになってしまうのです。

私がファシリテーター研修を担当させていただく際の受講者には中堅社員が多いのですが、実は社長や管理職などの権限を持っている人こそ、ファシリテーターの意味や役割をきちんと学ぶべきだと思うことが少なくないのです。

社長や管理職の方々で、会議や自分との会話で部下があまり話をしないと感じていらっしゃるのであれば、一度自分が部下の話を遮ってしまっていないか、話しにくくしていないか、振り返ってみる必要があるかもしれません。

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